ヲトナの普段着

2003年12月01日(月) 出逢い系徒然

 女を求める男がいて、男を求める女がいれば、そこに出逢いという瞬間が巡ってくるのは自然なことなのかもしれません。フィールドがない時代ならまだしも、ネットという不特定多数の男女が屯する世界が身近になった今、出逢いは天文学的数字で日々繰り返されていることでしょう。
 
 
 どうも出逢い系という言葉に僕は抵抗があるというか、特化するのが間違っているように思えてならないのですが、そもそもネットにコミュニケーションツールとしての特性があることを思えば、このウェブ世界はあらゆる場所に出逢いの要素が隠されているに違いありません。もちろん、出逢い系サイトはその目的を明確にした場には相違ないのですが、それだけをとって出逢いを語るのもどうかと思えるんです。
 
 とはいっても、久しく世話になっていませんが、僕もいわゆる出逢い系サイトを利用した経験があります。それが縁でお付き合いした方も過去にいました。おしなべて、心に風穴を持つ方がほとんどだったように思えますし、到底遊び人という印象は僕のなかに残っていないのですが、それだけに、出逢い系という言葉から一般の方々が連想されるであろう世界に、少々拒絶反応を示してしまう僕でもあります。
 
 僕の場合は、ある考えのもとに、闇雲に出逢い系サイトに登録している女性にメールするということはしませんでした。僕自身が登録時にできるだけ自分を正確に伝えられるメッセージを掲載し、あとはそれを読んで反応してくれるのをひたすら待っていた感じです。僕から先にメールした経験は、ほとんど皆無といっても過言ではないでしょう。
 
 ですから、やり取りはそう頻繁であったとも思えません。けれど、一回の文章掲載で数名の方からメールを頂いておりましたし、返信を数回繰り返すとやはり徐々に絞られてくるというか、フィーリングがあう相手が残るものだなと実感もしました。まあ、現在続いていないということは、それらは長続きしないということにもなろうかと思えるのですが……。
 
 
 その場限りの接点を求めるならば、出逢い系サイトも悪くない気がします。しかし長い付き合いというか、より深く人間の核心に触れたいと考えているのであれば、僕はあの手のサイトは無意味であるとすら思っています。切っ掛けは必要でしょというご意見もあろうかと思いますが、いかんせん軽い輩が群れている状況では、切っ掛けも何もあったものではないでしょう。
 
 さりとて、そういう男女を批難しきれないのも、現在のネット事情というものかもしれません。僕自身も充分にそういう経験をし行動もしてきたのかもしれませんが、やはりネットが持つ匿名性の世界には、どこか人の心の奥底を露呈しやすい環境があるのだと思えます。問題なのは、匿名性の世界で精神を解放できても、現実に「逢う」となるとそう簡単には自己を解放できないということでしょう。当たり前の話なんですけどね……。
 
 ところがその「当たり前のこと」に気づいていない人たちが、出逢い系には意外と多くいるのではないでしょうか。言い換えると、ネットという特殊な世界での自分の存在と、現実世界での自分自身とを上手に繋ぎ合わせることができないということになろうかと思います。
 
 ネットという世界は、とにかく人と人とを短時間で結びつけます。利便性も大きいでしょうけど、やはり匿名性であるということ、実生活のしがらみがないということが、そんな現象を生んでいるように僕にはみえます。ところが実際に逢うとなれば、そこには少なからず自身の人生や生活が関与してきます。ウェブで思い通りになっていたことも、ひとたび逢うという行為の前では、そう易々とはいかないということです。
 
 出逢い系を軸としたトラブルが社会を賑わすことも少なくありませんが、そんな光景をみるにつけ、人の心の弱さというか、ネットという道具に振り回されている人間の悲しさをみる思いがするものです。
 
 
 個人サイト(ウェブ日記等の単一コンテンツも含む)を通じた出逢いというものを経験された方も、おそらく少なくないかと思います。僕自身幾度となくそういう経験をしてきていますが、出逢い系に比べて遥かに素敵で実があるとも感じています。
 
 何より、その人をじっくりと観察することができます。個人サイトの主旨によってさまざまではあるでしょうが、文字であれ写真であれ、また音楽であっても、そこに展開される管理者の世界に触れることで、かなり多くの人間的情報を得られることでしょう。
 
 惜しむらくは、彼らすべてが出逢いを目的としてウェブコンテンツを制作しているわけではないという点でしょうか。恋愛関係や性的関係に関わらず、人と人とが出逢えばそれは出逢いでしょうと思えるならば、僕の意図するところも容易に想像できるかと思えるのですが、そのような人たちばかりとは限りませんからね。
 
 けれど僕は、いわゆる出逢い系サイトの掲示板等を通じた関係よりも、そういった個人サイトを経てのもののほうが、遥かに人間と人間との付き合いに近いように感じますし、そこに男女の恋愛感情の芽が潜んでいないとも言い切れない気がしているんです。目的は別として、切っ掛けとしての場がある限りは、そこに可能性もあって不思議はないということです。
 
 
 ネットが秘めた力には、じつに凄まじいものがあります。それをここで事細かに論ずるのは無理がありますし、僕にできるかどうかもわかりません。けれどその実力のほどは、実際にネットを利用している人ひとりひとりが、それぞれの形で実感されていることでしょう。
 
 そんななかから、素敵な出逢いが生まれますことを、心よりお祈りしております。


 < 過去  INDEX  未来 >


ヒロイ