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2006年01月19日(木) ■
K−1ファイター「武蔵」誕生秘話

「Gag Bank」vol.19(ギャグバンク)の猫ひろしさんとK−1ファイター武蔵選手の対談記事より。

【猫:なんでリングネームつけようって思ったんですか?

武蔵:いや、リングネームつけたのは、自分じゃないですね。つけられたんですよ。「あなたデビューが決まりました」って。95年の3月から練習を始めたんですよ、プロの。その年の9月に『K−1リベンジ�供戮辰討いβ膕颪�あって。で、いきなりその大会の1ヵ月ぐらい前に、「あなたは今度のK−1に出ることが決まりました」って言われて。「エエッ!?」ってなるじゃないですか(笑)。まだ6ヵ月しか練習してないんだから。試合したことがないんですよ?スパーリングしかしたことがない。アマチュアの大会とかに出て、ある程度実績を積んでいくっていうのが、それまでの先輩たちのデビューまでの流れなんですよ。箱、横浜アリーナ、デカいじゃないですか。「ウソ〜ン」ってなるじゃないですか。で、そのときに大阪で一緒に練習してたのが、アンディ・フグ、マイケル・トンプソン、サム・グレコとか、トップファイターですよ、その時代の。毎日、ボコボコにされてたんです。毎日、口の中が切れて、飯食うのがつらくて。その当時の唯一の楽しみは、一緒に練習していた中迫選手やタケル選手と飯食いに行って、アンディ・フグとかの悪口を言うことだったんです。「ホンマに覚えとけよ」みたいな(笑)。

猫:芸人と似てますね。愚痴言いながら食事するのって。

武蔵:そんな、黒い部分を見せていいんですか?

猫:いやいや(笑)。

武蔵:ま、本当にそれが楽しみだったんですよ。そしたらいきなり「デビューが決まった」って言われて。相手誰ですかって聞いたら、パトリック・スミスだって。

猫:はい。

武蔵:前の年にアンディ・フグを1ラウンドで秒殺してるんですよ!?毎日アンディ・フグにしばかれている俺に、どうやって勝てというんだって話ですよ。アンディ・フグがね、「武蔵のデビュー戦の相手はパトリック・スミス」だって聞いたとたん、「危険だからやめさせろ」って言ったらしいんですよ。俺ね、心の中で「もっと言うて、もっと押して」って願ってました。とりあえず止めさせてもらいたくて。とりあえず、なくならへんかなって思ってたんですよ。

猫:思いますよね、それは。

武蔵:そしたら、追い討ちをかけるように「あなたはデビュー戦のときにリングネームがつくらしい」って言われたんです。これまた「ウソ〜」って。過去にリングネームでデビューした選手なんて、ひとりもいないんですよ?「リングネームなんか嫌ですよ」って言ったら、「あなたは”ケンシロー”らしいです」って。もう「ウソ〜」ってなるでしょ?

猫:ちょっとカッコ悪いですよね。

武蔵:最初”ケンシロー”やったんですよ。うわ〜嫌やな、イロモンになるの嫌やなって思って。なんとかならないですかねって言ったら、「もう諦めなさい」みたいな感じで。で、諦めかけたときに「リングネームが変わるそうです」って言われて。

猫:変わるそうです(笑)。

武蔵:変わるんですか?なくなるんじゃないんですか?って聞いたら「あなたは『ムサシ』になるらしいです」って言われて。ああ、もういいです、と。そうそう、最初はカタカナだったんですよ。

猫:理由はなんだったんですか?

武蔵:二刀流っていうのと、外国人が一番知っているサムライだから、覚えやすい、っていうことと。何よりも名前のプレッシャーがすごかったですね。”負けたことのないサムライ”みたいで。だから最初、人に自分の名前言うのが恥ずかしくって。「初めまして、正道会館の※○×△です」って、”ムサシ”って名前だけ小っちゃく言ったりしてましたね。】

〜〜〜〜〜〜〜

 まあ、いろいろと毀誉褒貶はあるものの、日本を代表するK−1ファイターであることは間違いない武蔵選手のデビュー前の話。なんだかもっと、「熱血」とか「青春」していたのかと思ったら、「毎日アンディ・フグたちにボコボコにされ、食事のときに同じくらいの立場の仲間たちと悪口を言い合うのが唯一の楽しみだった」なんて話は、もう涙なしでは読めません。今となっては、武蔵にとっても「いい思い出」になっているのでしょうけど。
 それにしても、「武蔵」のリングネームは、最初は、”ケンシロー”の予定だったんですね。思わず噴き出してしまいました。もちろん、営業サイドは、あの『北斗の拳』のケンシロウを意識していたのでしょうけれども、90年代半ばのK−1は、格闘技マニア以外の一般の人たちにはほとんど知られていない、ストイックな大会だったらしいので、そんな中に”ケンシロー”として登場するなんて、武蔵さんの「うわ〜嫌やな、イロモンになるの嫌やな」という気持ちもよくわかるというものです。プロレスだったら、そういうふうに「キャラを立てる」というのもアリだったのかもしれませんが。
 さすがに”ケンシロー”イロモノ的すぎるということだったのでしょうか、結局、リングネームは”武蔵”になるのです。考えてみれば、判定勝ちが得意な”ケンシロー”というのはやっぱりちょっとイメージが違うので、結果的には”武蔵”で正解だったような気もします。いや、宮本武蔵だって、言いたいことはあるかもしれませんが。
 しかし、こういうリングネームっていうのは、活躍できればいいけれど、ダメだったら本当に恥ずかしいでしょうね。野球の”イチロー”だって、あれだけ活躍したからみんな認めていますけど、そんなにセンスのいい「登録名」なのかどうかは、客観的に考えるとちょっと微妙ですし。

 ところで、「アンディ・フグを秒殺したパトリック・スミス」とのデビュー戦なのですが、どんな酷い目にあわされたのかと思いきや、なんと武蔵がKO勝ちしているのです(参考リンク:「判定王」K−1武蔵の戦績)。うーん、武蔵って、やっぱりタダモノではないのかもしれない…