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2006年11月13日(月)
「巨乳」という言葉はいつ生まれたのか?

「週刊SPA!2006.10/3号」(扶桑社)の特集記事「あの『ニックネーム』誕生の真実」より。

【ボイン・巨乳という愛称はいつ生まれたのか?

 グラビアアイドルからAV女優まで、石を投げれば巨乳に当たる巨乳インフレ時代の現在だが、そもそも「巨乳」という言葉はいつ生まれたのか……。オッパイの歴史をひもとくと、なんと'89年にまで遡る。当時、Fカップの乳房が人気のAV女優・冴島奈緒に、芸術評論家の肥留間正明氏が『FLASH』誌上で命名したのが始まりだ。ほぼ同時期には、”巨乳バカ一代”野田義治社長率いるイエローキャブの第1号タレント、堀江しのぶが人気を獲得。残念ながら彼女は夭逝したが、'80年代末期は日本の巨乳時代黎明期となった。もともとはAV女優につけられた「巨乳」の冠だが、以降、堀江の遺志を継ぐ形で、かとうれいこ、山田まりやらイエローキャブ勢が時代の空気にうまく乗り、日本の巨乳史を席捲する……。
 驚くことに、言葉としての「巨乳」誕生以前は、豊かなバストを指す言葉は、ほぼ唯一「ボイン」のみだった……。その誕生は、往年の人気深夜番組『11PM』内で、'67年と推測される。名づけ親は司会の大橋巨泉氏。アシスタントの朝丘雪路の胸が大きくてボインとした感じだというのがネーミングの理由で、彼女をよく「ボイン、ボイン」とからかっていたらしい。この擬態語の持つ重量感、弾力感を併せ持つ朝丘雪路の罰とは当時98cm!?(公称) まさに元祖「ボイン」に相応しい!? 巨泉氏は、その後も『クイズダービー』で、解答者の竹下景子に「三択の女王」、はらたいらに「宇宙人」など、造語感覚のよさを披露している。まぁ、彼は自ら「野球は巨人、司会は巨泉」なんて言ってるくらいですから……。】

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 あらためてそう言われてみれば、僕が子供の頃、胸が大きくて有名なタレント、河合奈保子さんとか榊原郁恵さんは、「巨乳」とは言われていなかったような記憶があります。「ボイン」という言葉は使われていましたが、どちらかというと深夜番組で山本カントクとかがニヤニヤしながら使うような言葉で、そんなに「一般的」ではなかったのではないでしょうか。むしろ、そういうことはあまり人前で堂々と言うべきことではない、という感じすらありました(当時、僕が子供だったからかもしれませんが)。

 当時に比べたら、いまは「胸が大きい」という事に関して、男の側はもちろん、女性もけっこう堂々と語っているようです。もちろん、大きくても小さくても、それで傷ついている人もたくさんいるのでしょうけど、少なくとも昔ほど「そんなことは言うもんじゃない」という雰囲気ではないようです。
 しかし、耳慣れてしまえばどうってこともないのかもしれませんが、「巨乳」って、かなり直接的というか、どぎつい言葉ではありますよね。その上のランクとして「爆乳」とかいうのもあるらしいのですが、どう考えても大橋巨泉さんが考えた「ボイン」のほうが間接的な表現です。時代とともに、かえってダイレクトな表現になっているというのは、なんだか不思議な感じもしますね。いずれにしても、世の男性は、女性の「胸」にこだわり続けている、というのは確かなのですが。

 ところで、この特集記事を書かれた『SPA!』の編集者の方は、「顛末記」として、こんな話を書かれていました。

【昨今の著名人のニックネームは、『ハンカチ王子』に代表されるように、ネットから発信されることが非常に多い。ほかにも、先日、痴漢容疑で再び逮捕された植草一秀容疑者の「ミラーマン」や、昨年、監禁容疑で逮捕された小林泰剛容疑者の「監禁王子」も同様である。
 しかし、ネットだと初出に辿り着くことが非常に困難である、
 例えば「ミラーマン」の場合、手鏡を使って女子高生のスカート内を覗こうとした事件が発覚した'04年4月12日の14時51分に『2ちゃんねる』のスレッドに「ミラーマンの唄」の替え歌が出ているが、これが初出か否かは確かめようがなかった。】

 「ボイン」の時代には、大橋巨泉という「カリスマ司会者」が、「ニックネーム」を発信していたのが、「巨乳」の時代には、写真週刊誌で一評論家が「名付け親」になり、現在は、ネット発のまさに文字通りの「名無しさん」が世間に広まる「ニックネーム」をつけていく。もう、特定の「カリスマ」だけが言葉を持っている時代ではなくなってきているのです。
 どんなに機転が利く「カリスマ司会者」も、ネット上の大勢の人々の知恵の集合にはかなわないし、「ハンカチ王子」はともかく、いきなりテレビで「ミラーマン」とは言えないでしょうしねえ。