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▼19:42 「章大〜!俺の髪も結って!」 ばたばたと走る音がして、章大が振り返るとピンクのヘアゴムを手にした博貴が、満面の笑みでこちらに向かってくるのが見えた。 「結うって何を?」 「俺の髪!」 「どこを?」 「このへん!」 と、博貴が持ち上げたのはちょっとだけ伸びた後ろ髪。確かに結えないことはないけれど、全体としては短い博貴の髪を、そんな風に結んだところでおよそかわいくなるとは思えなかった。だから、 「エエー?博貴はまだ短いし、結ってもかわえないよ」 「でもするー!」 「アカンて、変なんなるから」 「やって、したいの!」 章大の助言にはまるで耳を貸さず、博貴はますますヘアゴムを差し出す。受け取ったら結わねばならないし、でもそれは章大の美意識として致しかねて、黙って博貴とヘアゴムを交互に見遣ってしまった。 博貴がどうして突然そんなことを言い出したのか、章大にはたぶん分かる気がしていた。 きっとそれは、自分が信五の髪を結っているのをいつも見ていたから。章大の指が魔法のように信五の艶やかな黒髪を結い上げるのを、じっと見ていた博貴だった。自分もやって欲しいというのがひとつ、もうひとつは、大好きな信五の真似をしたかったのだと思う。 「章大のいじわる!」 いつまで経ってもヘアゴムを受け取ってくれない章大に、ぷぅ、と博貴は頬を膨らませた。困ったな、と小首を傾げた章大が何か言うより先に、二人のやりとりを見守っていたのかいつの間にかそこにいた信五の、苦笑気味の笑い声がした。 「わかった、俺がやったるから博貴、おいで」 柔らかい手招きに博貴の顔がパァ、とそれは輝く。見えない尻尾を振って信五の元へ向かう後ろ姿に、章大は肩を竦めて、それから心配になる。章大から言わせれば、博貴に負けず劣らず信五の美的センスも、あまり自慢出来るものではなかったのだ。章大にとっては憧れにも近い、出来た姉としての信五の、唯一そこだけ言葉を失う、弱点のようなものだった。(まぁそれでも、大好きな姉であることには変わりはないのだけれど) 「でも俺は章大と違ってあんまり器用やないから、上手く出来んくても許してな」 「うぅん!雛ちゃんにやって貰うんやから、ぜんぜん大丈夫!」 何が大丈夫なんだか、のほほんとした二人の会話に、益々不安を募らせる章大だった。 それでM駅あんなダサーな結果に、だったら納得いくな、という話でした(笑) ちなみにその後帰宅した次女と三女がこんな会話をしたかどうかは不明です→「ただいま〜ってアレ(博貴)どないしたん?」「信五の真似して結ってって聞かんくて。俺はいやや言うたら拗ねて、結局信五に括って貰ったみたい」「あぁ、そうなん(笑)」「本人はごっつぅ気に入ってるみたいなんやけど」「まぁ、ええんちゃう?かわええやん」「え?」「信五がやったんやろ?博貴によぅ似合うてるで」「……(そうや、昴は信五に関してはビックリするくらい寛大なんやった)」 という…昴は独自の美的感覚があるわりには、信五のファッションセンスに口を挟んだことはない、という話(笑)。昴的にありえへんやろ!と(章大が)思うセンスでも「ええやん信五」で終わるっていう。昴って、そういうところありませんか?だからアイツは白カーディガンを着ちゃうんだよ…(ガックリ)。そして末っ子がすることに対しても、盲目に寛大なのです(笑)
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