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遺書と屍
羽月
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2011年05月29日(日)


病院へ行ったのは、自己防衛心の塊でしかない。
わたしはとても臆病で、死ぬなんてことはとても出来ない。
この二十余年でそういったことはわかりきっているので、わたしに自殺はできない。

自慢ではないが、わたしはなにかを逃れるために死のうと思ったことはあるけれど、実行に移したことはない。いや、まあ、首は吊ったけど。それ以外にはない。
階段から落ちたので、とりあえず病院へ行くことにした。

落ちたのはわざとだ。
打撲しか出来ない。
首が折れたらどうすると叱られた。
大事にしてくれる人がいるだろうと叱られた。
長期的な不幸と短期的な不幸と、どちらが幸せなのかとよく考える。
わたしが生き続けるのは周囲にとっては長期的な不幸だ。改善される見込みはない。
死ぬことは短期的な不幸だ。泣いてくれるかもしれないけれど、数年すれば忘れるだろう。

誰にとっても、わたしは、そんな人間だと、わたしのことを、信じている。

*

首を絞める幻影を良く見る。
わたしの手。
幻影というよりはイメージ。
触れない。何にも及ばされない。
緩慢な自死願望。

*

窓に座って空を眺めたのは死にたかったからだけれど、死にたくなかったからでもある。あの日わたしは誰かがわたしを見つけて叫んで止めてくれさえすればなんでもよかった。そのためにあの窓に座った。桟が食い込んで痛かった。街には酔っ払いしかいなくて、三階の窓なんて眺める人は誰もいなかった。ゆらゆら揺れる足と、コンクリートの地面と、酔っ払いと、ぴかぴかひかる街を見ていた。落ちても死ねないところから落ちて怪我をしたかった。何も考えたくなかったし、わたしには時間が足りなかった。いきるためになにをしたらいいの?しごとをしたらいいんだよ。分かり安すぎる回答に笑った。誠実さを持たない心なのに?誰も彼もが他人に無関心で、いっそ心地よかった。頭の裏に残る理性がもう帰らなきゃ新幹線に間に合わないって警鐘を鳴らしていた。時計は最初から持ってなくて、携帯は置いてきた。鞄もジャケットもそのまま。ふらふらと知らない街を歩いた。涙は流れなかったけれど、心も傷つかなかったけれど、わたしは死んでしまいたかった。あのとき、死んでしまいたかった。怖かった。怖かった。怖かった。落ちるのは怖かった。なんでもないことだって言われればそれまでで、そんなに嫌なら仕事をやめればいいって言うのももっともだ。その後が怖い。やめてしまった後が怖い。怪我をした後が怖い。責められるのが怖い。見捨てられるのが、一番怖い。分かってもらえないなら、もう、口には出さない。

*

薬は良く効く。
夜の薬は利きすぎるから飲んでいない。寝坊するからね。
土日は鬱が来ないので飲んでない。
結果、薬は結構残ってる。
1シート飲んだらどうなるかな?
ただの寝坊になりそうだから、やらないけれど。