断罪の時間 〜Dance!な日常〜

2012年12月02日(日) 「Void the Fill」 二日目

その朝、わたしは起き上がれませんでした。 体中の力が入らないんです
毎日風邪対策はしてきたはずでした。 毎日温泉生活をenjoyしてきたんです!!
まさか本番に風邪ひくなんざダンサーとして最悪の醜態。
っていうか本番は今日もあるんだよ!!
現状を嘆いてもしかたありません。 「今」はできることをするときです

 本番ギリギリのギリギリまで寝た

みんなになんと言われようとすべては本番のため
自分の名前がある以上、その責務だけは絶対に果たしたい
〜なんのために別府まできたのか〜
会場へ向かう途中、血眼で薬局を探しました。
でも今日は日曜日、薬局とか開いてるの―??
もうふらふらでした。。 いつ倒れてもおかしくない感じだったとおもいます
薬局、薬局… あ、開いてる!開いてる!開いてたよ!!
商店街の入口に薬局を見つけました!!
入店。 声はガラガラ、ゾンビみたいな足取りで一言いいました

 「一番効くやつ…下さい」

薬局のおじさん「きみ、銀天街で踊るひとでしょ?」
なぜかピンポイントで当たってました。

 「練習してるの見てたよ、今日も本番じゃないの?」

そうか、なるほど納得です。

 「まずは体温測りなさい」

 38.5度―  なんてこった!!!

立っていられなかったわたしは椅子を用意されて自分の体温に絶望しました
薬局のおじさんは顆粒風邪薬を売ってくれました。
その上で「飲む前にうどん食べてきなさい」と近所のうどん屋へ行かされます。

 そして、なんと売り物の箱を破っていろんな薬をくれたのです

生姜湯をはじめ、いろんなサポート薬、一杯のかけうどんですよ!!
驚きました  ここまでしてくれる薬局にこれまでの人生で入ったことがない
人、人ですね。 わたしは黙って従いました

 その甲斐あってか本番はなんなくこなせたのです

わたしは軍服を着た男の役でした。
オープニングでは娼婦と一緒に出てくるところから始まります。
楠銀天街では事実そういった時代を刻んできた場所だそうです。
そんな時代へのオマージュのような役でした。
この作品でわたしに許された自由はオープニングだけでした。
たぶん娼婦役の女の子がいなければ自由気ままに踊りまくっていたはずです。
しかし二人でいる以上、“二人”を成立させなければなりません。
娼婦役の女の子にはかなりかわいい女の子があてがわれていましたが、
踊る場がほとんど与えられていなかったわたしには苦痛でした
自由にはいかないのが二人だからです
女の子にまったく悪気はありません、これはあくまでも個人的な事情です

 もっと踊りにしたかった

さてその薬局は日曜にもかかわらず、11時から深夜2時まで開いているのでしたw
これが、これが別府です。 ◎夜の街の特性でしょう◎
そのおかげでわたしはたすかったと言えます。
本番を終えて、お礼を述べに薬局へ行きました。
入店。

 「まずは体温測りなさい」

 38.8度―  なんてこった!!!

おもいきり悪化してる―
おそらくは本番を終えて一気に気が抜けたからでしょう。。
ちょっと考えれば当然の事態ですw
またもいろいろくれる薬局のおじさん!! ◎いくら感謝してもたりません◎

ありがとう薬局のおじさん! 今度は病気じゃないときに来るよ

この日は別府現代芸術フェスティバル最終日。
わたしたちが出演した「Void the Fill」は、フェスティバル最後を飾る公演でした。
そういうわけで全体の盛大な祝賀会と打ち上げが深夜までおこなわれる予定でした。
公演後、東野さんに風邪と発熱の件を伝えてわたしは別府を去りました。
なによりもカラダで生きるダンサーに伝染したくない。
宿を引き払ってひとり電車にのりました。

正直、その後どうやって帰ったかおぼえていません

まわりのダンサーと歓びをわかちあえなかったことは本当に残念でした
そして自分がVoid the Fillでどういった役割だったか、その結果を知りたかった

 舞台とは“誰一人欠けても成立しない”ものだからです

舞台上では誰にも頼らない自分が必要です
そして頼れるのは舞台上にいる人と共有していること

これはそのままわたしたちが生きている世界に相当します

利用するされる世界ではなく、生きることにただただ正直でいること
人と一緒に生きていることを共有すること

わたしは東野さんの作品の中で生きること、生き抜くことを考えてきました
それは東野さんに従うことではありません あらがうことです
それが作品をよりいきいきとするものだと信じています

後日、打ち上げにいった同胞からひとこと聞けましたw
「タイスケさん いろいろ言われてましたよ!」

 「軍人チックなイケメンダンサー打ち上げに来てないですよね!?」
 「あの人しか見てなかったよ〜」

冗談でも誰かの印象に残ったことはほんとうに嬉しいものです
出演できてよかった、そうおもえる確かなもの
できることなら外見や容姿ではなく踊りをいわれたい

 あの人、ではなくあの人の踊り、にしたい

2013年の目標ができました!  永遠のテーマのひとつですね


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Taisuke [HOMEPAGE]