初日 最新 目次 MAIL HOME


活字中毒R。
じっぽ
MAIL
HOME

My追加

2008年08月07日(木)
金メダルひとつで40億円も稼いだ男

『Number.708』(文藝春秋)の記事「日本人金メダリスト完全大事典―栄光を手にした者たちのその後―」の欄外のコラム「金メダルは人生を変える〜海外編」より。

【金メダルによってその後の人生が変わるのは海外のほうが極端だ。
 中でも際立つのが、タイで初の金メダリストとなったボクシングのソムラック・カムシンだろう。アトランタ大会で優勝すると国中が大騒ぎ。報奨金、生涯年金などが一挙に舞い込み、日本円にして40億円ほどの大金を手にしたというのだ。悲しいかな、絶頂期はあっという間。不動産投資などに失敗して借金までつくった。引退した現在はどん底からはい上がり、テレビ番組製作会社を経営しながらジムで「ソムラック2世」を育てる毎日を送っているそうである。
 女子柔道で谷亮子を下した北朝鮮のケー・スンヒも凄い。金正日総書記から高級自動車やアパートをプレゼントされ、2006年に体育団の監督と結婚した際もお祝いの食事を贈られているという。
 アンソニー・ネスティはソウル大会で男子100mバタフライを制し、スリナムに初の金メダルをもたらした。記念切手や金貨になっただけでなく、名門フロリダ大学にも進学できた。
 この3者に共通するのは、金メダルの常連国ではないことに加え、伏兵が制した世界が驚く優勝だったこと。驚きが大きいほど、見返りも大きいということだ。

参考リンク:ソムラック・カムシン(億万のココロ)

〜〜〜〜〜〜〜

 アトランタオリンピックは1996年開催。
 ソムラック・カムシンさんは、この大会のボクシング・フェザー級で、タイ史上初の金メダルを獲得しました。
 参考リンクによると、

【タイ史上初の金メダリストに贈られたのはドイツ製高級車1台と政府や企業からの報奨金、1億3000万円!更にタイの初任給の8倍、2000バーツが一生毎月振り込まれる。そしてCM出演なども含め、一夜で手にした金額は8000万バーツ!これを日本の価値に置き換えると、なんと45億円!そのお金で3000万円の豪邸を購入!】

ということなのですが、この「ソムラック・フィーバー」は、当時の日本でもちょっとした話題になったような記憶があります。
しかしながら、ソムラックさんの「栄光」は長くは続かなかったようです。いきなり大金持ち、超有名人になってしまったことは、彼自身にとっても、けっして良いことばかりではなかったのです。

【そんなソムラックはテレビ出演や映画出演も果たし、タイでは有名人になった。また、ガソリンスタンドや飲料水の工場も経営、不動産にも投資するように。だが、なれない職業に手を出したばっかりに、ことごとく失敗。何と借金を負うことになる。】

「金メダルひとつで40億円も稼いだ男」は、その成功のために、かえって借金をする羽目になってしまったんですよね、結局。大金を手にすることがなければ、つつましく暮らしていたのかもしれないのに。

 日本人にとっては、オリンピックのたびに「日本がメダルを獲れる」ことが大前提で、「いくつ獲れるか」が話題になります。
 冬季オリンピックでは、トリノのように「荒川静香さんがフィギュアで金メダルを獲れなければゼロだった」ということもあるのですが、夏のオリンピックでは、日本の「お家芸」とされている柔道の存在などもあり、「ゼロ」はまずありえないでしょう。
 しかしながら、世界には「オリンピックでメダルを獲るのが当たり前」の国だけではないのです。

アテネオリンピック (2004年) での国・地域別メダル受賞数一覧(Wikipedia)

 前回、2004年のアテネオリンピックには、202の国・地域が参加していましたが、そのうち、メダルを獲得した国・地域の数は、75にとどまっています。もちろん、人口が多い「大国」のほうが数多くのメダルを獲得する傾向があるので、人口比としては「メダルを獲得した国に属している人のほうがはるかに多い」のでしょうけど、「メダルをひとつ獲る」ことだって難しい国・地域が、世界にはたくさんあるのです。あれだけたくさんの競技があるように見えるにもかかわらず、アテネオリンピックでは、3個以上の金メダルを獲得できた国は、わずか25か国しかありません(ちなみに、最高はアメリカの36個、日本は16個の5位と、「大健闘」でした。タイもアテネでは金3個の大躍進)。

 日本では、メダリストたちへの報奨金が低いとよく言われますが、やはり、メダルに手が届くかどうかには、その国の経済力も含めた「練習環境」が大きくモノを言ってくるようです。
 しかしながら、一部の人気競技を除けば、ショートトラックのメダリストが「食べていけないから」という理由でプロの競輪選手に転向していくというのも日本の現実。

 まあ、実際に競技をしている選手たちにとっては、「あとはどうなってもいいから、一度金メダルを獲ってみたい」というのが本音なのかもしれませんね。それはもう、万国共通で。