朝食の席で、見慣れないものを見つけた。 バターが入っているにしては大きく、 蓋に七面鳥やら魚やらの絵がある。 開けてみると、パンにつけるペーストだった。 面白がって、三つほど味見をしたのが運のつきというやつで、 朝食には量がありすぎるそれを、 胸焼けがするほどたっぷりパンに塗りつけ、 片づけてしまわなくてはならなくなった二人である。 おかげで、20分の予定の朝食に1時間近くもかけてしまった。
大使館の位置は、あらかじめ地図でチェック済みなので、 元気に朝の町を歩き始める。 とにかく、市内を北の方向に向かって歩けば、 日の丸の旗が見えるはずなのだ。
30分北上しても、見えないとはどういうことだ。
適当な人をつかまえて聞く。 「日本大使館はどこですか」 スロ語とクロアチア語が似ている(らしい)のを良いことに、 スロ語で聞くあたり、失礼極まりない奴らであるが、 地元の人々は、実に親切に教えてくれた。
人によって、言うこと違ったけど。
迷いに迷ってうろついた末に、 やっとのことで大使館の看板を発見したのは、 約束の時間を1時間以上過ぎた後だった。 なのに大使館の人は、 (内心はどうあれ)にこやかにコージ苑達を迎え入れた。 ブラボー、パブリックサーバント。 っていうか、すみません(平謝り)。
そんな担当者さんであったが、 「どうしたんですか」と聞いてきたのは当たり前であろう。 「地図ではここになっていたんですが〜」とガイドを示すと、 のぞき込んだ彼はがっくりうなだれた。 「思いっきり間違ってます。」 …まあいいっす、とにかく着いたんだし。
無犯罪証明書申請のために、 かつてはコージ苑も通った道であるところの、 指紋採取にフレンチ嬢も挑戦である。 最初はおそるおそるやっていた彼女も、 回数を重ねるごとに(つまりはうまくいかなかったのである)、 まるで「指紋採取されるマスター」の様に、 「ん〜…やっ!」などと気合いを入れて、 用紙に自らの指紋をうつしている。 その傍らでコージ苑は、 本棚にあった「銀河鉄道999」を読んでいた。
失敗に失敗を重ねて、 終わったのは1時過ぎ。 かわいそうに、コージ苑達につきあった担当者さんは、 昼休みがなくなったに違いない。
行きは1時間以上かけた道のりも、 帰りは迷うことなく30分。 大使館の人お勧めのレストランで昼食をとる。 「そんなに高くもないですよ」とのことだったが、 コージ苑達には十分なお値段だった。 変なところで所得の格差を思い知った次第である。
電車の時間まで、買い物をする二人。 フレンチ嬢は、「寒い国」での冬に備えて、 厚手のコートを購入。 コージ苑は、数週間前に手袋をなくしてしまい、 新しいのを探していたのだが、 ここで焦げ茶の皮のやつを見つけたので、 ついつい買ってしまった。
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まだこの国に住んで2ヶ月経っていないというのに、 電車がスロに入ると、なぜかほっとした。 ついでに夕食をとって帰ろうということになり、 コージ苑宅の近くにあるレストランへ。
あまり空腹ではなかったし、疲れてもいたので、 それぞれ単品で注文したのだが、 ここのおばちゃんはサービス精神が旺盛なので、 それだけでは済ませてくれない。 「おいしいから食べてみてよ」とスープが出され、 「これを食べなきゃ損よ」とデザートがつく。 どう見たって、おまけの方が多いのだが、 この気前の良さが人気の秘密なのか、 ここはいつでもお客でいっぱいなのだ。
しかし、「おばちゃんの好意」は、 その時のコージ苑達には、 というかコージ苑達の胃袋には、重かった。 食後のコーヒーを飲み終えたときには、 背筋を伸ばして座っていられないほど、満腹になった二人だった。
ともあれ、小旅行は無事終了。 楽しい二日間でした。
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