猫の足跡
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2003年09月13日(土) TOYOTAより日産が好きなのに…

 午前中は、アルカサルとカテドラルを見学。

 スペインの中庭はとても気持ちがいい。スペインの光と影、熱狂と憂鬱、喧騒と静寂…こういう相反する要素の『内面』に属する部分を構成している気がする。静かで落ち着いた中庭では、とろけるような暑さの中でも、池からそよぐ涼風を感じることができるし、くつろぐには一番だ。特にここ、セビージャのアルカサルは、草気に彩られた中庭がいくつもあって思索的な雰囲気がある。青池保子の『アルカサル−王城』では、この居城を愛したペドロ王はどちらかというと直情径行的情熱家に描かれているが、本当は思慮深い(悪く言えば暗い)タイプの人だったのではないかと思ったりもした。

 さて、スペインの観光名所に共通する特徴として、順路がないことが挙げられる。春にバルセロナを旅したときには、サグラダ・ファミリアの塔で酷い目に遭ったが、ここもご多分に漏れず順路がない。まあ、人それぞれ見たいところがあるだろうから、お好きなようにどうぞ…ってことなのだろう。今回は、塔の中を上がったり下がったりしたわけではないから、写真を撮ったりしながらそぞろ歩きを楽しむことができた。

 そんな中、今旅行での実質初ナンパに遭遇(うわ〜、私ら女として大丈夫か?)。相手はアルカサルの警備員のおっちゃん。「案内してあげるから、あとでご飯食べようよ…」。観光地の警備員なんて、日本人見慣れてて、ガードが甘いなんて知り尽くしてるだろうから、冷たく丁重にお断りする。あ、おっちゃんと書いたけど、腹が出てなかったから、きっと年下だろう。それにしても、今回は女二人旅行だからだろうけれど、現地の人と話をする機会が少なかった。それとも観光地中心に回ったから、日本人が珍しくないのかな?

 アルカサルを出ると、もう陽が高くなっていて、気温ががんがん上がり始めた。次の目的地は、目の前のカテドラル…すぐに建物に入ることができるから、安心。と思っていたのに、入り口がどこだかぜんぜん分からない。入り口だと思っていくと出口だったり、入り口と書いてあるけど、よく読むと団体入り口だったり…。結局ほとんどでかい建物を半周してしまった。

 カテドラルはただひたすらでっかい。パンフレットによれば世界第三位の大きさだとか。ちなみにこれより大きいのはロンドンのセント・ポール寺院とバチカンだそうで…。同じパンフによれば、セビージャのカテドラルは「後世の人がキ**イだと思うようなでっかいのを建てよう!」ってコンセプトで造られたのだそうだけれど、その伝で行くとバチカンやセント・ポールは「超キ**イ???」

 カテドラルの見学をほぼ終えて、脇にあるヒラルダの塔に登った。この塔はいわゆる普通の塔にあるような螺旋階段ではなく、螺旋スロープをゆっくり登る仕組みで珍しい。階段じゃないから、これまで登ったことのあるヨーロッパの他の塔に比べて楽に上までたどり着いた。塔の上からは、ホテルのプールや街並がよく見え、闘牛場が大きくて、ちょっとびっくりした。一度は見るべきなんだろうか…闘牛。

 午前の最後は買い物。有名な馬具屋さんで、今は鞄なども売っている…というセビージャ版エルメス?へ。乗馬人口の違いが一番の理由なのだろうけれど、ヨーロッパはどこの国でも乗馬用品がとても安い。何でも日本の1/3くらいの値段で買える。最近ではちっとも馬に乗ることはなくなってしまったけれど、会社の馬好きさんのためにグローブを購入。赤と黒が可愛かったので、2つ買ってしまった。余った方は自分用にして、また乗ろうかな、などとも思う。

 T嬢はキーホルダーを購入。どれにするかすごーく迷った挙句、2つ買ってしまったりするところが好きだ。そういうときに飾らないっていうか、心のまま正直に動くT嬢ってとても好ましい。「あ〜こういう顔する人に、悪人はいないよな〜」って言うような顔をする。クールビューティをめざすT嬢には悪いけれど、実はその熱さが最大の魅力じゃないかと思う。こんなところで愛の告白をしてもしょうがないけど(笑)。

 この店でおもしろいものを発見。金属でできたS字というか鉤型というか…鎹(かすがい)の片っ方が反対向きになったような金具なんだけれど、何に使っていいのかよく分からないものがある。とりあえず、女性用の実用アクセサリーっぽいことは分かったけれど、どうにも分からないので、店員のおねぇさんに、「どうやって使うの?」と聞いてみたら、「机などに引っ掛けて、鞄をぶら下げるのよ」と実演してくれた。はあ、なるほどね〜。その場は感心して帰ってきてしまったけれど、買っておけばよかった。結構便利かも。

