海を進む
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先生が、夏の間は着てこなかったジャケットを着てくるようになった。 今年の夏は暑かった。んだよね。会社はクーラーが効きすぎていた。 夏のことを思い出そうとすると、1階でガラス張りの職場から見える まぶしそうなカンカン照りの外の景色と、その中をこっちに向かってくる、 もしくはそこへ出て行く先生の姿(白いシャツがまぶしい)ばかり思い浮かぶ。 夏の間に先生の存在は私の中でどんどん大きくなっていったけど、 先生はどんどん遠くへ行ってしまった気がする。 まるで、急に有名になってテレビなんかに出るようになって 忙しくなって都会に引っ越してしまった、というような感じ。 もう「きなこさんってさー、大学のときさー、・・・」って話しかけてくれないのかな。 よそよそしく、すみませんとかおねがいしますとかわかりましたとか、 これからもそんな会話しかできないのかな。 私から勇気を出して何か話しかけてみなくちゃだめか。 相手に何をしてほしいかじゃなくて、自分が何ができるのかって考えないとね。 頭ではわかってる。 私は、いつもなんでも、頭ではわかってる。頭ではわかってるけど、何もできない。 できないけど本当はわかってるんだからいいでしょって思っちゃう。 自分が大嫌い。 眠くてよくわからない。今日こそしっかり寝よう。 明日も先生に会えるって思うとルンルンだった時期もあったのに、 いまは、明日も先生に会うって思うとため息つきたくなってしまう。
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