観能雑感
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2002年08月16日(金) 国立能楽堂定例公演

国立能楽堂定例公演 18:00〜

狂言「ぬけから」
シテ 野村 萬
アド 野村 万之丞

既にかなりの回数能楽堂に通っているが、リアル万之丞先生を見るのは初めて。構えが思っていたよりもきれいだった。萬師はやや力がない。お年の所為だろうか。
万之丞師、終始顔が笑っているのが気になる。それでは詞の面白さが生きないと思うのだが。萬師の太郎冠者はさすが。安心して見ていられる。役柄が交替していたら、あまり楽しめなかったのではないだろうか。鬼の面をかけて太郎冠者を驚かせ、厄介ばらいしようとする主人はかなりしたたか。主人に堂々と酒を要求する太郎冠者も負けてはいない。自分が鬼になってしまったと同様するが、最後はそれを逆手にとってさりげなく反撃。庶民はたくましくないと生きていけないのだ。いつの時代も。

能「石橋」
シテ 香川 靖嗣
ツレ 中村 邦生
ワキ 野口 敦弘
アイ 野村 与十郎
笛 一噌 庸二(噌) 小鼓 北村 治(大) 大鼓 柿原 崇志(高) 金春國和(金)

久々の喜多流。シテ、地謡とも充実した顔ぶれで期待が高まる。
半能として上演される機会が多い曲なので、前場を観る事が出来るのは、貴重な機会と言えよう。しかし、普段省略されているのも宜なるかなと思わせるくらい、前場は地味であまり必然性を感じさせない。ここをどう演じるかが重要だと思われるのだが、そのような意識は感じられなかった。あくまでもあっさりと演じるという主張なのかもしれない。香川師のハコビが美しい。舞台下を覗き込むと、本当に千丈の深さを覗いているようである。地謡は正に喜多流と思わせる力強さ。
アイはかなり特殊な出をした。面をかけ、幕内から謡いながらゆっくりと歩んでくる。徳利をつけた釣竿を持った仙人。石橋の謂れと前場を簡単にまとめる。与十郎師、声量に恵まれているとは思えないが、全く力みがなく良く通る。後場の獅子の登場に相応しい場を作り上げる。途中、半幕が上がって獅子の姿が半分だけ見える。支度が出来たことを舞台上に示すと共に、獅子の威厳を表しているのだろうか。
乱序が奏される。露の段は、深山の静けさを感じさせて、直後の勇壮な獅子の出に対する期待感を盛り上げる。まず白獅子、続いて赤獅子登場。手を猫のように少し曲げ、岩を乗り越えて行くかのような独特の足使い。両袖を張って舞う姿など、独特の型が満載。両脇に紅白の牡丹を配した一畳台に飛び乗り、飛び越え、「獅子」と呼ばれる特殊な囃子に乗って勇壮に動き回る。もう少し見ていたい、というところで終わるのが、能の奥ゆかしさかもしれない。
ただ、能一番、狂言一番の番組ではやや物足りなさが残る。三番立ての切能として観るのならば、言う事なしなのだけれど。

某サイトの主催者様にお目にかかれる機会だったのだが、発見できず。こちらの体調が思わしくなく、あまり動けなかったことが原因だろう。
今回は視界を遮られることもなく、酷い口臭に悩まされる事もなく、かなり良い状態での観能だった。久し振りである。毎回こうだとありがたいのだが。


こぎつね丸