月のシズク
mamico



 ナチュラル・クロック

毎朝、決まった時間に子どもたちの声で起こされる。
それはもう、ひよこたちが「ピーチクパーチク」啼いているような声。
その甲高さが、私を、眠りの底から、いつ何時でも容赦なく引きずり出す。

明け方近くまで仕事をしていたときなど、定刻にマンション階下で騒がれると
「お願いだから、もうちょっと眠らせてー」と叫び、布団をかぶりたくなる。
子どもの声は、なんだってあんなによく響くのだろう。

今朝は午前の早い時間に約束が入っていたので、私の方が早起きした。
ベランダで洗濯物を干していると、来た、来た。キャッキャッと高い
子どもたちの声が、どんどん近づいてくる。そして、通り過ぎたかと
思ったら、それは真下で止まった。

「キャー、こわーい」とか「ふかーい」とか、声が聞こえる。
身を乗り出して見ると、子どもたちがへっぴり腰で、マンション下の暗渠を
覗き込んでいた。鉄骨がむき出しになって、地下一階分、スカスカに見下ろ
せるのだ。あんなちっこい子どもたちには、奈落の底に見えるだろう。

不意にひとりが顔をあげ、「あっ、人がいるよ」と私を指差す。
騒々しいひよっこたちを撮影しようとカメラを構えた瞬間だった。
子どもたちは次々に「あっ、あっ」と私を見上げる。なんだかこっちが
気恥ずかしくなって、ベランダ越しに軽く手を振った。

「いつも騒がしくてすみませーん」若い保母さんが叫ぶ。
内心「まったくだよ」と思いつつも、笑顔で「いえいえ」と応えた私は、
まんざら子ども嫌いでもないらしい。



通り沿いの保育園の元気な園児たち。朝日に向ってゴー!なのです。

2004年03月11日(木)
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