 お次はロエベに行く。界隈は高級ショップの立ち並ぶいい感じの広場。
 仕事用の鞄を買うぞ〜って思ってカードを握り締めてきたのに、品数が少なくてちょっとがっかりだった。お店のお姉さんはすごく好感の持てる人だったけど…。いわゆる海外のブランドショップでよく見られるように日本人をバカにする素振りも無く、「黒くて大きい鞄が欲しいのだけど。書類を入れたりするような…」というと、あれこれ出してきてくれて。う〜む、残念。仕方ないが日本で買うか。

 昼時になったので、一度宿に戻ってチェックアウト。その後はユダヤ人街を散歩して昼食。定番のサラダとトルティージャに加えて、今日は「闘牛の尻尾の煮込み」に挑戦。もちろん、本当の闘牛ではなくて単なる「牛テールの煮込み」なんだろうけど。味はよかった。こってりとろとろ。すごく太りそうでイイ。狂牛病なんてすっかり忘れて骨の髄をすすってしまった。まあ、どうせ頭には穴がいっぱい空いてるからもういいでしょう。

 ユダヤ人街の土産物屋を散策。ヘレスのビネガーやオリーブオイルなどを購入。お土産屋さんのいたるところに購入を断念したT嬢のエプロンがあって目に付く。ああ〜買ってプレゼントしちゃおうかなぁ…と何度も思う。
 ところで、何故だか分からないがスペイン土産は重いものが多い。ワイン、オリーブの瓶詰め、オリーブオイル、ビネガー、タイル…。軽くてかさばらない、そして安くて喜ばれるいい土産は無いものだろうか?

 昼食後は川沿いを散歩。空港行きのバス乗り場を探すも、現地の人はあまり知らないようだった。幾人かに教えてもらった場所はそれぞれ異なっていて、しかも最終的にココかなというところも、かなり遠かったのであきらめた。あの、カルメンが働いていたと言うタバコ工場の脇らしい。最初、タバコ屋、タバコ屋っていうから、エスタンコでもあるのかと思ったら、工場のことだったとは…後で気が付いた。

 川沿いの船着場で、しばらく腹ごなしに休む。フランス人やドイツ人の観光客が川下りの船に乗るために、わらわらとやってくるのを観察したりする。欧州の観光客は圧倒的に中高年のリタイヤ組が中心だ。で、みんな夫婦仲良く、手をつないだりして歩いてくる。年をとっても愛情を確認しあう夫婦っていいと思う。日本の中高年夫婦に愛情がないって訳じゃないんだろうけれど、やっぱり表現が足りない気がする。口に出したり、行動で示したりしないと伝わらないものも多いんだけどな。

 宿に戻り、荷物を受け取って、タクシーを呼んでもらう。シエスタの時間だったので、なかなかタクシーが来ない。そして、やってきたタクシーは、乗った時点でタクシーのメーターに2EUROほど表示が…。う〜む。やばいかな〜と思って、運転手に「なんで料金が2euroかかってるの?」と聞いたら、「これは迎車料金なんだ、ホテルから迎えにきてくれって連絡があったから、そこまでの料金だよ」と説明してくれるまでは良かったが、その後、ずーっと、こっちが「vale、vale!もう、わかったから!)」と言っても収まらずに、ずっと愚痴っぽくしゃべり続けるのには閉口だった。半分以上というか、9割は理解できなかったけど、途中からタクシー会社の悪口だか政府の悪口だかになった段階で「もう、勘弁してくれ〜」という感じ。まあ、彼にしてみりゃ、シエスタの時間だというのに、わざわざ遠くから呼び出されて東洋の金持ち小猿2匹を文句も言わず乗せてやってるのに、文句言われる筋合いはないってか〜。


 さて、そんなこんなであっという間にセビージャの空港に到着。行きに見た印象とはまったく違い、初めて訪れる空港みたいな気がする。う〜ん、よっぽど、あの時はアタマがイッてたんだろうなぁ…。とちょっと反省。

 バレンシアへの空の旅、お供になるのは、まさか!といいたくなるような小さいプロペラ機(しかも40人乗りくらいの飛行機に、乗客は7〜8人…)。こんなのベトナムで乗って以来だわ〜。うひゃー。

 今日も空は良く晴れて、飛行機からは地上が良く見える。隣で爆睡しているT嬢を横目で見ながら、そういえばT嬢は「アンダルシアの空を携帯カメラで撮影して、待ち受け画面にする」といいつつ、いつも外出時に携帯を忘れ、結局アンダルシアの空は撮影できなかったなぁ、と残念に思ったりする。まあ、バレンシアでも青い空は満喫できるだろうけれど…。

