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2006年02月20日(月)
「泣けるドラマ」と「初恋病」

「ダ・カーポ」577号(マガジンハウス)の特集記事「『号泣』は最高のエクスタシー!?」の「みんながお茶の間で泣いたテレビ番組」より。

【初恋に破れ、その古傷をひきずって生きてきた主人公が、過去の恋人と再会する、あるいは似た人に出会うことで、過去の傷と向かい合い、再生していく。それが泣かせるドラマの方程式だと、『韓流、純愛、初恋病。』の著者で早稲田大学講師もつとめる、脚本家の小林竜雄さんは語る。

「初恋が成就せず、ずっとひきずっていくのを僕は<初恋病>と名づけましたが、<初恋病>というのは、ある種の精神の死みたいなもの。だからひきずってしまうんですが、あの恋は何だったんだろう、あの時自分は何を考えていたんだろうと見つめ直すことで、止まっていた時間が動き出す。そこから本当のドラマが始まるんです」
 泣く方程式に当てはまるドラマの王道は、やはり”冬ソナ”。「とくに前半は、よくできてると思いました。27歳になったヒロインが、高校生の時の初恋とは何だったのかと考える。その機微がていねいに描かれていました。それと、『世界の中心で、愛をさけぶ』も、完全に泣きの図式に当てはまるドラマ。過去に精神的な傷をおった人間が、いまをどう生きるか。身内や恋人が亡くなれば悲しいに決まっているけれど、それだけではない。もう一歩踏みこみ、再生していくというところで感動し、泣けるんだと思います」

 最近の純愛ものは相手が難病で死んでしまうケースも多い。それってズルくないですか?

「たしかに脚本家にとっては、禁じ手ではあります。不治の病を持ってきたらベタで泣くしかない。素材の力が圧倒的で、誰が書いてもある水準に達してしまいます。一般的にメロドラマはあまり良い印象はなかったですよね。山口百恵の<赤いシリーズ>が70年代にありましたけど、80年代はトレンディードラマは主流で、泣くドラマは見向きもされませんでした。でも今の若い人たちは、難病ものはお涙ちょうだいでダサいという先入観がないから、新鮮に見えるんでしょう」
 泣けるドラマがブームになるのは、<初恋病>にかかっている人がそれだけ多いからではと小林さんは指摘する。若いもんに振り返る過去なぞ、ないんじゃないのって気もするが……。

「学生に”初恋病と私”というテーマでリポートを書いてもらったんですけど、8割近くの学生が自分も<初恋病>だと。過去の失恋がトラウマになっていて、ちゃんとした恋愛ができないらしいんです。いまの若い子はスマートに恋愛してると思ってたから、驚きましたね。でも、<初恋病>の人ってシンドいんですよ。どこかで決着をつけないと、一生ひきずってしまうから」】

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 なんと、8割もの学生が<初恋病>なんですね、凄いなあ!と素直に感心したりしないんですけどね、別に。
 この先生の講義を受けている学生たちが、「”初恋病と私”という課題を与えられたら、いちばんラクに単位を取れそうな内容は「私も<初恋病>」って書いちゃうことだと思いますし。逆に、残りの2割の冒険的な学生はどんなテーマで書いたのかのほうが気になるくらいです。
 実際に、この手の「トラウマ」を引きずっている人って、そんなに多いのでしょうか。僕の周りの人々を見ていると、いくらなんでも8割というのはあんまりという気がします。心のうちはわかりませんが、みんな、けっこうあたりまえに恋愛していたり、できなかったりしているみたいですが。まあ、「初恋」とかいうのって、それなりに「影響」が残るところはあるのでしょうけど、それってどちらかというと「イタい経験」なのじゃないかなあ。
 僕は『世界の中心で、愛をさけぶ』とかを読んでも、「ああ、なんてひねりの無い純愛小説なんだ…」としか思えなかったのですが、それはたぶん、小さい頃にその手の「泣かせるドラマ」に免疫がついてしまったから、なのでしょう。逆に「ドラマ体験」が、「カンチ、セックスしよ!」から始まったもう少し若い人たちは、ああいうストレートな「純愛モノ」が新鮮なのかもしれません。
 僕はもう、「泣ける!」とかいう煽り文句には、内心、飽き飽きしているんですけどね。
 
 ところで、僕が最も疑問だったのは、【過去の失恋がトラウマになっていて、ちゃんとした恋愛ができないらしいんです。】という部分でした。
 僕は、この年まで、自分が「ちゃんとした恋愛」ができているなんて、全然思えないのですけど……
 そもそも、「ちゃんとした恋愛」って、どんな恋愛なんだろう?