休日の朝、がんばって早起きして、 L市から車で30分程の、 皮革産業の町へ行く。
ここはイタリア等のブランドの下請をやっており、 卸の値段で品質の良い製品が買える。 もちろん、くさってもイタリアというわけで、 デザインも面白いものが多い。
同行したのは、夏にも一緒だったCSB先生と、その娘さん。 先生は前回スーツを買っており、 その店がすっかり気に入ってしまったらしい。 コージ苑も、その時にはバッグを一点買ったが、 これが結構使いやすいので、味を占めたという次第である。
10時前には現地に到着して、 秋冬のコレクションを物色する。 やはり厚手のスーツとコートが多い。 襟と袖口に長めの羊毛がボワボワとついているコートがかわいいが、 さすがにデザインが若くて、 ちょっと手が出ない。
スーツもいいなーと思いつつ、 あれこれと見てまわっていたところ、 一着のコートが目に止まった。
黒が多い店内に、 一見茶色く見えるのが、まず目立った。 良く見ると、渋い赤を下地に、 茶色をのせている、なんとも微妙な色合い。 ちょっとハード目のデザインで、 ベルトが袖口にもついている。 実際に着てみると、 見た目よりも随分と柔らかい革を使っていた。
どうしよう、気に入っちゃった…
お値段を見る。 日本円にして3万円以下。 はっきり言って安い。 しかし、コージ苑の給料からいって、 ちょっと考えさせるお値段ではある。
それでも結局買ってしまったのは、 あまり見かけないその色が、 意外なほど自分に合っていたのと、 ヨーロッパの製品にも関わらず、 日本人にしても肩幅が狭いコージ苑にぴったりだったからである。 加えて、CSB先生と娘さんの後押しも効いた。 女同士の買物って、 どうしてお互いを浪費させる方向に向かうんだろう…
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予定外の出費をした後は、 その出費に対する後悔が半分と、 手に入れた物への満足感が半分。 心を落ち着けるため(そしてこれ以上出費しないため)に、 午後は自宅で大人しく読書しておいた。
司馬遼太郎『風の武士』 講談社文庫
物語は、紀州の山奥にある隠し国を巡る、 幕府と紀州藩の攻防を舞台にして、 忍びの家に生まれた一人の男が活躍する、というもの。
伝奇物には、自分は今いち入り込めないことが、 この夏から数冊ほど読み、 ここに至ってよく分った。 司馬作品でさえそうなんだから、 こりゃもう何読んでもダメだな、と。
加納朋子『魔法飛行』 創元推理文庫
この作家さんは、誠に女の子らしい話を書く、 と言ったら怒られるだろうか。 日常にひそむ謎を、あくまで淡々と解いてゆく。 好き嫌いが結構分かれるタイプの話なんではなかろうか。
清水義範『永遠のジャック&ベティ』 講談社文庫
「こんにちは。私はジャックです」 「こんにちは。私はベティです」 大概の英語教科書が、このようにして始まる。 その登場人物が、50歳にして再会した時に交わす会話は…
英語教科書をはじめ、 私たちがよく目にする文体(映画パンフとかCMとか)が、 ひねり方一つでえらく面白くなる、その良い見本。
宮部みゆき『返事はいらない』 新潮文庫
『火車』の前に出版されたという短編集。 コージ苑が好きだったのは、 表題にもなっている「返事はいらない」と、 「ドルネシアへようこそ」の二本。 宮部みゆきの、なんとも悲しい読後感も嫌いじゃないけど、 やっぱり「ほっとする」話の方が好み。
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