出向コージ苑

2004年10月16日(土) 午前、午後

休日の朝、がんばって早起きして、
L市から車で30分程の、
皮革産業の町へ行く。

ここはイタリア等のブランドの下請をやっており、
卸の値段で品質の良い製品が買える。
もちろん、くさってもイタリアというわけで、
デザインも面白いものが多い。

同行したのは、夏にも一緒だったCSB先生と、その娘さん。
先生は前回スーツを買っており、
その店がすっかり気に入ってしまったらしい。
コージ苑も、その時にはバッグを一点買ったが、
これが結構使いやすいので、味を占めたという次第である。

10時前には現地に到着して、
秋冬のコレクションを物色する。
やはり厚手のスーツとコートが多い。
襟と袖口に長めの羊毛がボワボワとついているコートがかわいいが、
さすがにデザインが若くて、
ちょっと手が出ない。

スーツもいいなーと思いつつ、
あれこれと見てまわっていたところ、
一着のコートが目に止まった。

黒が多い店内に、
一見茶色く見えるのが、まず目立った。
良く見ると、渋い赤を下地に、
茶色をのせている、なんとも微妙な色合い。
ちょっとハード目のデザインで、
ベルトが袖口にもついている。
実際に着てみると、
見た目よりも随分と柔らかい革を使っていた。

どうしよう、気に入っちゃった…

お値段を見る。
日本円にして3万円以下。
はっきり言って安い。
しかし、コージ苑の給料からいって、
ちょっと考えさせるお値段ではある。

それでも結局買ってしまったのは、
あまり見かけないその色が、
意外なほど自分に合っていたのと、
ヨーロッパの製品にも関わらず、
日本人にしても肩幅が狭いコージ苑にぴったりだったからである。
加えて、CSB先生と娘さんの後押しも効いた。
女同士の買物って、
どうしてお互いを浪費させる方向に向かうんだろう…

※※※※※

予定外の出費をした後は、
その出費に対する後悔が半分と、
手に入れた物への満足感が半分。
心を落ち着けるため(そしてこれ以上出費しないため)に、
午後は自宅で大人しく読書しておいた。

司馬遼太郎『風の武士』 講談社文庫

物語は、紀州の山奥にある隠し国を巡る、
幕府と紀州藩の攻防を舞台にして、
忍びの家に生まれた一人の男が活躍する、というもの。

伝奇物には、自分は今いち入り込めないことが、
この夏から数冊ほど読み、
ここに至ってよく分った。
司馬作品でさえそうなんだから、
こりゃもう何読んでもダメだな、と。

加納朋子『魔法飛行』 創元推理文庫

この作家さんは、誠に女の子らしい話を書く、
と言ったら怒られるだろうか。
日常にひそむ謎を、あくまで淡々と解いてゆく。
好き嫌いが結構分かれるタイプの話なんではなかろうか。

清水義範『永遠のジャック&ベティ』 講談社文庫

「こんにちは。私はジャックです」
「こんにちは。私はベティです」
大概の英語教科書が、このようにして始まる。
その登場人物が、50歳にして再会した時に交わす会話は…

英語教科書をはじめ、
私たちがよく目にする文体(映画パンフとかCMとか)が、
ひねり方一つでえらく面白くなる、その良い見本。

宮部みゆき『返事はいらない』 新潮文庫

『火車』の前に出版されたという短編集。
コージ苑が好きだったのは、
表題にもなっている「返事はいらない」と、
「ドルネシアへようこそ」の二本。
宮部みゆきの、なんとも悲しい読後感も嫌いじゃないけど、
やっぱり「ほっとする」話の方が好み。


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