出向コージ苑

2003年11月12日(水) お隣さん(2)

朝食の席で、見慣れないものを見つけた。
バターが入っているにしては大きく、
蓋に七面鳥やら魚やらの絵がある。
開けてみると、パンにつけるペーストだった。
面白がって、三つほど味見をしたのが運のつきというやつで、
朝食には量がありすぎるそれを、
胸焼けがするほどたっぷりパンに塗りつけ、
片づけてしまわなくてはならなくなった二人である。
おかげで、20分の予定の朝食に1時間近くもかけてしまった。

大使館の位置は、あらかじめ地図でチェック済みなので、
元気に朝の町を歩き始める。
とにかく、市内を北の方向に向かって歩けば、
日の丸の旗が見えるはずなのだ。

30分北上しても、見えないとはどういうことだ。

適当な人をつかまえて聞く。
「日本大使館はどこですか」
スロ語とクロアチア語が似ている(らしい)のを良いことに、
スロ語で聞くあたり、失礼極まりない奴らであるが、
地元の人々は、実に親切に教えてくれた。

人によって、言うこと違ったけど。

迷いに迷ってうろついた末に、
やっとのことで大使館の看板を発見したのは、
約束の時間を1時間以上過ぎた後だった。
なのに大使館の人は、
(内心はどうあれ)にこやかにコージ苑達を迎え入れた。
ブラボー、パブリックサーバント。
っていうか、すみません(平謝り)。

そんな担当者さんであったが、
「どうしたんですか」と聞いてきたのは当たり前であろう。
「地図ではここになっていたんですが〜」とガイドを示すと、
のぞき込んだ彼はがっくりうなだれた。
「思いっきり間違ってます。」
…まあいいっす、とにかく着いたんだし。

無犯罪証明書申請のために、
かつてはコージ苑も通った道であるところの、
指紋採取にフレンチ嬢も挑戦である。
最初はおそるおそるやっていた彼女も、
回数を重ねるごとに(つまりはうまくいかなかったのである)、
まるで「指紋採取されるマスター」の様に、
「ん〜…やっ!」などと気合いを入れて、
用紙に自らの指紋をうつしている。
その傍らでコージ苑は、
本棚にあった「銀河鉄道999」を読んでいた。

失敗に失敗を重ねて、
終わったのは1時過ぎ。
かわいそうに、コージ苑達につきあった担当者さんは、
昼休みがなくなったに違いない。

行きは1時間以上かけた道のりも、
帰りは迷うことなく30分。
大使館の人お勧めのレストランで昼食をとる。
「そんなに高くもないですよ」とのことだったが、
コージ苑達には十分なお値段だった。
変なところで所得の格差を思い知った次第である。

電車の時間まで、買い物をする二人。
フレンチ嬢は、「寒い国」での冬に備えて、
厚手のコートを購入。
コージ苑は、数週間前に手袋をなくしてしまい、
新しいのを探していたのだが、
ここで焦げ茶の皮のやつを見つけたので、
ついつい買ってしまった。

※※※※※

まだこの国に住んで2ヶ月経っていないというのに、
電車がスロに入ると、なぜかほっとした。
ついでに夕食をとって帰ろうということになり、
コージ苑宅の近くにあるレストランへ。

あまり空腹ではなかったし、疲れてもいたので、
それぞれ単品で注文したのだが、
ここのおばちゃんはサービス精神が旺盛なので、
それだけでは済ませてくれない。
「おいしいから食べてみてよ」とスープが出され、
「これを食べなきゃ損よ」とデザートがつく。
どう見たって、おまけの方が多いのだが、
この気前の良さが人気の秘密なのか、
ここはいつでもお客でいっぱいなのだ。

しかし、「おばちゃんの好意」は、
その時のコージ苑達には、
というかコージ苑達の胃袋には、重かった。
食後のコーヒーを飲み終えたときには、
背筋を伸ばして座っていられないほど、満腹になった二人だった。

ともあれ、小旅行は無事終了。
楽しい二日間でした。


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