観能雑感

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観能雑感
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2004年12月31日(金)

2004年　私的ベスト3

　今年は止めようかと思いつつ、もはや自分の中で恒例にしてしまった感あり。1年間を振り返るという意味で、無益ではないだろう。本年中観た能は69番（素人会は除く）。

第1位　髙橋　章　『千手』　　3月14日（日）　宝生会月並能
　ツレ、ワキがそれぞれ好演し、囃子も良く、何と言ってもシテの充実度が際立っていた。「忘れめや」というワカと続く序ノ舞は、一生心に残るだろう。

第2位　塩津　哲生　『野宮』　9月11日（土）　国立能楽堂普及公演
　シテの気迫でひとつの世界を完璧に作り上げた。藤田大五郎師の笛も極めて印象的。

第3位　三川　泉　『班女』　11月14日（日）　宝生会月並能
　地謡が素晴らしく、また絶句はあれどもこれほど深く、優美で哀しい『班女』を勤められるシテは他にいないと思われる。

　髙橋　章　『安宅』延年之舞　貝付貝立　5月22日（土）　セルリアンタワー能楽堂3周年特別公演は、最後まで3位にするかどうか迷った。これまで観たことのない重厚な『安宅』であり、能という枠を越えずに芝居のできるシテの力量に感じ入る。子方も頑張った。

　残念ながら、今年は圧倒的に心に強い印象を残した舞台が少なかったように思う。また、行きたいと思った舞台（浅見真州の会、広忠の会等）に足を運べなかったのも悔やまれるが、これは仕方がない。

　世界は揺れ動き、自分の小さな日常も鳴動する。そんな中でもこうして能を観続けられるとは、本当に幸せである。思うにまかせないことも多いけれど、来年もできる限り真摯に舞台と向き合っていきたい。

こぎつね丸