初日 最新 目次 MAIL HOME


活字中毒R。
じっぽ
MAIL
HOME

My追加

2005年09月30日(金)
コスメ・美容系ライターの「必勝パターン」

「ダカーポ・563号」(マガジンハウス)の記事「読まれてナンボ。雑誌ライターの必勝パターン」より。

(雑誌ライターの<書き出し>必勝パターンについての、媒体ジャンル別のインタビューの一部です。)

【―さてお次は、華やかに。女性誌のコスメ・美容系ライターMさんに聞いてみよう。

「本文の場合は、”〜だと思うだろうけれど、それは違う”戦法ですね」

―はい?

「『冬は日差しも強くないから安心していませんか? でも紫外線は確実に肌に届いてます』というふうに」

―まるで魔の手が迫ってきている感じですね。

「乾燥対策もキーポイント。冬に限らず、夏でもエアコンの影響うんぬんを語れるので、年中、からめられます」

―商品のキャプションはどうですか? 20本の赤い口紅をどう書き分けられるのかと不思議でしょうがありません。

「語彙力と、一度使った形容詞を覚えておく記憶力に尽きます。”真珠のようなきらめき”も”パーリーな輝き”も一緒だろって気分にはなりますが」

―それと、読むと「試してみようか」と駆り立てられるのは何なんでしょう?

「この美容液1本で人生変わる! くらいの大げさ感は必要。”凛としたクリーム”のように、画数の多い漢字を使うのもミソですね。そうして女性に魔法をかける。そんな心持ちで書いています」】

〜〜〜〜〜〜〜

 お決まりの煽り文句を書いているだけのようにも思える「女性誌のコスメ系ライター」というのも、けっこう大変な仕事のようなのです。僕が男で、あまり口紅に縁がないせいかもしれませんが、「20種類の同じような『赤』を、どう書き分けるか?」というのは、非常に難しいことだと思いますし。
 まあ、これを読んでみると、「その商品にあわせる」というよりは、「とにかく前に使われていない表現を考え出す」というのが重視されているみたいなんですけど。
 広告の世界の歴史からすると、「赤」の表現のしかたなんて、もう出尽くしてしまったのではないかとすら思えるのですが、それでも「オリジナル」でなければいけないというのは、本当に厳しい。簡単そうにみえて、多くの「言葉のストック」がないとやっていけないのでしょう。でも、【”真珠のようなきらめき”も”パーリーな輝き”も一緒だろって気分にはなりますが】って、「業界的」には、一緒じゃないんでしょうかこれって。
 「文章を書くことを仕事にする」といえば、小説家などが1ランク上のように思われがちですが、普通の週刊誌で読み飛ばされている無名のライターたちにも、いろんな工夫や苦労があるのです。文字を書くことは、(少なくともいまの日本では)誰でもできるからこそ、言葉を仕事にするというのは、そんなに簡単なことではないのでしょうね。
 でも「画数の多い漢字を使うのがミソ」なんて、けっこう読者はナメられているんじゃないか、とか、思わなくもないです。