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遺書と屍
羽月
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2009年01月13日(火)



ずっと前に、会わない約束をした人がいます。
わたしはとても臆病で、弱虫で、怖がりだったから、徹底的に逃げました。
その頃のわたしはまだとても幼く、かと言って今がそれほど大人であるわけもありませんが、無知でした。
傷つけるしか、助かる方法を知らなかった。

*

言葉は正しく伝わらない。熱源がなければ言葉なんてただの文字の羅列にしかならない。
温度があってはじめて、ことばはことばになる。
でも、それでもだめ。まだたりない。
人の心を覗けるわけではないから、言葉はやっぱり正しく伝わらない。
わたしたちは言葉が通じたような気持ちになっているだけ。
わたしは言葉をきちんと伝えたような気になって、相手は言葉をきちんと受け取ってもらえた気になる。
だから、いつまでたってもかみあわない。

*

助かる方法をずっと探している。乞えばいいのだろうか。縋ればいいのだろうか。哀れなほど、許してくださいと嘆けばいいのだろうか。
でもだめだ。それじゃ、ただの自己満足で、他人の迷惑。
泣いても、怒っても、誰か助けてよって叫んでも。たぶん、わたしはたすからない。
憎んでも恨んでも、ただしいせかいは何一つ変わってはくれなかった。
だから、愛そうと思う。
朝の光も、冷たい風も、夕焼けの色も、月明かりも、一呼吸ですらも、何もかも、愛そうと思う。
できるところから、たったひとつずつからでいい、ゆっくりと。
なにかひとつから、ゆっくりと、愛そうと思う。

*

みていないならもう意味なんかないけど、ひとことだけ。
ばいばい、またね。