囚はれのシネマ日記
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2004年07月14日(水) 灯火のキリスト広場




アルファロス通りをローマ遺跡横の市役所まで下る。
そして並行して走るもうひとつの狭い通りを上る。
こんなに狭いのに車が速度を出してつぎつぎ通りぬける。
客を乗せない馬車もしやんしやんと音をたててゆつくり下つてくる。
馬車をひく馬が歩きながら大量の糞をザーッと夕立のやうに放出した。
わたしは灯火のキリスト広場に行かうとしてゐるのだがどうやらこの道ではなさうだ。
アルファロス通りにもどり坂を上つてゆく。
しかしこの通りはなんといい雰囲気なのだらう。
もつと涼しい朝にでも散歩したいところだ。
民家と商店がそれぞれ小ぢんまり軒をならべてゐて違和感がない。
民家にはそれぞれの意匠をこらした小さなパティオがある。
と言つてもそれはたまたま開かれた扉の向かうに垣間見えるだけだ。
高層住宅も自動販売機も電信柱も看板もなにも猥雑なものがなくシンプルに美観を守つてゐる。
ボブ・ディランのポスターが壁にべたべた貼られてゐることさへアクセントになつてゐる。
コルドバでボブ・ディランのコンサートがあつたのね。
そんなことを思ひながら行き着けない不安をまぎらはせてゐると左手に広い階段がある。
人気はないけれどその先になにかありさうだ。
はたして階段を上ると教会のやうな建物と小さな広場が見えてきた。
ここがあの静かで美しい灯火のキリスト広場に間違ひなかつた。
(たしかに映画『永遠のマリア・カラス』の劇中劇「カルメン」のなかでこの広場がちやうど反対側から撮影されてゐるのをのちに確認した)
十字架に磔にされたキリスト像が強い日差しのなかに痛々しくまぶしい。
写真を撮つてゐるわたしを背後から見つめる目を感じる。
教会の日影に赤ちやんを乳母車に乗せた女乞食がゐるのだつた。
そして「お恵みを」というやうなことばを投げかけてきた。
わたしは小銭をたぶん50センチモぐらゐ彼女にさしだした。
近くで見ると彼女はとても若く気品のある美しい顔立ちをしてゐる。
まるで聖母マリアのやうに。




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