2006年07月17日(月) |
『アルバトロス、南へ』観てきました(ネタバレ) |
ネタバレしますので、ご注意くださいね。 以下、『アルバトロス、南へ』の感想です。
本日、待ちに待った『アルバトロス、南へ』を観てきました。 私、コムちゃんの退団発表を知ったとき、それはそれはショックで悲しかったんだけど、涙はそのときは出なかったんですよ。 だけど、この舞台を観たら、おかしいくらい涙が溢れてきてしまいました。 『退団』と言う文字を見るよりも、『退団』と言う事実を美しく演出すればするほど、より悲しくて、涙って出るもんなんだね。 本当に、神々しいくらいコムちゃんは美しかったんです。 家帰ってきてから親に感想なんて話そうとしたら、思い出して涙声になっちゃって、ボコボコ涙が溢れてきちゃって、親に大笑いされました。
舞台のセットは、舞台の下手に、縦長のスクリーンがあり、開演前は、そこにあほうどり(アルバトロス)のシルエットが飛んでいます。 舞台奥(真ん中くらい)に、白い低めのステージ(階段状)、その後ろに紗幕があり、さらにその奥にオーケストラ(ザ・スクラッチ)が。オーケストラの後ろは緑色に光る海のように見えるような背景と言うか照明がセットされてます。
この舞台、過去にコムちゃんが演じた作品を交えながら、でも、全くの別ストーリーとして進んでいくものでした。 懐かしい役とシーンが続々と登場するこの舞台は、まるで、走馬灯を観ているような舞台でした。 目の前にコムちゃんはいるのに、コムちゃんはもう存在しなくて、幻影を見てるようだったのです。確かに存在しているはずなのに、その実体を掴めないんです。 コムちゃんは、近くにいるのに今迄で一番遠い存在に感じました。 そんなこの舞台は、長い夢を見ているようでした。
【第一幕】 ■GO South 下手のスクリーンに、水が一滴落ち、ウォータークラウンが出来ます。 スクリーンが上に上がると、あのポスターの白い衣装を身に着けたコムちゃん登場。 鳥を思わせるような、滑らかなダンスを踊ります。 そのまま飛び立ってふと消えてしまいそうでした。白いまばゆい輝きに包まれていたコムちゃんはただただ美しかったです。
一幕の設定は、南へ旅立つと言う設定なのでしょうか。 コムちゃん以外の出演者(有紗、未来、天勢、音月、麻樹、舞咲)が、変わり黒燕尾のような衣装(燕尾の下がパニエみたいになってて、スカート状に広がっていて、それが皆別々のビビットな色なんです。その下はパンツ)を着け、トランクを持って登場。 コムちゃんも、同じ衣装で登場(コムちゃんのパニエは赤)。何故か唐草模様の風呂敷包みと、パグのぬいぐるみを持ってます。 みんなに混じって陽気に歌うコムちゃんは、めちゃくちゃ可愛いんですよ。トップなのに、なんでこんな可愛いんだよ!と、観ててデレデレしちゃいます。
♪使用曲 アルバトロスのテーマ/Birds in the Storm
■South Park(featuring『ハイペリオン』) その後、コム、ハマコ、キムで、ON THE 5thを歌いながら、行く道を模索します。 場面は変わり、『デパートメント・ストア』です。ここは通してコメディタッチ。 コムちゃんは、ツギハギの野暮ったい格好で登場。ハマコのノリノリ大音声デパメンが最高。 コムちゃんも、デパートで大変身します…が、その姿『ハウ・トゥ・サクシード』のバドです。黒ぶちメガネが可愛いのなんのって! 後ろに、バイオリンを弾く少年が。キムちゃん扮する『再会』のジャン君です。うっとりするコムちゃんが、お金をあげると「オイラは、物乞いなんかじゃない!」なんて言う、懐かしのセリフつき。 逆ギレしたバドと、ジャン君と恋人(ゆめみ姉さん)の追いかけっこが始まります。怒ったり悔しがったりするコムちゃんのベタベタコメディチックな動きが滅茶苦茶可愛いです。
