| 2003年07月08日(火) |
Shift View |
「ようやっと、晴れたな」
先程までの雨が遺した湿度が重くのしかかる中、軽く呼気を放ってそれらを散らす。出会った頃の長さには程足りないが、明るい金糸が月光を受けて鈍く煌めいた。 「…?そうだな」 こくり、と頷いてから、柔らかい半眼で上空を見上げる隣人に倣ってみる。だが不破には彼の微笑の意味が分からない。 「何故笑うのだ?通常の月と同じではないか」 こればかりは生涯変わらないであろう『何故』という言葉を聞くのに、飽いたという認識を抱くことはきっとこの先ないだろう。
ふと、そんな自分を想像し、更に笑みを深めた。
「や、一日遅れの七夕さんもアリかと思てな。何や嬉しゅうなってもうたんや」
…俺らも似たようなもんやろ…? 軽やかにウィンクを飛ばす。懐っこい地元の友人の癖が馴染んでいる。他人の干渉を密やかにかわしていた頃とは違う、何とも言えないおおらかさが夜気に乗って不破を包んだ。安らぐ筈のそれを受けて、黒耀石が僅かに光量を落とす。ビールの入ったコンビニの袋を左手に持ち替えて、半歩近づいた。河原からの一陣の涼風が二人の間を摺り抜ける。
「…どしたん?」
鳶色の双眸にやんわりと皓月の雫を湛えて視線を絡ませる。今はもう不破より高くなったそれを合わせる為に、やや前傾して覗き込む。ふぅ、と吐息を零した後、いつもの強い眼差しで相手を射る。 「七夕とは当日でなければ意味がないだろう。そもそもあれは旧暦の話だ、今日ではない。更にベガとアルタイルの相対距離を考えれば14.428光年だぞ?14年6ヶ月はかかる計算だ。論理的に毎年逢うことは不可能だと考えられる」
暗算…?や、論点ちゃうやろ自分!
つい、胸中でツッコミ入れてしまう程には圧倒されて歩が止まる。数歩進んだ不破がさらり、と頭髪を靡かせて振り返った。 僅かに口角が上がる。
「…だが、地上からでなければ毎年遭遇できているのだ。問題なかろう?」
「…!」 その通りだ。雲の上はいつでも晴れているのだから、織女星と牽牛星は互いの情愛を投げかけあえる。それこそ一年中に。自分たちと同じ様に。 知らず口の端が緩んだ。
「…優しいなぁ、センセは」 自分たちの相対距離を限りなく縮めて、再度視線を投げかける。不破の頬がほんのり染まった。それは、提げたままのビールによるものではないということは言うまでもないだろう。
「せやから、今度は俺が優しゅうした…!」 寄せた口唇はポリエチレンに遮られる。ビールの冷気が去りつつあった。 「冷たいなぁ…」 「公道でがっつくな。…ビールが温くなる」 そのままビニールごと押し付けて、足早に歩き出す。
「……早く帰って祝いなおすぞ、藤村」
降りしきる白銀の光を纏って振り向いた不破が、僅かに虹彩を潤ませて呼びかける。
「はいなv」
ほんまに…優しいな、お前。
小走りで追いつき、肩を並べて不破の家へと向かった二人の影が月光により道路に刻まれた。
**************************************
と、言うわけでシゲ誕SSでした。しかも未来モノ☆つか、これって不破シゲ不破…(訊くな)? 実はコレ姉妹ネタが元だったり(え)。姉がシゲ、私が不破です(マジすか)。 阿倍仲麻呂でいこうかと思っていましたが、マイナー且つ暗すぎなので却下。いつか瑞垣(@寿司もとい『バッテリー』)でやってみたいなぁ(をい)♪
シゲ、お誕生日おめでとうv
**************************************
今日はひっそり哀しかったです。『キノの旅 優しい国(Tommorow Never Comes)』が最終回…(涙)。 オチは読めたけど、その所為で切なかった…。「大人の国」のキノに被る描写があったのでよりそう感じました。 プレ2でのゲーム「卑怯者の国」に走りそうです(待てぇ!)。それ以前にハードないですよ自分(問☆題☆違)。
そして、ひっそり敬愛サイトさんのアンケ結果にどぎまぎしたり(アレはそうなのかな…?<阿呆故ウロ)(や、思い込んどけ自分<嬉しいからv)。 更に、一日遅れましたが(殴)3歳のお誕生日のお祝い秋波(待て)を飛ばさせていただきたく思いますvこれからもご自愛なさいつつ、眼福作品をご披露してくださいませね♪>私信
|