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2006年02月14日(火)
「今まで、一番傷ついた言葉は何ですか?」

「増量・誰も知らない名言集」(リリー・フランキー著・幻冬舎文庫)より。

【ボクが人にインタビューをする時決まって尋ねることがある。
「今まで、誰かに言われた言葉の中で、一番傷ついた言葉は何ですか?」
 まず、こう聞かれると、誰しもが一拍あく。その一拍の中には色々あって、この質問をどうやってはぐらかそうかと考えている人もいるし、また、記憶がその言葉を呼び戻して、ヘコみ始める場合もある。
 要するに、ボクが知りたいのは、その一拍あいた時の表情に漂う、その人の素を顕微鏡でキャッチし、心の深遠を覗きたいのである。
 つくづく、怖い人間のオレ。
 飛んでいるハエのアヌスを針で突き刺すような間の取り方が必要である。そして、重要なことは、相手が本当のことを言ったかではなく、このテンションの質問に対して相手が、どう言いたかったかということなのである。
 そこで、相手がわかる。ある巨乳アイドルにその質問をした時、彼女はこう答えた。これは、付き合ってた彼氏に言われたそうだ。
「でも、オマエって結局、胸だけじゃん」
 痛い!!ハートに五寸釘。しかしそれに対して、彼女はこう返した。
「アンタには、なんにもないじゃん!!」
 痛―――――!!」クロスカウンターの打ち合い。でも、どっちかといえば「ある」ほうが強い。斬りに行って、突き返されたような泥試合。
 このように、言葉は人を傷つけるには一番の凶器なのだ。普段の精神状態の時ならともかく、恋人同士の負のエネルギーは遠慮知らず。反則なしのアルティメット会話。
 やっぱり、好きな人に傷つけられる時の傷は深く残るものだ。行為よりも態度よりも、わかりやすい言葉という暴力。
 特に、別れ際の女は人情ノー。男は最後のひと言に美学を求めるが、女は最後のひと言と、引っ越しに出すゴミは同じ感覚。言わなくてもいいことまで吐き出してスッキリしたいという自分勝手な殺し屋である。】

〜〜〜〜〜〜〜

 「今まで、誰かに言われた言葉の中で、一番傷ついた言葉は何ですか?」
 いきなりこう問われて、言葉に詰まらない人はこの世に存在するのでしょうか。僕もこれを読んで、思わず考え込んでしまいました。
 確かに、恋人同士の場合、お互いの長所はもちろんなのですが、短所も把握しきっていることが多いでしょうから、相手の「弱点」をピンポイントで攻められるのだと思います。そして、「お前は胸だけ!」なんて弱点をついたつもりが、全人格を否定されるような「逆襲」を受けてしまうわけで。
 よりによって、好きだった彼女に「お前には何もない!」なんて言われたら、かなり長期間立ち直れないこと請け合いです。そりゃあ、「売り言葉に買い言葉」なのだとしてもねえ。
 しかし、女性にとっては、本当に「最後のひと言と、引っ越しに出すゴミは同じ感覚」なのでしょうか。だとしたら、「最後の口喧嘩」は、男には勝ち目はまったくないような気がします。

 ところで、僕もこの「一番傷ついた言葉」のことをずっと考えていたのですけど、確かにこれって、自分のトラウマをえぐっていくような作業なので、やっていてものすごく辛くなりますよ。僕の場合は、最初に思いついたのは、別れのひと言ではなくて、新人時代に当直に行ったときのことでした。重症の患者さんが救急でやってきたのですが、結局僕には診きれずにその病院の偉い先生を呼んでお願いしたあと、疲れきって当直室に帰っている途中で、そこのレントゲン技師さんがレントゲン室の中で同僚と話していた「こんな診断もできないなんて、あの医者はダメだな」という言葉でした。ああ、今から思い出しても、情けなくて悔しい。当時の僕のキャリアからすれば、「できなくてもしょうがなかった」のかもしれないけれど、たぶん、一生忘れられないと思います。面と向かって言われたのではないだけに、なおさら、「どうしようもない」のですよね。
 考えてみれば、こういう「一番傷ついた言葉」って、ある意味、「その人がいちばん大事にしているもの」を象徴しているのかもしれません。当時の僕にとっては、「仕事に対する(根拠も無い)プライド」だったのかな。
 
 しかし、バレンタインデーに、こんなこと書いてる僕も僕ですね……