下手に、ヴィーナスの彫刻があり、バド君、一目ぼれ。そっと口付けると、ヴィーナス像が半回転し、舞咲扮するヴィーナス(ハイペリオン)登場。 ウキウキで、バドは一緒に踊り、熱烈なチッスを…!だけどその後も、恥らってんの。バドキャラだから(笑)。 そして、2人は、像のあった台座に揃ってポーズを取って立つと、また半回転して、ヴィーナスの彫刻になります。 その一部始終を観ていた、キムジャンは、ニヤニヤしながら、ヴィーナス像にキスします。 すると、現れたのは、ハマコ扮するメール夫人(ノバ・ボサ・ノバ)。有り得ないくらい濃厚。ヒック!なんて可愛いしゃっくりじゃなくて、「グワッ」って言った! 取って食うぞーー!ってくらい野獣の如くジャン君に絡みつき、耳元で鼓膜が避けんばかりのベサメムーチョを熱唱。ジャン君の精気を吸いまくりです。 あ〜死ぬほど笑った。やりすぎてこそのハマコ大好きだ! そして、無理やりヴィーナス像の台座に二人揃って立ち、半回転すると、次はギリシャのの彫刻の様な男性の彫刻になります。 ステージに1人残されたゆめみ姉さんもその彫刻にキスすると、今度は、ショッキングピンクのジャケットが眩しいコムちゃんが登場! そして、ベサメムーチョをコムちゃんが歌います。
♪使用曲 ON THE 5th/Alexander's Ragtime band〜デパートメント・ストア/ジャン・タムジー・コンチェルト(ハイペリオン)/ピグマリオン(レオナルドの夢)(ハイペリオン)/Speak Low(ワン・タッチ・オブ・ヴィーナス)/ベサメムーチョ(ノバ・ボサ・ノバ)〜I Believe In You(ハウ・トゥー・サクシード)
■South Point(featuring『ノバ・ボサ・ノバ』) そのまま、ノバ・ボサ・ノバになります。 華麗なる千拍子のパイナップルの女王の曲を、ハマコ(だったはず)が歌い、その後、ノバボサの浮浪者の格好でコムちゃん登場。 ボロを脱ぐと、『Joyful!!』のコムサの衣装です!好きだったんだよな〜! ♪強盗だっ強盗だっの歌に合わせて札束を投げまくるコムちゃん。 その後、いづるん扮するブリーザ、キムちゃん扮するマール登場で、ノバボサのブリーザを取り合うシーンとなります。 私は、コムちゃんのマールが一番好きなので、あの狂気染みた表情や、ブリーザを殺した後の、観てて胸がえぐられるような悲痛でボロボロなマールを再び観れて嬉しかったです。
♪使用曲 リオのカーニバル(華麗なる千拍子'99)/強盗だ(ノバ・ボサ・ノバ)/LA SORONGO(ノバ・ボサ・ノバ)/アマール・アマール(ノバ・ボサ・ノバ)
■South Paradise その後、手錠を付けられた状態で苦悩を表現するようなダンスをします。 …てっ、手錠って! これが斎藤ショーなら、まだ趣味に走りやがってー!と、憤怒するところでしたが、手錠を付けてダンスしても、変な感情を感じなくて良かったです。 むしろ、苦悩を表すいい小道具にすら見えます。こうも違うものか…! そのまま、音楽は、『レ・コラージュ』のタブーに。 すると、キムちゃん扮するタブーの女登場。ものっそいゴツいです。ムキムキタブー女…!ある意味タブーです(コラ)。 これは、コムちゃんで見たかったなあ。 タブーの歌好きなんですが、やっぱりいいですね。ハマコといづるんで。 その後は、花組時代の曲のメドレー。 実は私、この頃を全然観たことがなくて、曲もなじみが全然なかったのが残念。勉強しとけばよかったです。 でも、花組らしい、シャープなかっこよさは最高。 スーツにソフト帽で踊る姿はおっとこまえ!『A Namorada』と言う曲を歌うコムちゃんがかっこよかった〜。
♪使用曲 Taboo〜Tango Taboo(レ・コラージュ)/Mambo(ファンシー・タッチ)/カルナバル(ラ・ノーバ!)/A Namorada(サザンクロス・レビュー)/ハイパー・ステージ!
