ムッキーの初老日記
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「ああ、この日のことは一生忘れない。全てを憶えていよう」 という日が、人生には何回かある。
どんな服を着ていたのか、どんな靴をはいていたのか。 どんな物を食べ、どんな場所に行ったのか。 どんなことで笑い合い、どんな会話に心が震えたのか。
はじめは憶えていたはずなのに。 必死で胸に焼き付けたはずなのに。 何度も何度も反芻しては、幸せな気分になったり センチメンタルになったり、したはずなのに。
気がつくと、記憶はどんどん薄れている。 だんだん断片しか思い出せなくなる。
嬉しかったという、気持ち。 楽しかったという、気持ち。 切なかったという、気持ち。
それから、どんな顔をして笑っていたとか・・・ でも何で笑ったかは、全然思い出せない。
思い出はアナログだなと、しみじみ思う。 どんどん劣化するビデオテープのようだ。 どんな大事な記憶も鮮明には残せない。
残念だけれど。 反面、だからこそ、生きていけるとも思う。 人間、うまく出来ているものだ。
案外劣化じゃなく、浄化なのかもしれない。
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ムッキー
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