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昨日読了の本
・竹内真「カレーライフ」集英社
某所特押し作品。
カレーは、あらゆるスパイスのコラボレーションである。 ターメリック、クミン、コリアンダー、カルダモン、キャラウェイ、クローブ、 ガラムマサラ、コショウ、トウガラシなどのいわゆるスパイスは言うに及ばず、 ヨーグルト、ミルク、ココナツから、トマト、リンゴ、バナナ、パイナップルなどのフルーツ、 果てはハチミツ、コーヒー、ココア、チョコレート、キャラメル、 そして、昆布や鰹節まで、どんなものも全てがスパイスになる。
ひとつひとつのスパイスは、いろんな性質や効能を持ち、独特の風味や香りを放つ。 辛いもの、甘いもの、酸っぱいもの、苦いもの、渋いもの、土臭いもの、香しいものと、 お互いまったく正反対の味や香りのもの、単独で充分食べられるものもある。
カレーと言うのは、それらがひとつの鍋の中で溶け合い、影響し合い、 より深まって出来上がったひとつの世界だ。
「カレーライフ」は、世界を創り出すための旅の物語だ。
最初の基点は同じでも、その同じ物事に対し皆違った捉え方をする。 たとえ近しい者達でも、ひとりひとりがまったく違う個性を持ち、 自分の捉え方で別々の世界を創っている。
その別々の人々が、新たに新しい世界を創り出そうとした時、 それらはひとつの世界の中で溶け合い、影響し合い、より深まって、 大いなるカレーができあがる。
相反する材料やスパイス達が、その個性を互に生かし高め、絶妙なるカレーが 出来上がる過程には、きっとマジックタッチが存在するに違いない。
「きっと、何が事実だったかなんて大したことじゃないんだよ」 「何が事実かなんてことより、どんな意味を見つけるかだと思うんだよ」 p.296
この言葉に目を覚まさせられた。
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