 空から見るスペインの大地は壮観だ。アンダルシアは茶色くてだだっぴろい。そして、緑の山を越えて風景が変わり、地中海に向かうとバレンシアが近いのだろう、飛行機が高度を落として着陸態勢に入った。バレンシアのマニセス空港付近は高級住宅街なのだろうか?一戸建ての広い敷地の家ばかりが目に付く。なんとみんなプールつきだ!!!中にはテニスコートやバスケットコート付きもある!そんなに高くないんだろうか、だとしたら別荘に買いたいなぁ。宝くじ、当たらないかしら…。

 空港は、予想通り小さくて閑散としていてプロペラ機がよく似合う。この空港からバレンシアの選手達は各地に転戦するんだわ〜、しょぼーい、と思ったら、それをわざわざジャンボに乗って極東から観に来ている自分が悲しくも可愛くなって、一人で笑ってしまった。ああ、あたしってバカ。

 空港からタクシーに乗って、バレンシア唯一の(でも何故か3軒もある)デパート、エル・コルテ・イングレスで降りる。ここは夜10時まで開いているから、クロークに荷物を預けておけば、ご飯食べたり買い物したりゆっくりできるはずなのだ(あ〜、あたしって天才!)。案の定、地下にクロークがあって、荷物を預かってくれた。

 身軽になって、まずやることは…と、向かいにあるバレンシアのオフィシャルショップへ駆け込んだ。弊店まで約40分。ダッシュでバレンシアの新ユニ(自分用にアイマールのノンブレ(背番号)入り。姫のお嬢用にバラハのノンブレ入り)を購入。白地に両袖だけが黒くてまるでパンダみたいだし、胸にはでっかく赤字で「TOYOTA」と書かれているし、全く気に入らないデザインなのに、結局買ってしまった。お父様ごめんなさい、トヨタの応援しているわけではないのです…。

 地下でノンブレをアイロンプリントしてもらう間に、明日の試合のチケットも併せて購入。最初は中上段の席を案内されたが、せっかくT嬢もいることだし、できるだけ良い席で見たかったので、「もっといい席はない?」とお姉さんにお願いすると、「ちょっと端だけど」と言いながらもかなり良いカテゴリの席を探してくれた。メスタージャは傾斜があって、上のほうからでも見やすいスタジアムで、前回はかなり高い位置から見ても十分楽しめたけど、良い席ならもっといいだろうな〜とうれしくなる。チケット代45EURO。

 ショップを出て、夕暮れの街をラ・ロンハに向かった。世界遺産だそうだけど、ありがたみがちっともわからない建物だ。昔、絹の交易所だったそうだから、建築物としてよりも歴史性を重視されているのだろう。釈然としない感じで歩いていると、中の案内人のおじさんが親切にパンフを配りにきてくれた。単に観光客だから配っておけ、っていう対応ではなくて「わざわざ見に来てくれてありがとう、ここはいいところだろう!我が街を誇りに思ってるんだ」という感じで持ってきてくれる。バレンシアの人って、そういうところが観光客ずれしていなくて好きだ。

 ラ・ロンハを出たら、日が暮れていた。旅の疲れが出る時期なのか、二人とも食欲があまりなかったので、今日は軽いご飯にしようと話していたら、市庁舎前広場からレイナ広場への間の目抜き通りにピンチョスの店発見。立ち食いだけど、小洒落たいい感じ。まだ新しい店のようで(春には無かった)、地元の人も興味深げにのぞいて行く。ガラス張りの窓際で赤ワイン片手に、美味しそうにピンチョスを食べていると、いいサクラになるようで、時々覗き込む人と目が合ってしまったりして可笑しい。美女2人が身体を張って宣伝したせいかどうかは知らないが、次から次へと人が入ってくる。ワイン2杯か3杯と、ピンチョスで適当に食べて、一人1000円くらい。安くて美味しいし、とっても良かった。上のフロアはちゃんとしたレストランみたいだったので、そっちもいつか行ってみたいなと思う。

 イングレスへ戻り、弊店間際のスーパーでお土産のワインを購入。結局、迷った挙句にK嬢向けに2本(一緒に飲む分と家で楽しんでもらう分)+実家向け1本購入。8EUROほどのバレンシアのワインと16EUROほどのリオハのグラン・レセルバ。お味はどんなものでしょう?

 バレンシアでの宿は、春にも泊まったホテル。前回と違い「rr」の音をちゃんと発音できたようで、聞き返されずにタクシーに乗ることが出来た。スペイン語の学習成果がちょっとは出たかな?と喜んだ。T嬢いわく「R音の話って誇張しすぎだと思ってたけど、こっちの人って、本当にすごい巻き舌でびっくりした」だそうで。…だから、いまだにルフェテ選手の名前も。バラハ選手のファーストネームもちゃんと呼べないのよぉ。くうううっ(涙)。スペイン語マスターへの道のりは遠い。

 このホテルは、本当にリーズナブルだ。いままでの宿の半分以下の値段で、このサービス。過不足の無いビジネスライクなところも好きだ。元病院だけあって全く情緒は無いけれど。これからも、ひいきにする予定。


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