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2006年01月30日(月)
そして、この話に魔法は全然関係ないのである。

「三谷幸喜のありふれた生活4〜冷や汗の向こう側」(三谷幸喜著・朝日新聞社)より。

(シチュエーション・コメディ、略して「シットコム」の代表作「奥様は魔女」の脚本家のひとり、バーナード・スレイドさんの話)

【彼の書いた話は、どれも笑わせて最後にホロリとさせてくれる。さすがバーナード。凄いのが、彼の回ではサマンサの魔法はあくまで導入だということ。物語の大半はごく普通の、それもかなり出来の良いシットコム。後年傑作コメディーを書く片鱗がそこにはある。
 例えば、ダーリンがオフィスにあった熊の縫いぐるみを、魔法で姿を変えられた上司のラリーを思い込む。他人がそれを乱暴に扱ったり、女性が持て更衣室に入ったりすうると、その度に大騒ぎ。それって端から見れば、異常なまでに縫いぐるみを愛する変人なわけで、ね、面白そうでしょ。そしてこの話に魔法は全然関係ないのである。】

〜〜〜〜〜〜〜

 ここで三谷さんが描かれている短いあらすじを読んだだけで、僕も「奥様は魔女」のこの回を観てみたくなりました。ひょっとしたら、子供の頃、再放送などで一度くらい観たことがあるかもしれませんが。
 この回について、三谷さんは【才能がある人は違うなあ、と打ちのめされる】と書かれているのですが、確かに僕もこのバーナードさんの「発想」のスゴさに感動しました。もちろん、多くの作品のなかから、それを見出して感動している三谷さんの感性もたいしたものだなあ、と思いますけど。
 普通、「魔法が使える世界で、面白い作品を書け」と言われたら、「どんなすごい魔法でみんなを驚かそうかな」と考えると思います。「魔法」が売りのドラマなんだし。でも、バーナードさんは、「魔法がある世界」を逆手にとって、「魔法があるにもかかわらず、魔法を使わない」という手段を用いて、これだけ面白そうなコメディーを作り上げてみせたのです。そしてこの話には、「魔法が存在することを知っている人」と「それを知らない人」の意識のギャップも面白おかしく描かれています。もちろん、ダーリンは魔法のことをみんなには言えないし、言っても信じてもらえないわけだし。
 こういう「発想の転換」って、言われてみれば「なるほど」という感じなのですが、実際に自分がそのシナリオを考える立場になったら、やっぱり、こういう発想ってなかなか出てこないと思うのです。
 ほんと、才能のある人は違うなあ……