月のシズク
mamico



 匂う配達人

Anne Fontaineに頼んでおいたブラウスを取りに行った。
せっかくだから試着しましょう、と店員さんとわいわいやっていると、
どこからか強いポプリの匂いがただよってくる。このお店ではブラウスに
小さなポプリを付けて飾っているのだが、それにしてもちょっときつすぎる。
香りの方を見やると、店の入り口に帽子をかぶった若い配達人が
困り顔で立っていた。

どうやら納品用のリネン・ウォーター(ポプリの香り)の瓶が搬送中に
トラックの中で割れたらしく、びしょびしょの段ボール箱が数個、足元に
積まれていた。聞くとトラックの荷台にも漏れて、いろんなものに匂いが
ついたらしい。彼が動くたびに、ぷんぷんとポプリの芳しい香りがこぼれる。

まったく弱ったなぁ、という彼の泣きそうな顔つきと、彼の衣服に深く
染みついた匂いを見比べ、そのアンバランスさに、店員さんと私はこっそり
顔を見合わせて笑いあった。「同じトラックで運ばれる品物みんなに、
この香りが付いたなら素敵じゃない」とおもしろそうに言う店員に、
配達人は信じられない、という表情で首を振っていた。




2001年11月29日(木)
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