バタヤンが車を買った。 彼女が所持している免許はオートマ限定なので、 そこにこだわって探していたのだが、 何せ欧州はオートマ不毛地帯。 諦めかけていたところに、降ってわいたいい縁談。 ということで、彼女はめでたくオートマ車を手に入れた。 トヨタのカローラで7年落ち、ハッチバック式5ドア。 本日納車。
夕方、七味屋氏から電話がかかる。 「あのね、バタヤンが『おごるから夕食一緒に』って言ってますが」 行く行く、と二つ返事でOKしたコージ苑の言質をとった後で、 彼はおもむろに付け加えた。 「ただし場所は空港のレストラン、運転は彼女です」 その一瞬、電話線が沈黙を運んだ。
しかし日本で全くのペーパードライバーだったわけではなし、 多少なら右側通行の経験もあるということで、 待ち合わせて空港へレッツゴゥ。 はい、では発車前にライトをつけましょう。 バタヤン、スイッチをひねる。
ワイパーが作動した。 古典的な程のお約束。
がんばれ、キミの運転人生は明るい。 …多分ね。
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中島らも『愛をひっかけるための釘』集英社文庫 茶道の雑誌に連載されたというこのエッセイ、 そのせいかちょっとだけセンチメンタル。
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