ぴんよろ日記
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2008年05月05日(月) 「もっと聞きなさいよ」

実家に遊びに行って、
なんとなく、黒澤明関連のドキュメンタリーを立て続けに見て、
コテッとした肉料理を食べたような気分になる。
黒沢監督が亡くなった直後の淀川長治さんのインタビュー番組もあったが、
内容よりも、その、いちいちスパッとした答えかたが、印象深かった。
そもそもは1分も使わないコメントのためのインタビューだったから、
ディレクターは3つ4つの質問を終え、
「ありがとうございました」と言ったのだが、
淀川さんは「もっと聞きなさいよ。いろんなこと、もっと聞きなさいよ」と、
質問をうながした。(彼の死後、こうして1本の番組になるほどに)
ちょっぴりのコメントを録るだけと思っていた取材者は、
一瞬たじろぎつつも、思いつく限りの質問をし、
淀川さんはそのすべてに、
ことごとく、編集いらずのまとまったコメントをバシバシと打ち返していた。
追悼コメントを録るだけと思っていたディレクターがその場で思いつく質問など、
たぶん、淀川さんにとってみれば、寝ていても答えられるほど、
黒沢監督とその映画については考えたのだろうけれど、それだからなおさら、
(彼がこのインタビューの2カ月の後に亡くなったことを思えば、さらに)
「もっと聞きなさいよ」だったのだろう。

黒沢監督や淀川さんに限らず、
ひとりの人間が、その人の中に、
膨大な「まだ見せぬもの」を抱えたまま生を終えることについて、
時々、立ちくらみのような気持ちを覚える。


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