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2010年05月18日(火)
「サクマ式ドロップス」のハッカ味の魅力

『アイデアを盗む技術』(山名宏和著・幻冬舎新書)より。

【ところで最近、子どものころからよく知っているある商品に、実は巧みな偶然性があることに気づいて驚きました。
 映画『火垂るの墓』で、再び脚光を浴びた「サクマ式ドロップス」です。
 これのどこが「偶然性」なのでしょうか。
 缶入りの「サクマ式ドロップス」には、イチゴ、レモン、オレンジ、パイン、メロン、ハッカ、ブドウ、チョコの8種類の味のドロップが入っています。この時点で、すでに「対比」の楽しみがあります。
 では、「サクマ式ドロップス」のどこに「偶然性」があるのか。それは、缶を振ってドロップが出てくるまで、何味を食べることになるのかわからないという点です。イチゴ味が食べたいと思っていたのにメロン味が出てしまった。2回続けてオレンジ味が出てしまった。ドロップが缶から出てくる瞬間は、子どもながらにドキドキしたものです。
 そしてもう一つ、「サクマ式ドロップス」が優秀だったと思うのは、ハズレがあったことです。僕が子どものときは、ハッカ味が不人気でした。だからハッカ味が出てくるとかなりガッカリしたものです。この一つだけハズレがあるということが、「偶然性」をより魅力的なものにしていました。
 もちろん、「サクマ式ドロップス」を作ったメーカーは、そんなドキドキ感などねらってこの商品を作ったわけではないでしょうし、まさかハッカ味がハズレあつかいされていたとは思っていなかったでしょう。でも、偶然とはいえ、あらためて振り返ってみると、「サクマ式ドロップス」には偶然性をうまく使うためのヒントが詰まっています。だから僕も、そんな「サクマ式ドロップス」の魅力を、テレビの企画にも応用できないかと、最近、そんなふうに考えています。】

参考リンク:佐久間製菓株式会社

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 著者の山名さんは、1967年生まれの放送作家。『ザ!鉄腕!DASH!!』『行列のできる法律相談所』などの番組を担当されているそうです。

 この「サクマ式ドロップス」、山名さんより少しだけ年下の僕も、子どもの頃はよく食べていた記憶があります。少なくとも、ここ20年くらいは食べた記憶がなかったのですが、佐久間製菓のサイトをみると、いまでも現役でがんばっているようで、ちょっと嬉しくなってしまいました。

 たまにコンビニのお菓子売り場を覗いてみると、最近の飴というのは、中身がわかる透明な袋に、1個ずつ包装されているというのが主流のようで、「サクマ式ドロップス」のような「缶入りで中身が見えないタイプ」のものは珍しいようです。
 そりゃあ、食べる側とすれば、そのほうが「食べたいものが食べられるし、衛生的」ではありますよね。
 でも、これを読みながら、僕も子どものこと「サクマ式ドロップス」を食べながら、「うわっ、またハッカだ……」と嘆きながらも、そのロシアンルーレットをけっこう楽しんでいたんですよね。
 「サクマ式ドロップス」のハッカは、甘くないので子どもには人気がなく、最後はいつもハッカばかりが残ってしまっていました。
 なんでこんなのわざわざ入れるんだろう?ハッカなんて、入れなくてもいいのに……おそらく、当時の多くの子どもは、そう思っていたはずです。
 もちろん、大人のニーズはあったのでしょうが、大人も別に、ハッカばかりを好んで食べていたわけではなかったし。

 ただ、あのハッカ味というのは、たしかに「サクマ式ドロップス」の大きなアクセントにはなっていました。「何が出てくるかわからない、缶入りドロップ」だからこそ、あのハッカには「意味」があったのかもしれません。

 この山名さんの話を読みながら、「当時の佐久間製菓にとっては、どこまでが『技術的な限界』で、どこからが『マーケティングによる作戦』だったのだろうか?」と僕は考えてしまいました。
 当時から、「ハッカは入れないでくれ」という声は届いていたはずなのに、ハッカが無くなることはなかったし、技術的には袋入りにして1個ずつ包装することも可能になったはずなのに、いまでも「サクマ式ドロップス」は、昔と同じスタイル、缶入りで売られています。

 最近は、時代の流れに逆らえなくなったのか、袋入り、個別包装の「サクマ式ドロップス」も売られているそうなのですが、僕の世代にとっては、やっぱり「サクマ式ドロップス」が「袋入り」だと、ちょっと寂しい気がします。
 しかし、飴玉が1個1個包装されるっていうのは、考えてみれば、本当に豊かな時代でもあり、もったいない時代でもありますよね。たしかに「便利」ではあるのだけれども。