海を進む
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どうして今日の今日まで、彼に彼女がいる可能性について真剣に考えたことがなかったんだろう。 私の背後で、同僚のおばさんが 「帰ったら彼女がご飯用意しててくれるんでしょ?」 と彼に聞いていた。 私は仕事してるふりをしながら耳をダンボにして背中全部でその返事を待った。 「ええ、まあ、たまにあることもありますけどね。」 体の中身が一気に全部地下深くへ落ちていったように感じた。 そうか。彼女くらいいるよね。そりゃいるさ。普通いるのよ。いないわけがない。 現実を私に思い出させてくれた詮索好きのおしゃべりおばさんに感謝しなくちゃ。 それにしても私は本当にびっくりした。 何の根拠もないのに勝手に彼女がいない前提で考えてたなんて。 かすかな期待はどこから出ていたんだろう。 そして、現実を知ってもその期待を捨て切れないような気がすることが恐ろしい。
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