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2007年04月01日(日)
「オタク〜」と日本語で絶叫するスペイン人たち

「九州スポーツ」2007年3月28日号の記事「エンタメ戦闘区域・『JAM Project見参!アニソンは文化だ!!〜影山ヒロノブの巻(下)』」(取材・構成は古川泰裕さん)より。

(4年前に、ブラジルでホドリゴ・グレイシーが「チェンジマン」を歌いながら登場するシーンを目撃した、という話から)

【インタビュアー:日本の真裏で、グレイシー戦士が日本語で歌いながら登場!?

影山ヒロノブ:聞いたら、「チェンジマン」はブラジルで初めて放送された戦隊モノだったらしいんですよ。そのせいか、この作品のみ僕の歌をそのまま主題歌に使ってたんですね(以降は現地語版)。言わば、「ブラジル戦隊モノ元年」の記念すべき作品。だからファンから熱烈な支持を受けていて、あの曲がブラジルのオタクの”国歌”のようになっていた(ホドリゴは有名なアニメ・戦隊オタク)。サンパウロで「チェンジマン」を歌った時なんか、1万人ぐらいが「ウォー」っと狂ったように盛り上がって、こっちはステージの上から「なんやねん、コレ!」と引くぐらい驚いた。

インタビュアー:他にはどんな国へ?

影山:メキシコ、スペイン、韓国…。メキシコもスゴかったですよ。日本で言えばコミケとゲームショーを足したような、ジャパニメーションのフェスティバルが年に1回あって、それに呼ばれて行ったんですけど、国際会議場クラスの会場に万単位の客がいる。現地は「聖闘士星矢」が大人気で、「あの曲はやってくれるのか?」と指定されたのが、テレビ版じゃなく、まさかのオリジナルビデオの主題歌。こっちは「この曲は知らんやろ」と思ってカラオケを持って行かなかったから、「え〜!?」って、大慌てで日本からダウンロードですよ。またメキシコの通信速度が遅い!(笑い)。生きてる間にメキシコに行くとは思わなかったですしね。空気が薄いから、「CHA-LA HEAD-CHA-LA」歌ったら息が切れる切れる。全然ヘッチャラじゃない(笑い)。あと、ステージにパンツやブラが飛んできたのには驚いた。ファネスか!

インタビュアー:他国は?

影山:スペインも熱いですね。コスプレのイベントがあると、日本のコスプレーヤーは会場近くで着替えたりしてるんだけど、あっちは家からその格好して、槍とか持ったまま電車に乗ってる。しかも、自国やアメリカのじゃなく、日本のアニメじゃないとダメみたい。ほとんどがドラゴンボールやプリキュア系で、たま〜にディズニー系の人がいる感じ。で、「オタク〜」と日本語を絶叫している(笑い)。彼らにとっては誇るべき称号みたいやね。コスプレイベントにくっついてきたイタリア人が「JAM(影山さんたち、アニメソング界の重鎮たちが『古き良きアニソン魂』を残すために結成しているユニット)のCD全部持ってる、サインちょうだい」って言ってきたこともあったな。韓国は通訳に対して「通訳はいらねーよ」とブーイングが起こってね。後で聞いたら「好きなもののために勉強するのは当たり前じゃないですか」って。

インタビュアー:オリジナル版を見るために日本語を勉強しているわけですか。

影山:他の国でもマニアはオリジナル版を求めるんですよ。だいたいどこの国も主題歌は自国語版に変えてるんだけど、熱心なファンは日本語版を求めるし、盛り上がる。かといって日本語が話せるわけじゃないんだけど(笑い)。あっちこっちで実感したのは、何がどうなったのかと思うぐらい日本のアニメが盛り上がってる。ジャパニメーションは世界中で愛されてます。】

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 ワールドカップのイタリア代表の選手たちに『キャプテン翼』のファンがたくさんいた、というような話もありましたし、日本のアニメや特撮、いわゆる「オタク文化」は、本当に世界中で愛されているんですね。アメリカやヨーロッパでの「日本アニメの人気」は報道される機会も多いのですが、この影山さんの話を読むと、ブラジルやメキシコ、あるいは韓国にも、日本のアニメや特撮を愛している人がたくさんいるのだなあ、ということがわかります。
 しかし、メキシコのオタクたちに予想外の曲をリクエストされて、日本から曲をダウンロードした、なんて話を読むと、世界というのはけっこう狭いものだなあ、という気もしますね。一昔前だったら、「今回は準備してきていないから歌えない」ということになるか、アカペラで歌っていたのでしょうけど。
 そして、「ステージにパンツやブラが飛んできた」というのには、思わず笑ってしまいました。ファネスのステージで下着が飛んでくるというのは有名な話なのですが、こういうのを読むと、別にファネスが特別というわけではなくて、メキシコの女性たちは盛り上がるとそうする習慣がある、ということなのかもしれません。影山さんの『ドラゴンボールZ』の歌を聞きながら下着を投げるのって、いったいどんな想像力なんだ……と典型的日本人である僕にはよくわからないんですけど。

 「オタク」というのは、日本では差別的に使われている場合が多いのですが、海外ではかなり「オタク」の地位は高いようです。彼らは「オタク」に憧れ、「オタク」であることに自信を持っているのです。少なくとも、「世間様に対して恥ずかしい」という意識はなさそうです。家からコスプレして槍を持って電車に乗っている日本のオタクは、さすがに少ないでしょうし。日本の場合は、電車が混雑するので難しい、という面もありそうですが、海外のコスプレーヤーたちには、会場内だけではなく、会場への行き帰りの間もコスプレを楽しんでいるのでしょう。

 こういう話を読むと、日本のアニメというのは、間違いなく世界各国での日本への「親しみ」を増すのに貢献しているのだろうなあ、と感じますし、もしかしたら、偉い人たちの目先の「外交努力」よりも、日本にとってはアニメや特撮の輸出のほうが長い目でみればプラスになるのかもしれませんね。実際にこういう「世界のオタク」たちが世の中を動かしていくようになるかどうかはさておき。