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2004年11月20日(土)
ある新入社員の人生を変えた、一冊の分厚い本

「ファミ通」2004年11月26日号のコラム「浜村通信」(書き手・浜村弘一)より。

【いま週刊ファミ通の編集長をやっているバカタール加藤、加藤克明も、そんな修羅場の中から育っていったひとりだ。入ったばかりのころの加藤は長髪で細身。なかなかの男前だったように記憶しているが……記憶違いかもしれない。配属されてすぐにボクの隣に席をもらった加藤。でも、雑誌制作の経験はまったくなく、原稿書き、編集作業とも、ほとんどやったことがなかった。入って最初の数週間、加藤には仕事らしい仕事がなかった。せっかく出社しているのに、仕事をしないのは申しわけないと思ったのだろう。ある日、加藤はボクに、「何をやればいいか、教えてください」と聞いてきた。教えるといっても、編集業務は現場の作業の中で覚えるものがほとんど。勉強できることといえば、人の書いた文章をたくさん読むことくらいしかない。だから加藤には、「とにかくなんでもいいから、分厚い本を読め」とアドバイスした。ボクの机の上にある書籍でいちばん分厚いもの。それは知恵蔵だった。翌日から加藤は、朝早くに出社しては知恵蔵を読み、時間が来れば家に帰る。そんな毎日を送ることになった。取材から帰って席に戻ると、隣の席で知恵蔵を読みふける加藤。指示したのはボクだけど、さすがに不安になってきて、聞いたことがあった。「それ、おもしろいか?」。すかさず加藤は「けっこうおもしろいです!」と明朗に答えた。数日後、加藤はついに、知恵蔵を読破した。その報告を受けたときは、ある種、不思議な感動に襲われたのをいまでも覚えている。『サラリーマン金太郎』の主人公、矢島金太郎は、入社して数週間、庶務部で鉛筆削りばかりやっていたことがあった。それはとても辛い仕事だったと思うが、知恵蔵の読破とどちらを選ぶかと言われたら、ボクは鉛筆削りを選ぶかもしれない。】

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 「毎日仕事場で知恵蔵を読んでいるだけの生活」って、考えようによっては、「リストラ部屋」みたいな感じですよね。いや、確かに読みなれれば「けっこうおもしろい」ものなのかもしれないけれど、そればっかり一日中やっているのは、かなりの苦行だと思います。入社してすぐの時期だったから「とにかく何かをやっていないと不安」だったのかな。
 このエピソードを読んで、僕は今までも自分の周りにいた、何人かの加藤さんのような人たちのことを思い出しました。彼らは不器用で、他人よりも要領が悪くて、傍からみれば「そんなに真面目にやらなくてもいいのに」という感じの生き方をしていました。それこそ、同じ練習を毎日飽きもせずに繰り返したり、同じ問題集をボロボロになるまでずっと使っていたり。
 でも、そういう「不器用な人たち」と競争すると、最初に「コツ」を掴むのは「要領のいい人」なのですが、時間の経過とともに確実に「要領のいい人」たちを追い抜いていくのは、こういう「不器用だけど、迷わずに自分がやると決めたことを一途に続けられる人」だったような気がします。「器用貧乏」という言葉がありますが、何かをちょっとかじっただけで「できたような気になる」という器用な人というのは、結局は「広く浅く」という感じになってしまうことが多いようです。
 もちろん、器用なのは悪いことではないのですが、それ以上に、こういう「自分がやると決めたことを疑わずにやり続けられる力」というのは、長い目でみれば素晴らしい結果を生み出せるのかもしれません。まさに「ウサギとカメ」の童話のように。

 「一途に目標に向かえる人」というのは、本当に可能性がある人なのだと思います。もちろん、その「目標」というのがマイナス方向であれば、これほど困った人もいないという気もしますけど。
 それにしても、この「知恵蔵」一冊読め!って、結果的には美談だけど、イヤになって辞めたりしていたら、単なる新入社員イジメかも…
 若いって、夢とか目標があるって、やっぱり強いよね。