Experiences in UK
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2004年08月09日(月) 第51-52週 2004.7.26-8.9 PROMS、カニザロ・フェスティバル

7月の半ばあたりからロンドンはホリデー・シーズンに入りました。通勤の際の道路混雑は大いに緩和され、逆に街中には外国からの観光客と思しき人々が急増しています。日本のお盆のビジネス街と比べて閑散度合いは半分くらいながら、それが一ヶ月以上にわたって続く点が日本との違いです。

(PROMS)
6日(金曜)の夜、英国伝統のクラシック・コンサートである「BBC PROMS」に行ってきました。両親が来ているため、子供を見てもらって妻と二人で出かけることができました。
Promsというのは、気軽に楽しめる音楽会という意味であるプロムナード・コンサートの略称ですが、英国でプロムスと言えば、毎年夏にロイヤル・アルバート・ホールを会場にして行われる音楽イベントのことを指します。英国における夏の風物詩の一つとなっています。
英国のPROMSは、今年で110回を数えますが、国民に気軽に音楽に親しんでもらおうという主旨で19世紀終わり頃に始められたクラシック音楽のイベントです。7月から9月にかけて毎晩異なる演目のクラシック・コンサートがのべ70公演以上も繰り広げられます。戦前のある時期から主催者がBBC(英国国営放送)になり、7月に入ると各メディアで「BBC PROMS」というロゴが頻繁に目にとまるようになります。
会場のロイヤル・アルバート・ホールは円形ホールなのですが、真ん中のアリーナと最上階は立ち見席になっており、4ポンド(800円)という低価格で一流の演奏者によるクラシック音楽を楽しむことができます。ある英国人に言わせると、「立ち見席は学生と年金生活者のための席」ということらしいですが、2時間も立ったままでいるのはきついので、座り込んだり寝そべったりしながら音楽を楽しんでいる人もいます。ドレスコードのようなものも全くなくて、このPROMSに限っては、多くの人が普段着で会場にやってきています。PROMSとはそういうコンサートなのです。

クラシック音楽に造詣が深いわけでもない私にとって聞き覚えがあったのは、会場であるロイヤル・アルバート・ホールです。70年代ブリティッシュ・ロックを代表するバンドであるディープ・パープルがオーケストラと共演したライブ盤を作成していたのが、このホールでした。また、かつてローリング・ストーンズやクイーンなどもここでコンサートをしていたはずです。
我々が行った日の公演内容ですが、たまたま指揮者が日本人の方で(オオタカ・タダアキ)、演奏はウェールズのBBCナショナル・オーケストラでした。演目は、タケミツ、ドボルザーク、ラベル(歌曲)、レスピーギの順で、ドボルザークのチェロ協奏曲ではノルウェー人のチェリストが熱演を見せてくれて、ラベルの歌曲シェーラザードではスウェーデン人の歌手が登場していました。
このように国際色豊かなコンサートだったわけですが、満員の会場は多いに盛り上がっていて、「気軽にクラシック音楽を楽しむ」ということを実感することができました。このような文化を背景として、ディープ・パープルとロンドン・フィルの共演という発想も生まれるのだろうと納得できた気もしました。
それにしても、私としてはあの立派なホールでディープ・パープルのライブが聞けたらどんなにいいだろうかという思いを残して帰途につきました。

(イースト・ベルゴット再訪)
翌7日(土曜)は爽やかな快晴の日だったため、両親と長男を連れて、ナショナル・トラストに管理された風光明媚な村イースト・ベルゴットを再訪しました(最初の訪問は、4月13日参照)。
三歳になったばかりの息子と一緒に牧草地帯のフット・パスを二時間余り歩きどおしに歩きました。以前にもご紹介したとおり、ナショナル・トラストのプロパティは遊具や土産物屋の類が一切ないので、歩いて、見て、話をするくらいしかすることがないのです。
途中、一千年近い歴史を持つ村の古い教会で結婚式が行われていました。欧米の映画によくある一コマのような、年端もいかない子供を含めて着飾った老若男女と幸せそうな笑顔がいっぱいの光景に遭遇できたのはとてもラッキーでした。

ところで、車での行楽に音楽はつきものですが、我々は大抵London Magicというラジオ局にチューニングしています。放送中にしきりに流れるジングルが”More music, less talk”というもので、その通りにほとんど音楽をかけっぱなしにしている日本の有線放送のようなラジオ局です。
どういう基準で選曲しているのかはよくわかりませんが、新旧取り混ぜた曲が流れていて、最近の音楽に疎い私でもわかるような80年代のヒット曲、例えばユーリズミックスやシンディー・ローパーなど、も非常によくかかります。最近は日本のラジオ局も洋楽がよくかかりますが、その選曲は日英でもよく似通っていて、ラジオから流れる音楽を聴いている限り日本と英国の差をほとんど感じないというのはこちらに来てからの一つの発見です。

(カニザロ・フェスティバル)
ウィンブルドン・ビレッジ近くのホテル、カニザロ・ハウスの名前は、これまでもしばしば登場しましたが、ホテル敷地内の広大な庭園をカニザロ・パークといいます。夏の約一ヶ月間にわたって週末ごとに、同パークにおいてカニザロ・フェスティバルというイベントが行われていました。パーク内の一角で、本格的な音楽や演劇を楽しむことができます。
8日(日曜)、その最終日に開かれたランチタイム・ジャズ・コンサートに、両親と生まれて7週間の長女を含めた家族全員で繰り出しました。
芝生の上に設置されたテント内でミュージシャンが演奏し、その周りを取り囲むようにした観客も芝生に寝そべったりしながら音楽を聴いています。別のテントでは、ビールやハンバーガーが売られていて、日本でいう夏祭りのような感じです。ただし、シャビーな舞台装置の割にミュージシャンは名のある人だったらしく、ジャズ・ファンの人によると演奏のレベルも高かったようです。

マナーフィールズのガーデン・パーティでもミュージシャンの生演奏がありましたが、当地の人たちの音楽の楽しみ方は日本とは少し違うような気がします。日本の夏祭りだと、BGMはCDを流して済ませるか、テキトーな人にテキトーな楽器を演奏させるのが一般的でしたが、PROMSに象徴されるように、英国では本物の音楽を身近に楽しむ機会が多いようです。
そういえば、先日ロンドンで日本の「NHKのど自慢」が開催されました。当地の日本人にとってはかなり画期的な出来事で、六千人もの日本人が見に行っていたようです(うちはパスしましたが)。英国メディアでも一部で取り上げられており、その中に「カラオケをTVで流して何がおもしろいのだろう」という主旨の論評をしているものがありました。のど自慢はカラオケではないのでしょうが、素人の歌をきいて楽しむという行為が英国人には違和感があったのでしょう。


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