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2004年09月27日(月)
和田と宅間と「その他の人々」

共同通信の記事より。

【イベント企画サークル「スーパーフリー」(解散)のメンバーによる女子大生集団暴行事件で、3件の準強姦(ごうかん)罪に問われた元代表で早稲田大生だった和田真一郎被告(30)の公判が27日、東京地裁(中谷雄二郎裁判長)であり、弁護側が最終弁論で「被告は人からの信頼も厚く、更生できる」などと寛大な刑を求め、結審した。判決は11月2日に言い渡される。
 和田被告は最終意見陳述で「人として恐ろしいことをやってしまった。真人間に生まれ変わって被害者のために罪を償いたい」と謝罪した。
 最終弁論で弁護側も「今回の事件の各被害者におわびしたい。陳謝してもしきれない。社会にも大きな影響を与えた」と述べた。
 検察側は、一連の事件で起訴された14被告の中で最も重い懲役15年を求刑している。】

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 あれだけのことをして、たったの懲役15年なのか…と慄然とぜざるをえないのですが、その一方で、この和田被告という人に対して、僕はなんだか不思議な感情を抱きもするのです。どうしてこの男は、あんなことをやったのだろう?って。
 この人は、たぶん今でも、「自分が悪いことをやった」という罪の意識はないのではないか、という気がするのです。もちろん「反省の弁」を彼は法廷で述べていますが、それは、「怒られたから謝る」という子供じみた条件反射みたいなもので、「被害者におわびしたい」というのは、おまけみたいなものではないでしょうか。

 和田被告という人は、人も羨むような名門大学に入って、人気サークルを作り上げ、「学生」という身分を利用してこのサークルを運営し、何千万円もの年収を得ていたそうです。端からみれば、「何が不満なんだ?」といような御身分であったわけなのに、結局、自分で作った「スーパーフリー」という自分の世界のルールに自分で酔ってしまったということなのでしょう。
 でも、同じようにすべてがうまくいっていたら、僕だって和田真一郎になっていたかもしれないな、とも思うんですよね。「早稲田なんていい大学に行っておきながら」というような批判の声を聞くたびに、真面目にやっている早稲田の学生たちもかわいそうだな、と思ったし。
 もちろん、彼の「活動」のためには、有名大学の名前は効果絶大だったでしょうから、そういう肩書きだけを妄信することのバカバカしさも、まざままざと見せ付けられたわけですが。

 和田被告と先日死刑が執行された宅間死刑囚、この2人について考えてみると、2人とも反社会的行為を行った人間でありますが、それまでの半生は、「何をやってもうまくいかず、暴発してしまった宅間」と「すべてがうまくいっていたはずなのに、うまくいきすぎて自分を見失ってしまった和田」というコントラストを描いています。
 率直に言うと、「宅間がやったことは絶対に許されないし、彼が死刑になるのは当然だけれど、彼の半生を辿ると、その『動機』は理解できる」のに比べて、「和田被告は単なるバカ」という感じしかしないのです。
 もちろん、あれだけの人を集めたのには、ある種の「才能」もあったのでしょうが、それが、彼の「カンチガイ」の元凶になってしまったのだから、どうしようもありません。

 なんだか、うまく説明できないのだけれど、「スーパーフリー」というのは、「オウム真理教」と同じで、幹部たちにとっては「ゲーム」みたいなものだったと思うのです。そして、プレイヤーたちは、「いざとなったら、リセットボタンを押せばいいや」と思い込んでしまって、滅茶苦茶なことをやり続けてしまったような。彼らは、宅間のように切実に何かに追い詰められていたわけではなかったはずなのに。
 それでも、現実にはリセットボタンなんてないし、傷つけられた人々の心が完全に癒える日が来るかどうかは、誰にもわからないのです。
 彼らが刑務所から出ることはあっても、「恵まれていたくせに酷いことをした」彼らを社会は温かく迎えてはくれないでしょう。
 それは、当然のこと。

 「さあ、ゲームのはじまりです」
 あの神戸の事件で、酒鬼薔薇聖斗は、そんな言葉を吐きました。 
 でもね、このゲームはセーブもできないし、リセットボタンも無いんだよ(厳密には、リセットできないことはないけれど、セーブしたところからやり直しはできない、永遠のゲームオーバーになってしまいます)。

 和田被告の姿は、「どこにでもいる、カンチガイしたエリート崩れ」ともいうべきもので、僕はああいうタイプの人を何人も知っています。
 本当は、スーツとか着て、理不尽な上司やお客さんにも頭を下げて、夜遅くまで残業する「普通の人生」のほうが、よっぽど大変なのにね。
 
 悪いことと知りながら、「死刑になるために」悪いことをした男。
 悪いことの感覚そのものがマヒしてしまい、「このくらいはいいだろ」とカンチガイしてしまった男。
 そして、自分が宅間でも和田でもない「普通の人間」であることに、胸をなでおろす人々。

 ただ、僕は正直、同じ立場になったら、ああいうことを自分もやってしまうのではないか、という不安に駆られることもあるのです。人生あまりにうまくいかなければヤケになってしまうかもしれないし、ああいうサークルの主催者で女の子がどんどん寄ってくれば、よからぬ性欲を抱くかもしれない。「普通」なんて、ものすごく曖昧な領域でしかないから。

 もしそうなったら、僕を容赦なく死刑にしてもらいたい。それだけは今のうちに言っておかなくては。