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■ ハボに無意味に愛されてみよう(ありえない)
けして訪れることのない待ち人に思いを馳せるのは それほど愚かなことなのだろうか。
ガラス張りの店内から見える町並み。 小さな噴水の水飛沫に、落ちかける陽光は目に痛いほどのきらめきをうつして。 少し濃い赤朽葉色 茜と緋色が間でひそかにまじりあって やさしいコーラルピンクが空を埋め尽くしている。 あの日もこんな夕暮れだった。 存在を見せ付けるかのように空を赤く塗り替えて。 太陽が沈んでしまえば、あっけなく周りは闇に染まってしまう。 私はその暗闇の中では、あの人を見つけられないかもしれない。 だから、早く来て。と小さく祈った。
けして訪れること無い待ち人に、あまりに儚い祈りを。
「悪い、帰り際に仕事押し付けられて遅くなっちまって……待ったか?」
「いいのよ、気にしないで。お仕事お疲れ様。」
彼の色素の薄い金髪が、西日に照らされてオレンジ色に染まる。 待ち人は来ない。今日も、あの日も。
「何読んでた?」
「他愛の無いよくある恋愛小説。」
「……おもしろい?」
「時間を潰すときには、わりと。」
手にする本はなんだって同じ。 目は機械的に活字を追うだけ。 どうせ内容なんて頭に少しも入っていかないんだもの。
「えーと……そろそろ行かねぇ?」
「一杯くらい何か飲んだら?お金なら払っておくから。」
「だって、ここ禁煙だろ?」
あまりにも彼らしい言葉につい苦笑した。
* * *
「にんじんはこの前買ったわよね。たまねぎはまだ残ってる?」
「どうだったかな………たぶん無かった気がする。」
ここ数日、司令部のほうが忙し過ぎてまともに自炊をした記憶が無い。 まぁ、忙しくなくてもたいてい外食で済ませたり 司令部で食べたりしてできる限りその機会を減らそうと努力しているのだが。
「……ごめんなさいね。」
「ん、何が。」
「こういうのって、普通、先に済ませておくべきでしょう。 仕事が終わって疲れているのに、あなたを買い物に付き合わせちゃって。」
「………。」
驚いた。 そんなこと考えているんだ。 晩飯作ってもらえるってだけで、俺はもう他には何も要らないってくらい十分幸福なのに。しかも女の子の手作り料理。
「変なこと気にすんなよ。一緒に買い物したほうが楽しいし。それに……」
……デートみたいで。
思い付いたけど言葉にはできなかった。 一緒に夕飯の買い物なんて所帯染みてるにもほどがあるけど。 紛れもなく、これが俺達のいつものデート。 時間に縛られた恋人達の久しぶりの逢瀬。
「あー……悪いな、久しぶりなのにどこにも連れて行ってやれなくて。」
トマトを片手に持ったままの格好で、フィーネの身体が固まる。 口を半開きにして、普段そうそう見られない間抜けな表情をしたかと思えば、突然吹き出して笑い出した。
「おかしい。ジャン、それ話が全然繋がってないよ」
「そうか?まぁ、細かいこと気にするな」
「あなたも細かいこと気にしないで。 忙しいんだもの、仕方ないわ。どこか特別な場所に連れていって欲しいなんて思ってないから。」
そう言って、自然な笑顔でほほえむ。 それだけで、何が許されたわけでもないのに意味もなく安心してしまう。 惚気かもしれないけど。 自分には勿体無いくらいできた彼女だと思う。
_________________________ ひそかに花屋の娘設定。 そして実はハボかわいそうな役回りだったり。爆 大佐祭に出すのもどうかなぁと思ったのでとりあえず日記に。
2003年10月30日(木)
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