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2006年05月08日(月)
「スター」を育てるための匙加減

「日経エンタテインメント!2006.6月号」(日経BP社)の「インサイドスペシャル・才能の殺し方、生かし方」より。

(ジャパン・ミュージックエンターテインメント社長・藤岡隆さんへの芸能人の「マネージメント」に関するインタビューの一部です)

【インタビュアー:日常の管理という点で、タレントの不祥事が増えているように思いますが、なぜでしょうか。

藤岡:芸能界だけが特殊なわけじゃなくて、世の中全体の変化を反映してのことだと思います。芸能界に入ったから悪くなるということではなくて、基本的には子供のころからの親の育て方が大きいと思う。
 だからと言って、プロダクションの側に問題がないというわけではなくて、やはり教育が大事です。気がついたことはどんどん言うのがマネージャーの仕事。売れたら、みんなに見られている立場だから、いいことと悪いことの判断は自分でつけないといけないぞ、と。
 でも、実際のところ、我々にできるのはそこまでですね。それを友人関係も含めて、どこまで本人が自覚してくれるかです。

インタビュアー:ただ、未成年の新人タレントをプロダクションが車で送り迎えしていたりするのを見ると、甘やかし過ぎでは、とも思いますが。

藤岡:たしかに、そうういうケースもあって、タレントが勘違いするところがないとは言えない。一方で、一般人と違う待遇をされるからスターとしての輝きが出てくるという面もあって、それも否定できない。違う言い方をしたら、ちやほやされることで本人が自分の立場を自覚してくるわけです。
 デビューして1年たったら、きれいになったという例はよくあり、それは人に見られているという自覚からだと思う。あとは、その自覚を持って、自分を律せるかどうか、でしょう。

(中略)

インタビュアー:プロダクションを経営する立場として、売れていない人を抱えていくのは大変かと思いますが。

藤岡:音楽での印税契約の場合は、当たったときは向こうが持っていくから、プロダクションはうまみがないけれど、ふだんは雇わなくてもいいから、ある意味で楽ですね。
 逆に俳優は維持費が大変。売れるかどうかわからないのに、1年2年と生活費を給料ベースで払っていく。1回デビューさせたら、またバイトに戻るというわけにもいかないし。マネージャーががんばって、仕事をとってくるしかない。
 だから経営が苦しいときは、マネージャーを削るか、タレントを削るか、正直天秤にかけることもあります。

インタビュアー:タレントは、どのくらいの確率で売れるようになるものでしょうか。

藤岡:うちには今、28組いますが、黒字になってるのは6〜7割くらいですね。それでほかの人の赤字を埋めているわけです。】

〜〜〜〜〜〜〜

参考リンク:ジャパン・ミュージック・エンターテインメント

 ジャパン・ミュージック・エンターテインメントは、篠原涼子さんや谷原章介さん、伊藤由奈さんなど、かなり有名なタレントさんを抱えているプロダクションみたいです。でも正直、顔ぶれを眺めていると「これで6〜7割のタレントさんは黒字なのか…」とか、つい考えてしまうのも事実です。
篠原涼子さんとか、10組くらい養ってそうですよね、実際は。

 まあ、それはさておき、この藤岡さんの話を読んでみると、「芸能人」を育てるというのは、本当に難しいものだよなあ、と感じます。僕たちは、「特別扱いされる芸能人」というのに反感を持ったり、「電車で仕事場に通っています」なんていう有名人に対して好感を抱いたりしがちなのですが、考えてみれば、「芸能人」がみんな電車通勤するようでは、それはそれで面白くないですよね。
【一方で、一般人と違う待遇をされるからスターとしての輝きが出てくるという面もあって、それも否定できない。違う言い方をしたら、ちやほやされることで本人が自分の立場を自覚してくるわけです。】
 プロダクションやマネージャーというのは、「普通の常識人」を育てようとしているわけではなく、あくまでも「スター」という特別な人間を生み出すことを目標にしているわけですから、そのためには「特別な待遇」というのは必要なのかもしれません。そもそも、僕たちだって、ハリウッド・セレブたちのさまざまな「奇行」に眉をひそめつつも、そういう「スターたちの噂話」に強く魅かれてしまうのも事実なんですよね。
 あのマイケル・ジャクソンの「奇行」はさすがに度が過ぎているような気がしますが、逆に、あのくらいの「異常性」というのを持っていなければ、「大スター」にはなれないのでしょう。「普通の人間」であれば、あんなに注目され、特別扱いされることそのものに耐えられないでしょうし。
 それに、「自分を特別な存在だと思い込むこと」というのは、確かに「特別な人間になる」ための近道です。そういう意識があるからこそ、人並み以上に努力したり、キツイ状況でも辛抱したりできることも多いでしょうから。もちろんそれは、「天狗になる」ことと表裏一体なわけですが。

 「普通の人」であることを賞賛されることも多い一方で、本当に「普通」であれば、周りは見向きもしてくれない。「芸能人として生きる」のも、「芸能人を育てる」のも、なかなか難しい仕事みたいです。