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2008年10月17日(金)
福山雅治から湯川学への「男としてのダメ出し」

『ダ・ヴィンチ』2008年11月号(メディアファクトリー)の記事「Studio Interview 福山雅治」より。取材・文は小川みどりさん。

【アポロ宇宙飛行士たちが、自ら撮影したという写真が129点。ロケット打ち上げから、月面着陸と探査活動、離陸、そして地球へと、時系列的に掲載されている。ベージをめくった瞬間から、圧倒的にリアルな写真の力に引き込まれ、月世界へと旅している気分になる。『FULL MOON』は”カメラ”と”宇宙”が好きな福山雅治には、たまらない一冊らしい。

福山雅治「宇宙飛行士にもっとも必要な条件って、何だか知っていますか? ”人柄がいいこと”らしいんですよ。長時間にわたって、狭くて暗いところで共同生活を送らなくちゃならないので、どんなに知力、体力に優れていても”嫌な人”だったらダメだというんです。子供のころから宇宙にあこがれていたので、宇宙飛行士になりたいって思ったこともありましたけど、それを聞いて、オレ、いい人じゃないから、絶対無理だって(笑)。トイレの順番だとか、きっと小さいことで、すぐもめますよ。なので、飛行士として宇宙に行くのは断念して、来るべき宇宙旅行時代の到来に備えて、せいぜい蓄えを増やすことにしました(笑)」

(中略)

 10月4日に公開された映画『容疑者Xの献身』で、福山はすでにドラマ『ガリレオ』でおなじみの、湯川学准教授を演じている。
 東野圭吾の小説『探偵ガリレオ』が映像化されることになったとき、福山は原作を読み、湯川のオタクっぷりに惹かれたという。

福山「正直、90年代のラブもののようなドラマに出演するのは、もういいかなと思っていたところだったので、湯川のような役ならと。テレビと映画が連動するプロジェクトだと最初から聞いていたので、それもまたおもしろいなと思って引き受けました。とはいえ、ドラマの原作と映画の原作は、だいぶトーンが違う。湯川もそれぞれ演じ分けなければならないということはわかっていました。現場では、監督が求めるものを聞き、ディスカッションしながらリクエストに応えていきましたね」

(中略)

 ちなみに福山にとって、石神のような献身的愛情はどのように映ったのだろうか。

福山「僕にはできないですね。”愛する対象に、献身することが幸せ”という石神のような考え方は。”あなたが幸せなら、自分はどうなってもかまわない”というのは、美しいとは思うけど、僕にはできない。映画を観て石神の献身に素直に感動できた人は、ロマンチックな人なのかもしれないですね。僕も初恋をしていた10代のころは、”僕は彼女のヒーローになりたい”なんて妄想していたこともありました。たとえば彼女のおとうさんの会社が倒産して、借金を抱えてしまうようなことになったら、僕が働いて、悪いことをしてでも全額返してやるんだ!みたいな。今はそんな妄想はしないですね(笑)。大人になってもそんな感情を持てたらと思うけど、現実的には石神のようにはできないと思いますよ」

 数学や物理に魅せられて、独身のまま今日まで生きてきた二人。石神は恋をしたが、湯川は相変わらず物理が恋人。眉目秀麗にして、恋愛には無頓着のようだ。

福山「好きなことをそのまま仕事にできている湯川は、それで幸せなんでしょうね。でももう少し野心があってもいいと思うんですけど。僕なら男として、もう少しギラっとしたものを持っていたい。ただ、それは湯川じゃない。ガリレオ先生ではなくなっちゃうんですよね。とはいえ、あれだけの能力があったらねぇ、もう少し何かうまいことできるんじゃないですか、先生!って、やっぱり言いたくなりますよ」】

〜〜〜〜〜〜〜

 湯川学を演じている『容疑者Xの献身』も大ヒット中の福山雅治さんへのインタビュー記事の一部です。
 ここで福山さんが紹介されている『FULL MOON』という写真集も面白そうな本だったのですが、「宇宙飛行士の適正について」というのはかなり興味深い話でした。たしかに、そう言われてみると、宇宙飛行士というのは「いい人」じゃないと務まらないかもしれませんね。それこそ、「ちょっとした順番が生死にかかわる」可能性が十分あるでしょうし、危険が迫った際に「自分だけ助かれば」なんて人がいると、逃げ場のない宇宙船内では悲惨な事件が起こるかもしれません。
 まあ、「いい人」だというだけで宇宙飛行士になれないのも間違いないのですけど。

 このインタビューのなかで、福山さんは、映画『容疑者Xの献身』で演じている主人公・湯川学と、そのライバルである石神について語っておられます。僕もこの映画を観て、石神のような「献身」は自分にはできないな、と感じたので、福山さんの率直な気持ちには頷けます。そういえば、僕もそういう「献身的な愛」を妄想していた時期があったんだよなあ。

 そして、このインタビューのなかでもっとも印象的だったのは、福山さんが湯川准教授に対して、「僕なら男として、もう少しギラっとしたものを持っていたい」と「ダメ出し」をしていたところです。
 福山さんが演じる前に原作の『探偵ガリレオ』を読んでいた僕としては、まさに「そういうギラっとしてないところが、湯川学なんだよ!」と言いたいところではあるんですよね
 そもそも、湯川が「イケメン」になったのは、フジテレビの作戦というか、福山さんが演じているからであって、原作の湯川学は、けっして福山雅治のイメージじゃないんだけどなあ、僕にとっては。もし福山雅治のルックスで湯川学の頭脳を持ち、「男としてギラっとしている」ヤツがいたら、完璧すぎて存在そのものが犯罪です!

 湯川先生に対しては、「その能力を事件解決のためじゃなくて、本来の研究に生かせばいいのに……」とは僕も思うんですけどね。柴咲さんに頼まれたら断りきれないっていうのもよくわかるけどさ。