■South Peak 舞台は暗く変わります。 『銀の狼』の物悲しい影ソロ(悪夢)が流れ、コムちゃんは黒のロングコートに身を包み現れます。ドリキンの中詰めの衣装の様な感じです(同じものかも)。 そして、ブラックジャックの『かわらぬ思い』を歌います。 この『悪夢』の歌詞の「どこから来てどこへ行く」のくだりや、『かわらぬ思い』の歌詞の意味、そしてプロローグの真っ白なあほうどりの姿とは打って変わって真っ黒な衣装、しかもこの振りが凄く激しく高度で、これらから、行く道を模索し、苦悩しているようなあほうどりの姿を彷彿とさせられます。 その姿が、現在のコムちゃんご本人の姿とオーバーラップして見えます。 ここだけではないですね、この第一部は全てがコムちゃんの宝塚人生そのものを振り返るものだったのかなと。 このシーンの前までは、コムちゃんの今迄を表しています。 このシーンは、戸惑いとか、不安とか、退団に当たって晴れ晴れとした気分だけでない、これからの人生へのそういった感情を表してるように見えます。 そして、その次は、白い衣装でパーッと晴れやかな表情でコムちゃんが登場するんです。 出演者全員で胸がすくようなダンスを踊ります。眩しい笑顔です。 これこそ、コムちゃんの未来を表してるんじゃないかなあと。明るく煌く輝かしき未来を。 オギーからコムちゃんへのはなむけなんじゃないかなと。 そう言う意味じゃないかもしれないけど、私はそう勝手に解釈しました。 そして、一幕は終わります。
♪使用曲 悪夢(銀の狼)〜かわらぬ思い(ブラックジャック 危険な賭け)/Birds in the Storm
【幕間】 下手のスクリーンに、体育座りした、コムちゃんの映像が。衣装はプログラムのものです。 そして、第二部が始まる瞬間、そのコムちゃんの背中から羽根が生えて、どんどん大きく広がって行き、スクリーンを超え、舞台の隅々まで広がります。
【第二部】 第二部は、お芝居が絡んでくるんですよ。オリジナルのストーリーなんですが、それに、過去の作品が上手く混じっているんです。 言えない過去を持つ男、コムちゃんと、恋人舞咲。 舞咲は、コムちゃんをサーカスに誘います。団長はハマコ。 第二部は、全てが団長が見せるサーカスなのです。 これがね、まるで夢の様なんです。夢って、あの寝ている間みる夢のようなんです。 ある話が進んでたと思ったら、違う話に飛んでいて、次の瞬間また違う話になっていて、でも全部繋がっていて。 だから、今日の日記の冒頭で言ったように、これは現実で目の前で起こっていることなのに、全てが夢みたいで、コムちゃん本人は目の前にいるのに、コムちゃんの姿が幻影のように感じるのです。 でも、この第二部のお芝居、良かったですよ。 サヨナラ直前公演にしては、ちょっと暗すぎだとも思いましたがね。
サーカスが始まります。 その中には、いづるんのパッサージュの少女、白鳥(香港公演)、ゆめみ姉さんのマスクの女(シトラスの風)、舞咲のパイナップルの女王(華麗なる千拍子)、キムロベルト(追憶のバルセロナ)の姿が。 コムちゃんを取り巻くように、又、攻めるように皆が踊り、サーカスは進みます。そして、ハマコ団長が「革命家は、のこのことサーカス見物に来ているところを捕まりました」と言う。 ああ、あのコムちゃん演ずる過去を背負った男は、そう言うことだったのね、と思っていたら、どうも違う。 キムちゃんが「国外へお逃げください」と、エルマーの独白を言い、ハマコが「皇位継承は難しいぞ」とフランツの台詞を言っている。 そう、話はエリザベートになっているのだ。 白軍服に身を包んだコムちゃんが登場し、まこさんも「陛下…」と言っている。…が、そのまこさんの格好がアンナ・カレーニナの白いドレス。 エリザベートだったはずの話の筋を無視して、コムちゃんは『アンナ・カレーニナ』のヴィロンスキーの台詞を言い始めている。 軍服の上着を脱ぐと、前身ごろにフリルのついた白いヴィロちゃんのシャツ。 「あなたを抱きしめたい…!」「海が観たいわ!」なんて言ってます。すっかり二人の世界。話はアンナ・カレーニナに変わっている。 そのまま、アンナの砂浜のシーンに変わります。 私が大好きなアンナ・カレーニナのシーンが再現されて、涙腺が悲鳴を!(アンナ、凱旋門、エリザが私の三大好きなコムなのです) そして、汽車の急ブレーキの音が。アンナは死に、ヴィロンスキーは、拳銃で自殺。 そこにハマコ団長が現れ、「またあほうどりが命を落としました」の様なことを言います。生きるためには「これが必要なんです。身分証明書」と言いながら、身分証明書を胸から出す。 舞台は、凱旋門へ。 ハマコボリスが歌います『パリ祭〜パリに帰りて』。「♪アン・パ〜リ〜」の歌です。 コムラヴィック、足の悪いハイメ(キム)も加わり、『酔いしれて』を歌います。 私ね、凱旋門役代わりが大好きなんですよ。生で見たことがなかったので、こうして目の前で動いてるのを観てるなんて、もう夢のようでした。 極めつけは、ゆめみジョアンの浮気を咎めた後の『たそがれのパリ』です。この歌大好きで、コムちゃんが歌ってるんですよ。 しかも、当時より上手い(笑)。学年的にも、今凄く合う。もうゾクゾクしっぱなしでした。
