Experiences in UK
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2004年04月19日(月) 第36週 2004.4.12-19 北ウェールズ

このところ観光シリーズになってしまっていますが、1泊2日で北ウェールズに行ってきました。

(ウェールズ Wales)
連合王国を形成する4つの“nation”の中でもっとも地味なのがウェールズです。
英国にそれぞれの「国民性」を表すこんなジョークがあります。山道で見知らぬ二人の男が出会った時にどうするか。スコットランド人は、金にしわいから互いに財布を握りしめる。アイルランド人は、血の気が多いから出会うやいなや喧嘩を始める。ウェールズ人はどうするかというと、互いに歌を唄い始める。ウェールズ人は、歌が上手で合唱が好きな平和な国民性で知られています。最後に、イングランド人はただすれちがう。なぜかというと、イングランド人は互いに紹介されない限り話ができないから、というのが「落ち」になっています。
ウェールズは、イングランドとの抗争の歴史に早い時期に終止符を打ちました。13世紀終わりにイングランドに平定され(法的にイングランドに併合されたのは16世紀)、その時の歴史的経緯により、イングランド(英国)国王の皇太子はプリンス・オブ・ウェールズと呼ばれるようになりました。英国の国旗ユニオン・ジャックは、イングランド、スコットランド、アイルランドの旗を重ね合わせたデザインになっているのですが、ウェールズ国旗のデザインだけはいちばん早い時期にイングランドに併合されたために取り入れられていません。

良くも悪くも華やかな話題に事欠くウェールズですが、私のイメージの中でのウェールズの主たる特徴は、次の二つです。
第一に、千年以上前の言語であるウェールズ語を今も大事に守っていることです。ウェールズ人は、5〜10世紀にゲルマン人などによって西方に追いやられたブリテン島先住民族のケルト人(ブリトン族)を祖先としていますが、今でもブリトン族の言語であるウェールズ語を使用しており、その保存を政策の一つに掲げています。現在もウェールズ人全体の20%がウェールズ語を話すことができて、特に西部と北部では第一言語として扱われているそうです(”The Official Year Book of the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland 2003”より)。
ウェールズに入ると、道路標識や街の案内板の類はすべて英語とウェールズ語が並記されています。ウェールズ語は由来からして英語とは全く異なる言語なので、意味を解することはもちろん読むことすらできません。
第二の特徴は、豊かな自然です。ウェールズは、国土の4分の1が国立公園に指定されている風光明媚な土地として有名です。
イングランドに依存しきっているようでそれだけでもなく、英国内の血なまぐさい対立・抗争の歴史から一線を画して、豊かな自然環境の中で歌の好きな温厚な国民が平和に暮らしている国、と言えばなかなか魅力的な国に聞こえないでしょうか。

我々が訪れたのは北ウェールズのグウィネズ(Gwynedd)地方で、ロンドンからおよそ300キロの地にあります。

(スランベリス Llanberis)
ウェールズにある三つの国立公園のうちの一つ、スノードニア国立公園の観光拠点となる町が、スランベリスです。今回、我々は、スランベリスのB&Bに宿をとりました(地の利のいい場所に泊まれて、快適で必要十分なスペースの部屋にフル・ウエルシュ・ブレックファーストが付いて家族三人で60ポンド=約12,000円でした。英国のBed & Breakfastは非常に経済的です)。
スノードニア国立公園は、ウェールズ北西部の海岸近くにあり、イングランドとウェールズの最高峰スノードン山とその周辺部を指します。「最高峰」といっても標高は1085メートルしかありません。イングランドは、北部に行くと1000メートル内外の山がありますが、中央部以南はせいぜい600メートル級の山がぽつぽつあるに過ぎません。ウェールズにも900メートル級の山が2つ3つあるだけで、スノードン山が最高峰ということになります。
我々の泊まったB&Bから歩いて数分の場所に、スノードン山への登山口と頂上まで続くスノードン山岳鉄道の発着所があります。たかだか1000メートルの山なので歩いて登る人も多いのですが、子供連れには蒸気機関車を利用したこの山岳鉄道が大人気です。
山岳鉄道発着所そばの山麓には、程よい大きさと品のいい形状のスランベリス湖があり、この周囲を同じく蒸気機関車を利用した湖岸鉄道が走っています。絵に描いたような風光明媚な観光地スランベリスは、住宅、道路、その他公共施設(観光施設を含む)などのインフラもきれいに整備された清潔感のある街でした。

(コンウィ城・カナーヴォン城・ボーマリス城 Conwy,Caernarfon,Beaumaris)
イングランドによるウェールズ平定は、イングランド国王エドワード1世の時代(13世紀終盤)であり、エドワード1世はウェールズ北部にいくつかの拠点となる城塞を築きました。それら一群の城跡が現在も残っていて、まとめてユネスコ世界遺産に登録されています。
いずれの城も、ところどころに銃眼のある円筒形の石造りの塔が複数個とそれらをつなぐ回廊から形成されています。約七百年前の建造物にしては保存状態が良く、中央部の芝生などもきれいに整地されていました。
コンウィとカナーヴォンの城は、現存する城壁でぐるりと囲まれた町の中心にあります。カナーヴォン城は、現チャールズ皇太子がプリンス・オブ・ウェールズの叙任式を行った城としても有名です。ボーマリス城は、本土から橋でつながったアングルジー島の海辺にある小振りの城でしたが、「左右対称のデザインは北ウェールズで最も美しいと評されている」とガイドブックに書かれている通りの名城でした。
なお、アングルジー島には、「世界一長い名前の駅」があります。ウェールズ語でアルファベット58文字がずらずら連続して並んでいるのですが、我々にとっては暗号以外の何ものでもなく、発音することすらできません。

(ウェルシュ・ラム)
ウェールズは農業に向かない土地だったため牧畜が盛んで、羊の料理が有名です(特にこの時期は生まれて数ヶ月の子羊が供される)。町ではラム・バーガーなるものまで売られていました。
カナーヴォンの城壁内にあるレストランで食べたロースト・ラムは迫力満点の絶品料理でした。骨付き関節丸ごとの肉塊がそのまま大きな皿に載って出てきて(1人前)、特別なナイフで解体しながら食べるのですが、口に入れた途端にとろけるようなラム肉でした。
ラム肉が特段おいしいかどうかはともかく、野趣あふれる獣肉料理を堪能することができました。


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