僕を音楽へ傾倒させた張本人は 何をかくそうウチの母だ
母はとにかく歌うのが好きな人で 炊事洗濯と生活の動作の中で 何がしか歌っていた
歌謡曲、演歌、pops、jazz なんでもござれ 自分の気に入っている歌なら ジャンルなんて関係なかったようだ
小さい頃の僕らは 父が創作した昔話「鼻たれ珍兵衛」と 母のシューベルトの子守り歌で 寝かしつけてもらったものだ
「眠れ、眠れ、母の胸に♪」
この歌は僕らを 大きな安心と共に眠らせた
テレビの歌番組も ウチは欠かさず見ていた 仲間内でそんな話になると決まって 「僕は『ザ・ベストテン』っ子やねん。」と言う さしずめ母は 『ザ・ベストテン』かあちゃんと呼んでもいいだろう
流れるテロップに合わせて母は歌う 横で妹が「もう!聞こえへんやん!」と怒る 知っている歌は母、僕、妹で歌う 父と兄は横でそれを普通に眺めている 昭和50年代フジタ家お茶の間風景は いつもそんな感じだったと思う
ハードロックにかぶれていた大学時代 身なりが一般民間人とかけ離れた僕は さぞかし田舎町の格好の話題で 母は色んな事を言われていたに違いない
それでも母は愚痴を漏らす事はあっても 決して僕の自由を奪う事はなかった 逆にそんな母の行動が 僕に自己抑制をうながしていた気がする
今でも母は歌っている 僕らの小学校時代から 「ママさんコーラス」を続けている
「もうババさんコーラスや。」と言いながら 「スミト、最近の歌は難しいな〜」と言いながら ライフワークを楽しんでいる
母は僕に何を見るだろう 音にのめり込んだまま生きている僕に
その原因の一端を担った自分に 気づいているだろうか 気づきながら後悔なんかしてるんだろうか
でも母は言う 「私らは先に死ぬ。後はアンタらが勝手にしたらいい。」
今も母は決して僕の自由を奪わない
いつまでも元気で 僕の好物を作ってね
お母ちゃん おめでとう
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