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2001年07月26日(木) 紅の豚

毎日暑いですが、いかがお過ごしですか?
私は昨日、少しだけ涼しく過ごしました。

何のことはない、一番気温が高くなる時間帯に、
市民プールに行ったのです。
水温は、さながらぬるくなった風呂のようでしたが、
オカに上がって風に吹かれれば、かなり涼しく感じました。

子供向けの浅いプールで、
長女の表現をかりれば、「背中で登り竜飼ってる人」が、
小さな子供を遊ばせていました。
(スチャダラパーの表現をかりれば、「ピクチャーマン」)
気の好さそうなアンちゃんという感じでしたが、
根っから小心者だものですから、
「私、何も見てませんよ〜」という顔をしつつ、
チラチラ横目で見たのですが、
若いのに御立派なものを彫っていらして……

家に帰って相方にその話をしたら、
「タトゥーシールじゃないの?」とのことでしたが、
あんな面積の広いのが、やっぱり今はあるんでしょうか。
具体的にお見せできないのが残念なほど、堂々としたものでした。

といった前振りと今日の映画は、やはり無関係なんですが……

今日7月26日は、映画スターの誕生日ラッシュでもあるのですが、
1934年にお生まれになった森山周一郎さんに注目し、
あの渋過ぎる声で、ちょっと見には珍妙なキャラクターに生命を吹き込んだ、
次の映画を取り上げたいと思います。

紅の豚Crimson Pig
1992年日本 宮崎駿監督


この映画ほど予告編に騙された!と思う人の多い宮崎作品は、
ほかにないのではないでしょうか?
この映画に関しては、男女同時に見ると、
男性の方が思い入れを強くする場合が多いようですが、
私どもの場合も、相方の方が心酔したようです。
私はといえば、「こういうのもいいじゃん」という感じでした。
というのも、あの予告編……何しろ森山さんがあの刑事コジャック声で、
「飛ばねぇ豚はただの豚だ」ですよ。
ところが、本編でこの台詞が使われた後、彼が受けた扱いはというと……
それは、ごらんになった方だけの楽しみということで。
(この映画が気に入らなかった方は、
そういうところがダメとおっしゃるかもしれないけれど)

「彼がポルコ(豚)じゃなくて、ただのマルコというおっさんだったら?」
と考えると、森山さんの声ではしっくり来ない気がします。
時々差し挟まれるのが、本当に青年期(人間当時)の彼の顔なので、
この顔なら平田広明さんが似合うのでは、と、
(『ER』のノアー・ワイリー、『フレンズ』のマット・ルブランク、
『ONE PIECE』のサンジなど)
若目の声を連想してしまったせいもありますが。

この映画には、明確なストーリーって存在したでしょうか?
1920年代のシチリアで、
飛行艇乗りにも空賊と賞金稼ぎといて、
多分、そのうちムッソリーニみたいなおっさんが
出てくるんだなあという空気で、
美女ジーナ、かわいいフィオと、訳ありそうなおっさんたち、
元気で働き者のおばちゃんたち。
昔気質のポルコは、「女に自分の飛行艇を任せるなんて」と
最初は抵抗を示しますが、
働き者のまぶしい彼女たち(老若問わず)の前では、
ゆりかごを揺らすくらいししか、することがなくなる始末です。

イタリアと「縁がないわけではない」アメリカの助っ人は、
恋に破れると、国に帰って映画で一山当てるというおまけつき。
(あの人、絶対アメリカ第40代大統領になった例の人ですよね?)

映画の中で、マダム・ジーナが、この人↑に迫られ、
「ここでは恋も人生も、あなたのお国より少し複雑なの」
とあしらうシーンがありましたが、
口説き好きとしか思えないようなこのおっさんの方が、
(カーティスですね。今思い出しました)
私たちが共同幻想で持っているようなイタリア人像よりも、
ずーっとイタリア人っぽかったのが笑えました。

この映画は「説明不足」だと感じる人も多いのではないでしょうか。
何よりも、「いかにしてマルコはポルコになったのか」が
さっぱりわかりません。
いや、それ以前に、「なぜポルコなのか」も。
が、全体を通して見ると、ジーナが自分を残して他界した男たちの消息を、
ごくごくさりげなく言うシーンですら「くどいなあ」と感じるくらい、
大抵のことが、「ま、いいか。細かいことは」と済ませたい気分にさせられました。
(そうは思わない!という方のメールをお待ちしております。
今こうして書く時点では、私の感想しか書けませんので…)

カーティスとの一騎討ちが、ああいう結末を迎えるのも、
何だか間抜けな憎めない感じがして私は好きです。
とりあえず、「フィオ、よかったね」とだけ言いたくなりました。

ところで、ちょっと漏れ聞いたのですが、
この映画のフランス語吹替版でポルコ・ロッソを演じたのは、
あのジャン・レノだそうですね。
考えてみれば、あの人はもともとイタリア系です。
『グラン・ブルー(グレート・ブルー)』『ロザンナのために』の彼が
いわゆるベタなイタリア男のイメージに近いけれど、
この映画の吹替えというキャリアの前には、
やっぱり「『レオン』の」がふさわしいでしょうか。

この映画を取り上げようと決めたのはいいけれど、
何せ地上波でも、しかもノーカットで何度も放映されていますし、
見た人は多いだろうな……と思うと、
何となくぎこちなくなってしまいました。
(思い入れのある方も、かなりいらっしゃるのではないでしょうか)
未見でいらいらした方(昨日からこればかり)、
この機会にごらんになってみては?
特に、ダンディズムとコメディーを同時に愛する方にお勧めします。


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