ヲトナの普段着

2003年10月02日(木) セックスのメインディッシュ /好みの体位

 俗に四十八手といわれるセックスの体位ですが、それをすべて経験された方はどれほどいるのでしょうか。僕も見識はあるものの、完全制覇していません。その多くは主流となる体位の亜流に違いないのですが、あなたはどんな体位がお好みですか。
 
 
 和洋問わずフルコースには料理の順序があるように、セックスにもその時間のなかで織り込まれるさまざまなエッセンスや順序があるような気がします。前戯や後戯という言葉もありますけど、挿入する行為そのものにも、やはり人それぞれに無意識のなかにも序列があるのではないでしょうか。即ち、好みの体位です。
 
 僕は、極端にアクロバティックなものは好みません。いつもとっている体位を思い浮かべても、正常位から挿入したままそこを軸に横向きになり、後背位へといったら回転して元の正常位へと戻る、それから相手を抱え上げての対面座位、そして騎乗位。クライマックスは正常位が多いでしょうか。おそらく多くの方々が普通に行っている流れではなかろうかと、リサーチしたわけでもありませんが想像しています。
 
 ちなみに、「四十八手」と称される体位のなかには、これら「正常位」や「後背位」「座位」といった表現は使われておりません。ご存知でしたか。四十八手が出来たのがいつの時代なのか定かではないのですが、およそ日本文化らしい名称が使われていますので、興味がある方はネットで検索でもしてみてください。
 
 
 僕が最も好きな体位は、対面座位です。セックスの流れの中でも、正常位や後背位の後になりますので、順序としても僕の中では、この対面座位がメインディッシュと称して間違いないでしょう。なぜ好きかという理由ですが、幾つかありそうな気はしますけど、総じて「密着度が高いから」ということになろうかと思えます。
 
 人はなぜセックスをするのか。そこにはふたつの大きな柱があるでしょう。ひとつは紛れもなく「種の存続」です。生殖活動は、生き物にとって本能的なものでもあります。そしてもうひとつは、人間ならではの感情を伴う性行動、即ち「合体してひとつになること」であろうと僕は考えています。もちろん、性的快感を覚えたいからという理由もあるでしょうが、僕の中では、どうも前述したふたつの理由に比べると核心の部分で弱い気がするんです……。
 
 
 合体してひとつになるとは、はたしてその背景にはどんな心理が隠されているのでしょうか。過去に恋愛コラムでそのエッセンスを綴ってきましたが、恋愛の究極は「君になること」であろうと僕は推測しています。つまり、自己という殻から飛び出して、自分が惚れた相手そのものになることです。相手のことをもっと知りたいとか、自分の気持ちを理解して欲しいとか、想いは色々あるでしょうが、その根本には、このような「君自身になってしまいたい」という核心があるように思えます。
 
 それは所詮叶わぬことです。けれど人はそれを追い求めようとする。そしてセックスという行為において、ひとつの「幻影」のなかに到達点を見出すわけです。それが「一緒にいきたい」という衝動であったり「ひとつになりたい」という衝動であろうと、僕にはそう思えます。いかにして「ひとつになった」手応えを得るか。それは人それぞれだと思いますが、僕の場合は、それが対面座位という形である場合が多いということです。
 
 もちろん、ひとつになる感覚以外にも、僕が対面座位を好きな理由はあります。挿入した状態で胸を愛撫し易いとか、挿入感そのものが奥深くまで挿入されてる感覚(或いは性器同士の密着感)を得られやすいとか、対面座位ならではの醍醐味はあると感じています。けれどやはり、互いが互いの体を両腕でしっかりと抱擁しつつ「ひとつになる」感覚は、不思議と他の体位では得られないもののように思えるんです。
 
 
 かつて恋人と対面座位にあったとき、「混ざっていくみたい」と言われたことがありました。彼女はそれまで、座位に対してそれほど強い嗜好を感じていなかったようですが、そのときはじめて、座位によって「ふたりが混ざり合ってひとつになっていく」感覚を覚えたのでしょう。
 
 性感というものも、実に多岐に渡ると思えます。女性の体には性感帯が沢山あると聞いていますし、ヴァギナひとつとっても、クリトリス、ラビア、子宮口、Gスポットと、それぞれに感じる箇所はあるようです。けれど、そういう物理的な快感という側面ではなく、「ひとつになりたい」という究極の願望を満たす要素が、対面座位にはあるのでしょうし、それこそが、性感帯に囚われない五感を研ぎ澄ました総体的な快楽へと繋がるもののように僕には思えます。
 
 セックスが単なる欲望処理の行為であるならば、それは動物と何ら変わらないでしょう。人間が人間でありながら行うからこそ、そこには直接的な刺激以外の世界を展開できるのだと僕は考えています。体面座位という体位は、そんな僕にとっては、昔もいまも、そしておそらくこれからも、メインディッシュでありつづけることでしょう。
 
 でも、対面座位では射精しないんですよね。これ不思議でしょ。射精は正常位が一番気持ちいいんです。つまり、射精する体位だからそれが最も好みの体位であるとは限らないということです。それからも、セックスの主目的が性器の刺激によるとは限らないという論理が、少なからず見えてくる気がしませんか。
 
 みなさんのメインディッシュは、どんな体位でしょうか……。


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