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2007年05月01日(火)
フジテレビ社員の羨ましい年収

「ダ・カーポ」605号(マガジンハウス)の特集記事「テレビ、不都合な真実!」の『嗚呼!ザ・テレビマンの実像』より。

【テレビ局社員の平均年収は間違いなく全業種の1位だ。中でもダントツを極めるのはフジテレビの1574万円(従業員数1384人、平均年齢39.7歳)。以下、在京キー局ではTBS、日本テレビ、テレビ朝日、テレビ東京と続き、NHKも1163万円となっている。ヤフーのようなネット系企業の2倍以上の給与水準となっているのだ(ヤフーの社員の平均年収は610万円(従業員数1959人、平均年齢32.6歳)。
「あるある」事件で社長が引責辞任した関西テレビも平均で1500万円、部長クラスで2000万円、局長クラスで3000万円は下らないと言われている。ちなみに、フジの社長の年収は約9000万円。働けど働けど年収300万円に満たないワーキングプアが増える今、テレビマンの厚遇ぶりにはやはり嫉妬してしまう。
「なにせ同じ20代でも局員なら年収1000万円を超えるのに、制作プロダクションは約400万円前後。『あるある』の孫請けをしていたアジトのような末端の会社スタッフは300万円未満。月収10数万円でボーナスもなしという薄給に泣く者さえ少なくありません」(テレビ情報誌記者)

(中略)

 そもそも、テレビ業界の給与水準はなぜこれほど高いのか。
 テレビ局の収入と支出の項目は左上表のようになっている。収入の多くはCM放映によるもの。CMには2種類あり、「この番組の提供は……」と紹介されるCMが「タイムCM」。
「フジテレビの”月9ドラマ”で30秒CM1本あたり、約800万円と言われています。スポンサー1社あたり1クール(3か月)の契約を結ぶと約1億円」(『テレビ業界まるみえ読本』の著者・田波伊知郎さん談)、
 スポンサーが3社なら3億円の収入だが、そのお金は主に出演者へのギャラなど制作費に充てられ、それほどテレビ局のもうけにはならないのだ。
「月9ドラマの1回放送分で制作費は5000万〜1億円、バラエティーで2000万〜4000万円、深夜番組でも300万円ぐらいはかかる」(前同)
 一方、番組と番組の間に流れる「スポットCM」は、広告代理店への手数料を除くほぼそっくりそのままをテレビ局がいただく。これが局員の高給の原資だったのである。視聴率1%に対するスポットCMで一番高い料金設定をしているのがフジ。平均視聴率1位の座を日本テレビに奪われていた時期でも、この強気の姿勢は崩さなかったといわれる。
 放送ジャーナリストの小池正春さんは言う。
「フジの視聴者は他局よりもいわゆるF1層(20〜34歳)が多い。広告スポンサーは、高齢者などより、消費に貪欲なこの層に見てほしいと願っているので、フジに出広するのです」
 いい客をつかまえているからこそ、フジはテレビ業界ナンバーワンの給与を得ているのだ。】

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 この特集記事の別の項で紹介されていたのですが、フジテレビの場合、アナウンサーや技術のような専門職を除く新卒の採用数は例年30人程度。そこに、1万4000人もの学生が殺到するのだそうです。その1万4000人が、WEB上でのエントリー(適性テストや作文など)で半数が「門前払い」され、筆記試験・クリエイティブ試験のあと、5〜6回に及ぶ面接をすべてクリアしないと正社員になれないのだとか。入社試験というより、ウルトラクイズなんじゃないかという気がするくらいの「狭き門」なんですね。まあ、憧れのテレビ業界、しかも高収入なのですから、その人気も理解はできるのですが。

 考えてみれば、テレビ局の仕事というのは時間が不規則で残業や時間外勤務も多いでしょうし、こういうメディア関係の人があまりに低収入だと、リベートや手抜きが蔓延しそうです。社会にとって重要な仕事であるのは確かなのですから、ちゃんとその分の仕事をしているのであれば、高収入であることそのものは責められるべきではありません。

 もっとも、彼らの高収入の陰では、「それでもテレビ業界で働きたい」という人たちが、末端の制作プロダクションで薄給に耐えて番組を作っているというのも紛れもない事実のようです。「月収10数万円でボーナスもなしという薄給」で、しかも激務とくれば、いくら憧れのテレビ業界で働けるとはいっても、「ねつ造」くらいやってしまうのもわからなくはないんですよね。「数字」を上げないと契約を切られてしまったりもするみたいだし。

 テレビ業界というのは大きなお金が動く世界です。「月9ドラマの1回放送分で制作費は5000万〜1億円」なんて、1か月分くらいの制作費があれば、平均的な「日本映画」が1本撮れるくらいのお金を遣っているわけです。見た目にはそんなにお金がかかっているようには思えないのですが、役者さんの出演料がものすごく高い、ということなのでしょうか?
 こういう「台所事情」を知ると、テレビ局が、なんとかバラエティ番組を「当てたい」と試行錯誤する理由もわかるような気がします。コストは安いし、視聴者も「F1層」が多いでしょうから。まあ、最近流行りの「DVD化しての二次収入」につながらないという難点はあるかもしれませんけど。

 しかし、この「テレビ局の収入」から考えると、「大人向けの真面目な番組」がゴールデンタイムに放送されないのは致し方ない、という感じです。だって、テレビ局は、20〜34歳の「F1層」に観てもらいたいのだから、その人たちが好みそうな番組を選択するのは当然の戦略ですよね。
 ちなみに、フジテレビのスポットCM(15秒)の料金の目安としては、視聴率1%あたり9〜10万円くらいなのだそうです。視聴率10%の番組なら1話あたり100万円。そりゃあ、「数字にこだわる」のも理解できます。

 まあ、当たり前の話なのですが、「テレビ局も企業」なのですから、視聴者側にも過信しすぎない姿勢が必要である、ということなのでしょう。