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遺書と屍
羽月
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2010年04月26日(月)




わたしは この声が 誰かに届くとか 誰かに響くとか
誰かを惑わせるとか
そんなつもりで、紡いでいたわけではないのです
誰かの心を揺らすとか 誰かの心を傷つけるとか
わたしの言葉に 温度に そんな力なんてないのです

わたしは最初から、そんなもの、信じてなんかいませんでした

もしかしたら、本当は、信じたかったのかもしれませんが


ただしくことばはつたわらない
こんな文字の羅列、だれにも本当のことなんてわからない
正しく言葉は伝わらない
わたしはいつだって、裏切り者で、臆病者で、卑怯なままだ。
誰に対してなんて、自分が一番知っている。


生まれて、死んで、生きて、殺す。
ずっとそんなのを繰り返す。
嬉しい? 楽しい? 悲しい? 苦しい?
それならきっと、あなたは生きているよね。
心が死んでしまうことを、いつも考えるよ。
そう考えるごとに、きっと心は死んでいる。
言葉のナイフ。心臓を抉って引き裂いた。
取り出した血は、闇に落ち込んでもう見えない。
ずっと痛いのは、ナイフと心臓は同じところに植わっているからでしかない。


激情がもう生まれないのは、諦めてしまったからなのかな。
ここで生きていくことを、決めたからなのかな。
この一呼吸ごとに死んでいくことを、ようやくわかったからなのかもしれない。
いつか届くかもしれないいつかならもういらないし、届かないかもしれないさよならを言うのはもうやめたんだ。
わたしを殺すのはいつだって、いつまでも、これからも、わたししかいなかった。
わたしを殺して、許して、抉って、潰して、生かすのは、いつだってわたしでしかなかった。
いつか忘れてしまうこんな言葉だって、今は本当にそう思ってるよ。
言葉に意味なんてないから、わたしはいつだってこんな気持ちをすぐに忘れて泣き言を喚くんだ。
心に嘘がなくたって、言葉はいくらでも嘘を吐くから、わたしはいつだって嘘つきでしかない。
許さないと言ったよね。いいよ。それでもいい。
触れ合ったなら、言葉は本当になったかもしれないね。
温度や音や、匂いがあれば本物になれたかもしれない。
0と1の狭間で、わたしの言葉はただただ嘘と虚構になっていく。
それでもいい。