で、ここからが全くのオリジナルなのね。 凱旋門の時代背景から繋がって、第二次世界大戦中なのでしょうか。 コムちゃんはゲリラの残党に。いづるんは、それをかくまる女。その女は、民衆を守るために戦うと言う兵士に疑問を持ち、自分を守ってくれる兵士を待っているんですよ。 やせっぽっちで、孤独な瞳をもつ女。凄い適役です。 そして、身を隠しながらも生き続ける男。生きることへの意味を失っています。死にたいわけでもなく、このまま時をやり過ごしていると言うか。 かみ合わないような2人の間に、最後、2人の間に感情が通じ合うのです。 でも、女は、男の居場所を密告してしまってました。女は、男に南へ逃げるよう言います。私も後を追いかけるから!と言い、男を逃がし自分だけ残ります。 男を捕らえに来た兵士。そして、兵士は、女に狙いを定め、銃声が響きます。 女によって、生きる希望を見出した男と、男を生かせることで、自らの生に満足して全うした女。 2人だけの共感と、仲間意識、愛情。淡いようで深く濃い、シーンでした。 短いストーリーなんですが、戦争背景での、心理描写が巧みで、引き込まれてしまいました。 …ここまでとは言わないけど、戦争物を書くなら、掘り下げて欲しいよな、斉藤君。とか、この間のヤンブラとを思い出してしまいました。 でもこのシーン、難しいです。オギーのメッセージのこれっぽっちも分かってないと思います。もう一度観て、もっと深読みしたいと思います。 場面は、一番初めの、サーカスを見終わった恋人同士、と言うところに戻ります。 全てはサーカスが見せた夢、幻。このシーンの最後には、出てきた全ての女性(恋人、アンナ、ジョアン、戦争のシーンの女)が登場します。
■フィナーレ ハマコと、キムの黒燕尾で風共の「わたしとあなたは裏表」を暑苦しく歌ったり、パッサージュで観た衣装でしょうか。黒ミニスカに黒い背負い羽、手にも羽を持った娘役たちが登場します。 コムキムでの『闇が広がる』、男役三人での『FAVORITE SONG OF ALL』(シトラスの風)など、メドレーのように進みます。 …最後の最後にして、何故か記憶が薄れてるのです。スミマセン。 明後日また観てくるから、そしたら、詳しく書きます。 最後はあほうどりを思わせるような白い衣装のメンバーの総踊りがありました。 第二部はフィナーレ以外は、サヨナラ直前公演とは思えぬような暗さでしたが、フィナーレで大分希望に満ちたものになった感がありました。 ちなみに、途中の、過去を背負った男の生き様、それはオギーから観た、コムちゃんのイメージなのでしょうか。
♪使用曲 清く正しく美しく/わたしとあなたは裏表(風共)/夢のかけら(パッサージュ)〜Yesterday Yes A Day〜Holiday(Dancer In The Dark)/愛さずにはいられない/闇が広がる(エリザベート)/FAVORITE SONG OF ALL(シトラスの風)/Theree Dragon(香港公演)/ザッツ・レビュー(モン・パリ)〜Coming Century(ブルー・スワン)/少年の心(失われた楽園)/Many River To Cross(メガ・ヴィジョン)/Birds in the Storm(リプライズ)
と、初見の感想はこんなもんでしょうか。大分意識が薄れてきててびっくりしました。特に後半。スミマセン。 過去の作品を取り入れつつ、別のストーリーで綴るというのは凄く新鮮でした。 懐かしみつつ、新たなストーリーに引き込まれると言う、新触感。 でも、私的には過去の描写の印象の方が強烈でした。 まだ『男役朝海ひかる』は生きているのに、男役朝海ひかるには未来があるのに、この舞台では既に過去の人にされていると感じる方が大きかったです。やっぱり退団と言う事実は受け入れつつも、まだ過去を振り返って懐かしむなんて出来るわけないですよ。なのにそれを目の前でそれをやられてしまうと、結構精神的にキツかったです。 あほうどりが南へ行く、それは未来を表しているんだけど、どうしても後ろ向きになってしまう作品でした。それは、観る人それぞれだと思うんですけどね。 次、観たときは、過去に惑わされず、オギーの伝えたいもの、南へ向かうところの表すものをもっと汲み取れたらと思います。 長くなってスミマセン〜。では、この辺で…。
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