月のシズク
mamico



 同居人

ジャマイカに住む兄からエアメールが届いた。
アメリカでのテロのせいもあって、長旅を余儀なくされた白い封筒は、
かなりぐったりしたご様子だった。
とりあえず今年一枚目のクリスマスカードである。

表紙の"For My Sister, My Friend"から始まり、
"I'm thinking of the happy times we've spent with one another,
Sharing little talks and special secrets with each other...."
というくだり、Yes, me too!であります。

というのは、むかし兄と私はふたり暮らしをした経験があるのだ。
なんというか、あの二年間は不思議な安定感のある日々だった。
兄はルームメイトとしては完璧だった。彼の得意分野は洗濯と皿洗い、
ゴミの分別出し。洗濯物はシワひとつなかったし、食器棚に並べられた
グラスにはくもりひとつなかった。いつまでもゴミ出しの曜日を
憶えられない私の代わりに、彼はきっちり毎日ゴミを出してくれた。

互いのプライベートには一切関わらなかったが、互いの友人が遊びにくると
よく一緒になって真夜中のドライブや食事をした。
休日にはふたりで食料や日用品の買い出しに出たし、
時間が空くとバカな映画を観に行っては悪評をたたいてビールを飲んだ。
兄妹でありながら、わたしたちは仲のよいトモダチだった。
きょうだいっていいもんだな、と思えた。

個人的には、わたしの生活空間に誰かが入ってくるのは好きでない。
だからこの先、結婚などして誰かと四六時中(ということはないと思うが)
一緒に生活するなんて、考えただけでぞっとする。
ああ、本当に兄は同居人として完璧だったな、と今になって実感するのである。




2001年12月06日(木)
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