午後一番の飛行機に乗って、S国を離れる。
待合室で、座れる椅子を探していたら、 目が合ったおじさんが隣をあけてくれた。 本を広げて読み始めると、 興味津々でのぞきこんでくる。 そりゃね、開く方向逆だし、行は縦だし、 わけのわかんない文字が並んでるしね、珍しいかもね。
しばらくすると、おじさんは席を立った。 戻ってきたその手には、飴玉が握られている。 どうやらDFS(免税店)のレジから取って来たらしく、 コージ苑にも二つほど分けてくれた。 そのついでに、といった感じで、 「中国人か、日本人か?」と聞いてくる。 後は空港の待合室で交わされる、ごく普通の会話。
おじさんはスコピエから来たそうだ。 それがどこだか思い出すのに、3秒ほどかかってしまった。 どうやら、旧ソ連の国々を覚えたこの一年にかわって、 次はバルカン諸国の首都と配置を勉強せねばならないようだ。 人生、日々勉強である。 ちょっとつらい。
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機内にて、隣に座ったのは国籍不明の男性だった。 別に隣り合わせになったからといって、喋る義務もない。 お互い、ごく静かに空の旅を楽しんでいたのだが、 機内食が運ばれてきたその時に、 小さな事件が起こった。
その男性とコージ苑が頼んだ飲み物は赤ワイン。 そのまま口にしようとしたコージ苑に向かって、 彼がいきなりこう言った。 「Tintin」(多分こんな綴りなんだと思う) その音に酷似した、日本語のある言葉を連想してしまい、 コージ苑は一瞬固まったのだった。
彼は自分の言葉が理解されていないのだと思ったのか、 各国語で言いなおしてくれたので、 その間に我にかえったコージ苑は、 笑顔と共に「乾杯」と言えたのだが…ああびっくりした。
やっぱり、人生日々勉強なのだ。 かなりつらいけどね。
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ロバート・レーヴィン『あなたはどれだけ待てますか』 草思社 海外旅行に行って、 時間の感覚の違いにイライラしたことはありませんか。 ウェイトレスの対応が信じられない程遅かったり、 ガイドが約束の時間にロビーに来なかったり、 電車やバスが時間通りにホームに入ってこなかったり。 この本を読めば、そのイライラが少し解消されるかもしれない。
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