青い物語
由良



 はぅぁっ!!

ホットジャムだけじゃなくて、ZIPにもK-MIXにもコメントしてたんですか……!(ゆらのこころにかいしんのいちげき!きゅうしょにあたった!)
これからはトイズのHPでちゃんとこまめにメディアスケジュールを確認しよう……泣。


久しぶりにかいてみる。





















体の奥底から熱を奪っていくような、つめたい細かな雨がしとしと降ったかと思うと
少し肌寒い強い風が、雨雲を追いやって暖かい春の日差しをつれてくる。
そんな三寒四温。春雨の合間の晴れた日に、ちょっとワケアリな奇妙な家族が都内のマンションに引越ししてきた。
傷ひとつ、埃ひとつ許さないぴかぴかのフローリングに無造作に積み上げられるダンボール。
万年帰宅部で面倒が嫌いなミツヒトが、楽をしようと部屋の入り口近くに荷物を積み上げたせいで狭い部屋でもないのに歩きにくい。手を抜くミツヒトを妹の真由が目ざとく見咎めた。
「もぉ〜!ちょっと、みっくん!!こんなとこに荷物置いちゃ、みんな通れないでしょ?それくらい考えてよねっ、馬鹿なんだから」
「馬鹿じゃねーよっ!!家ん中運んだって、どーせ最後はお前らがそれぞれの部屋に自分で荷物運ぶんだから入り口近くのほうが効率的だろ。てか、お前も手伝えよ!」
普段、広辞苑よりも重いものを持たないミツヒトは、なれない力仕事にぜぇぜぇと息が上がっているのだが、他人に言い返すときだけは不思議と乱れた息が整って饒舌になる。真由はわざとらしく声を上げた。
「えぇ〜、みっくんってば女の子にそんな重い荷物運ばせる気なの?人手が足りなくてこれから兄妹4人協力してやってかなきゃって時なのに、どーっしてみんなのために自分が全部部屋まで運んであげようって気にならないかなぁ」
「だから、人手が足らないんだからお前も減らず口叩いてないで運べ!」
ぷるぷると震える色白の細い手でダンボールを支える中腰のミツヒトに、真由はアイドル並のぶりっ子笑顔で笑いかける。
「真由は癒し系担当だからっ!戦力外通告なのっ」
「意味わかんねぇー」
ミツヒトは本気で顔をしかめて舌打ちするが、真由のぶりっこ笑顔は崩れない。
「しかも、女の子に力仕事強制するなんて、そんなんだから顔は良いのにみっくんモテないんだよっ……あ。はーくんが呼んでる」
「そうだ、はーくんもヒロ兄もいるのになんで俺ばっか荷持運びしなきゃなんねーんだよ!はーくんにやらせろよ!!」
大人げなく喚きだす兄の顔に真由はビシっと人差し指を突き出した。
「はーくんはお腹をすかせた真由たちのために急ピッチで昼ご飯作ってるの!しかもこの中でご飯作れるの、はーくんしかいないんだから問答無用で手ぇ離せないでしょ。お腹空いたって今さっきゴネたの、みっくんだよ。よって、今ウチに男手はみっくんしかいないの。ちなみにヒロ兄は予備校。」
「げ。ヒロ兄、引越しの荷物の片付けも終わらないうちから予備校いってんのかよ……」
「しかも、まだ春期講習も始まってないから自習室に缶詰だよ。今年のヒロ兄は本気で本気だね…。」
「わざわざ引っ越してきたのもそのためだしなぁ……。」
「むー……。」
長兄の大学受験にかける情熱について二人してしばし感慨にふけっていると、背後の扉がバタンと開いてオタマを持ったエプロン姿のハヤトが顔を出した。
「まゆぅ、何してるんだい。さっきから呼んでるだろー?」
「あっ、はーくん」
「おっ、はーくん」
同時に振り向いた真由とミツヒトの声が重なる。
部屋中乱雑に運び込まれたダンボールの山を見てハヤトが困ったように苦笑う。
「誰が運んだのか一目瞭然な光景だねぇ…。真由も手伝ってあげればよかったのに。」
「真由もそう言ったんだけどね、みっくん『自分でやる』って聞かなくて…」
「えぇっ!?」
さっきのぶりっ子笑顔が豹変して、シュンと項垂れた格好でサラリと嘘を吐く。素っ頓狂な声を上げるミツヒトのことなどお構いなしだ。
「『これからは兄妹四人で協力してやってかなくちゃならないから、みんなのために自分で最後まで運ぶ』って。みっくんってば偉いよね。だから、ちょっとばかり頭が足りなくてこんな邪魔なとこに荷持つ置いちゃってるけど、みっくんのこと怒らないであげてね、はーくん。」
いや、俺がはーくんに怒られるいわれはないし…と口にする前に、ハヤトの言葉がかぶさってきてミツヒトは口を開く機会を失った。
「僕がみっくんのこと怒るわけないよ。まゆもみっくんもやさしいね。いい子だね。」
「えへへー」
3歳児に対するパパのようなハヤトのヨシヨシに真由はご満悦のようだ。
「……」
ミツヒトは舌打ちと共にひとこと『キモイ』と吐き捨てたかったが、そうすれば真由に凄まじい形相で睨まれることは目に見えていたので敢えて黙っていた。
「ところで、そのいい子の真由とみっくんにお願いがあるんだけど」
にこやかな笑顔のままでハヤトが切り出す。
「なになにー?」
「なんか面倒なこと押し付けられそうだ……」
「大したことじゃないんだけど。二人でご近所さんに挨拶周り行ってきてくれる?」
えぇぇ。と不満の声を上げるよりも早く、真由に手をつかまれたミツヒトはひとことも発せないまま玄関へと引きずられていく。
「行ってきま〜す」
不自然なほどに上機嫌な妹の声に、ハヤトは笑顔で軽く手を振る。
「行ってらっしゃい」
素直で鈍感な兄の目には、無理矢理引きずられていく不本意な弟の姿は映らなかったらしい。


