明後日の風
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2011年01月29日(土) 羊水の中

 そうして1月も終わろうとしている。
「随分突っ走ったな」
と心が思うよりも先に、体が悲鳴を上げた。ネットサーフィンをしながら、温泉宿を探しまくる。

 伊香保がいいか、あるいは鄙びた感じの上牧か、草津もいいけどお湯がきつい、やわらかいお湯が今日の好みだ。静かなバーでモルトウィスキーを味わうか、静かな宿で心地よい夕食を楽しむか、とにかく頭を空っぽにする以外には求めないのか、そんな全体像を捜索しつつ、思考は往復する。そして川治温泉に思いは収斂した。

 日光鬼怒川の更に奥にある温泉郷だが、「とにかくお湯がいい」という印象だけが強く残っている。日光から会津へ抜ける国道沿いで、これまで何度となくその道を走った経験はあるのだが、しっかりと一泊を過ごしたことはない。

 決まれば早い。
 身支度をして一路北へ。
 夕暮れにはまだまだ早いが、やや傾きかけた日の光を受けながら、高速道路を走る。道は一般道となり、雪が目立つ頃には、目的に宿に到着した。
 
 まずはひとっ風呂。
 巨大な湯船には僕一人が入り、中央からはお湯が溢れ出ている。
 人を包み込むような柔らかなお湯とその温度に、すっかり僕は魅せられた。
「羊水の中はこんな感じかもしれない」
というある人の一言は、正に、このお湯の良さを言い当てている。

 会社の慰安旅行が全盛であった時代の生き残りのような宿。そして団体向けの観光ホテルが林立するそういう温泉郷ではあるのだが、このお湯こそが「川治温泉」という固有名詞を代表しているのではないか、と思いながら、夕食のお膳をいただいている。


さわ