探偵さんの日常
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2002年10月07日(月) テロリスト 〜ムーンライトダンス(5)




大変申し訳ありません。
2日続けて同じ内容をupしちゃいました。

昨日の10月6日分を修正しときましたので,良かったらご覧下さい。


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船の後部に不自然なフック跡があるのを発見した私は、その部分にナイフを入れてこじ開けた。蓋のようになっている部分を開けると、中は船倉部分を改造した居住区となっていた。中に入るには梯子を降りていかねばならない。私は無線で田所を呼ぶと、中の様子を探ろうとした。


そのとき!

「パンパンパンパン」

乾いた音が私の周囲で鳴り響いた。木屑が飛ぶ。次の一瞬、私の左肩は激痛に襲われた。


中の男たちが発砲してきたのだ。不用意に中を覗いた私は後悔したが、今はそんなことを考えている場合じゃない。のけぞって倒れた私が起き上がるとき、田所と早見が船の後部へ走ってきた。

「大丈夫か!」

田所と早見は叫ぶと、ホルスターから拳銃を引き抜き、船内を確認もせずに上から撃ちまくる。中からの抵抗はやみ、男3人は両手を上げて梯子の下までやってきた。


幸い、私の傷は拳銃弾の擦過傷による傷であり、痛みはあったがたいした傷ではなかった。先に巡視船に戻り、巡視船の職員の治療を受ける。


漁船では、船倉にいた3人を船倉に入れたまま、事情聴取がなされていた。そのうち一人は幹部・・・記せないがかなりの大物クラス、残り二人はそのボディーガードだった。要は、テロリストの密入国である。
このイカ釣り漁船は、薬物の密輸から工作員の上陸までを継続的に行っていたようだ。まさに売国奴、である。


傷の手当てが終わった私も事情聴取に参加することとした。私たちも船倉の3人も英語が話せるので、英語での会話となる。男たちは、

「私は日本の国会議員と懇意にしている」
「国に帰してもらいたい」

犯罪者が言いたい放題である。とりあえず私たちは、薬物の処理をすることとした。田所がブツの袋を破り、海に捨てていく。


「これが本当の水際作戦だ」


田所は次々袋を破り、ブツを海へ捨てる。身分なき捜査員は、他国の領海近くでの任務を誇りに思っているようだった。この男こそ、本当の警察官である。今、田所や早見に何かあっても日本政府は関知しないだろう。そんなぎりぎりの所で治安を守る護民官に対し、私は敬意を表さずにはいられなかった。


やがて、ブツの処理と事情聴取が済んだ。ここまで書いてきてなんだが、内容は記すことができない。ただこのあと、一人の大物政治家が事実上の引退に追い込まれることになる。もちろん表立って知っているのはほんの一部の人間だけだ。
私の知りたいことは事情聴取の中にあった。
まさか、あの先生こそが売国奴だったとは。余談だが、この事件の後、私は私の師と仰いでいたこの先生とも連絡を絶つこととなる。師に弓を引いた形だったが、私は後悔していない。国民全てが安心して暮らせる社会を目指す気持ちは師も変わらなかったのであろうが、そのやり方は余りにひどすぎた。


私たちは、漁船に詰まれていた救命ボートに男たちを乗せた。後の事は知ったことではない。他国領海に近いため、誰かが救助するであろうという予想はあったが、高波でもくれば小さなボートは転覆するだろう。最後に水と食料を入れたリュックを投げ入れて、巡視船と漁船は新潟へと引き返した。



「奴ら、死んだら死んだでいいんだが、生きて帰れば日本の怖さを思い知るだろうよ」



私たち3人は任務が終了した安堵感からか、会話にも冗談が出てくる。ちなみに私の腕は出血がじわじわと包帯の色をどす黒い赤色に変えていた。なんだか腕がしびれている。


港に着くと、すっかり朝になっていた。漁船の乗組員たちは正式に逮捕された。あとは海保がうまくやるだろう。

早見と私たちは港で別れることになった。

「お疲れ様でした」



3人とも敬礼をして別れる。ちなみにこの早見氏は、今も現役の防衛庁職員、である。防衛庁も広いので、ここに書いても彼が特定されることはなかろう。
私は田所と病院へ向かった。田所の手配で保険証も名前も名乗る必要がない。医師に全治3週間の宣言を受けて、東京へ戻る。私が負傷したため、BMWは帰りも田所の運転だ。



「海水浴でもすればよかったかな」
私がふざけて言うと、

「だめだ。水中メガネを忘れたからな」
田所は間髪いれず切り返す。さらに、

「これで、俺もスパイ任務は卒業だ。最後の裏奉公というところだな」



フーッ、と大きなため息を吐く田所。顔には出さなくとも、今まで苦労を重ね、常に命をかけた真剣勝負だったのであろう。肩の荷が下りた、そんな感じである。人間誰しも、深層心理では不安のない生活を送りたいものだ。好き好んであぶない世界に身を置きつづけたいと考える人間は少ないであろう。スパイという職を通じて、私は、平和や平凡という言葉の重さを誰よりも感じていた。



東京に戻り、私と田所は別れを告げた。2度と会う事はないかもしれない。生命の危機を共に渡り合った私たちは、最後にがっちりと握手を交わした。



そして3ヶ月後、某国からの麻薬ルートは壊滅し、ある暴力団組長が行方不明となった。某社会主義政党の議員はなぜか辞職し行方不明になり、そして私の師も力を失った。テロリストの支援者と呼んでも過言ではないだろうその人間たちに鉄槌が下されたのだ。





今、世間では北朝鮮問題が盛んに議論されているが。その裏にはクスリも、貨幣も、殺しも拉致も、さまざまな裏が絡み合う。外務省が隠す隠さないでマスコミは騒いでいるが、もっと根本的に隠されている歴史の裏を報道して欲しいものだ。




田所は,やがて警部に昇進し出向。今も警察に籍を置いている。
そして先日,もうひとつめでたい籍・・・入籍を果たした。



お相手は・・・・偶然にも友美・・・・



私の元婚約者だった。。。


これは,私に対する罰なのだろうか(苦笑)




おわり。




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