29号の日記
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| 2005年10月19日(水) |
キングダム オブ ヘブン |
平日だけど大丈夫かなと思いつつ、借りてきた。 念の為1泊2日にして正解でした。翌日のある平日に、通しで観るのは負担が重い。できればこれは劇場で観たかったな。でもここ数年、人付き合いが希薄で、一緒に観る恋人なんていないのでこうしてテレビ画面で観てる。この作品もかなり横長の画面なので、昔からの縦横比のテレビ画面だと、小さな画面がより一層小さくなる。
舞台背景は12世紀。十字軍。「1184年」と出てきたので、日本ではちょうど、鎌倉幕府成立直前。源氏と平氏が争ってる頃。 主人公の男に向かい、聖職者が、「自殺したアンタの母君の魂は成仏できない。(あ、キリスト教だから「成仏」とは言わなかったな。確か「地獄に堕ちる」だったかな?)母の魂を救いたければ、十字軍に参加して罪滅ぼしをしろ」とアドバイスしたのだが、主人公は逆ギレし、聖職者を刺し殺してしまう。村にいられなくなった男は、図らずも、聖職者のアドバイス通り、「聖都」エルサレムへと旅立つ・・・といった感じで物語が始まる。
エルサレム近郊の、地中海東岸に船が辿り着いた時、主人公だったか周辺人物だったか、とにかく誰かが、「世界の果てに来た」という言葉を使ったが、これは明らかな間違いで、「我々は世界の中心にやってきた」と思ったはず。当時ヨーロッパで作られた地図を見れば、エルサレムこそが世界の中心に描かれているのだから。
この作品、現代という時代に、図らずもかなり影響されているらしく、登場人物は大きく3つに区分することが出来る。すなわち、原理主義的キリスト教徒と、リベラルなキリスト教徒、それにイスラム教徒。ちなみに主人公は「リベラルなキリスト教徒」という設定。原理主義的キリスト教徒は「異教徒なんて殺してしまえばいい。きっと神も喜んでくれるだろう」という神経の持ち主。あまりにご都合主義な「神の御意志」を聞くにつけ、観ているこちらはあきれて笑いが止まらない。逆に、「リベラルなキリスト教徒」、本当にこんなリベラルな考えを持ったキリスト教徒、この時代にいたの?と、つい疑ってしまう。いろんな考えを持った人がいたはずだから、リベラルな考え方をする人自体は確かにいたかもしれないけれど、それを口にしたり、態度に示すことが出来たかどうかは極めて疑問だ。下手をすれば、「異教徒に肩入れする者は神の敵だ」とか「異端者だ」とか言われかねず、命の危険すらあった時代なのだから。 当時、エルサレムを支配していたキリスト教徒の君主(第一次十字軍遠征によって占領し、その状態が数十年あまり続いている状態だったらしい)は、らい病・・・今で言うハンセン病だったらしい。 実は、この作品のオープニングの前に、「当作品中で、「らい」または「らい病」(疒+頼という字)として語られている、いわゆるハンセン病は、今では完全に治る病気であり、作品中に描かれているようなことは現在では起こりません」という表示の画面が現れた。 実はこの病気、少し前にテレビや新聞で、過去の感染者強制隔離問題に対して国が謝罪したことで、大きく報道されたのだったが、普段の報道では、過去の政策の誤りによる偏見や誤解を解く目的での、「空気伝染しないので、患者を隔離する必要などなかった」「感染しても、日常生活を送ることは可能」といった報道がほとんどで、「では実際、どんな症状が出る病気なのか」「治療法がなかったであろう当時、どんなふうに恐れられていたのか」という、基本的な知識が何も知らない状態だったので、そういう病気だったのか、と初めて知ることが出来、興味深かった。例えば、「今では「結核」は抗生物質の投与で治る病気と知っているが、それ以前は、不治の病として恐れられており、咳が出て、血を吐いたりすることを繰り返しながら衰弱していき、死んでいった」といった、そういう基本的な知識が欲しかったのだ。作品中で分かった限りでは、「体の一部が痛みなどの感覚を失い、やがて生きた木が枯れ木になるかのように、顔や体が、血の気のない枯れた感じになっていき、時間をかけて衰弱して死に至る」というものだった。その君主が常時仮面を着用していたのは、枯れ木のように変わり果てた顔を他人に見られぬためか、もしくは、(本来は感染しないが)、感染すると信じられていたために、他人に感染させてしまうことがないようにかぶっていたのかのいずれかだろう。
この、「リベラルなエルサレム君主」の病死の後を継いだ王は、この時代らしい原理主義者。エルサレムの城を出て異教徒征伐に乗り出すが、これが、実に無謀な戦い。ちょっと太平洋戦争当時の日本軍を連想させる。「無敵の筈の神の軍隊」を壊滅させたイスラム軍は、エルサレム城下に迫り、ここで主人公の出番。兵士でない一般市民を前に、「自分達の家族や友人を守りたいのなら武器を取り、守れ」と演説。
イスラム軍によるエルサレム攻城戦は、前評判通り、迫力がある出来。当時の投石器の威力ってすごいんだな、と思う。下手な爆弾よりよっぽど威力がありそう。イスラム軍の中に、水車のような回転をしている、大掛かりな兵器らしきものがあったけど、何に使うものだったんだろう?攻城塔に破城槌。火に弱いのは三国志の時代から変わらないな、と苦笑。
もう一度か二度、じっくりと鑑賞したいところ。そのうち「新作」でなくなったら、こんどはゆっくり一週間借りたいものである。
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