いまどき、しかも都内のマンションで、一家揃っての引越しじゃなくて一人暮らし(に色々なオプションが付いてきた形態)なのに挨拶周りにいくやつがどこにいるんだ!!
と、ねちねち文句を言い続けるミツヒトの隣を歩きながら、真由はいい加減年近い兄の執拗さと子供っぽさにうんざりしていた。
「確かにめんどくさいけど、行くことに決めたんだからもういいじゃん。文句言ったってしょうがないでしょ?いい加減ちょっと黙ったら?」
「なんでお前は俺の言うことは聞かないくせに、はーくんの言うことは何でもすぐ聞くんだよ。しかも平気で嘘吐くし。」
「なぁに、みっくんもしかして妬いてるの?馬鹿みたい」
「はぁ?なんで俺が。ていうか、さっきからバカ馬鹿言ってるけど俺のほうがお前より成績はよっぽどいいんだぞ」
「そうなんだよね、不思議なことに。私、みっくんに会ってはじめて頭の良い馬鹿がいるんだってこと知ったよ。発見だったなぁ」
「お前、こんなに性格悪いのになんではーくんの前だと……」
お目当ての部屋に辿り着いて、ミツヒトは口をつぐんだ。立ち止まりインターホンを押す。住人はなかなか出てこない。膨れっ面の真由が小声で問いただす。
「はーくんの前だと……何よ。」
「…何でもねぇよ。」
真由の足元にわざとらしい溜息が落ちる。
「はーくんも何で二人に頼んだのかなぁ。真由だけで挨拶周りできるのにぃ。みっくん無愛想で邪魔だし。」
「お前方向音痴だから、ちゃんと帰ってこれるか心配だったんじゃね?なんせ中3にもなって近所のスーパーに買い物行って迷子になるくらいだからなぁ」
「なっ…!それはっ……もぅ、忘れてよ!しつこいよっ!!」
小声で小突いていると、扉の向こうからマンションの狭い廊下を小走りでやってくるバタバタとした音が聞こえてきた。
「ほら、ひと来たぜ。営業スマイルの準備しなくていいのかよ。」
「……」
ガチャガチャとドアロックを外す音が聞こえる。ミツヒトへの毒突きはひとまず心の中に収めておいたが、真由は今日の昼ご飯の盛り付けでミツヒトの皿には嫌いなニンジンをどっさり入れ込もうと心に決めた。
目の前の扉が耳につく音を立ててゆっくりと開く。もちろん、目をパッチリと開けて唇の端をにっこり持ち上げる営業スマイルを忘れない。



「はじめまして、このたび引っ越してきました青山真由です。それで、こっちが兄の青山充人です。」
「まぁ、あの。もう二人くらい他に兄がいるんスけどね。」
「色々ご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします。」





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なんだこれー。恥ずかしすぎる。
もういいよ、自己満足で。趣味丸出しです。
よろしくおねがいします。


2006年03月24日(金)
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