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2004年09月24日(金)
「事前に言ってくれてもいいじゃないか。知らない仲でもないんだし」

Asahi.comの記事より。

【プロ野球への新規参入を申請しているライブドアの堀江貴文社長は24日夜、ロンドンから帰国した足で宮城県庁に駆けつけ、仙台市の県営宮城球場を新球団の本拠にしたいという熱意を浅野史郎知事に改めて伝えた。浅野知事はこの日午前、仙台市をめぐってライブドアと争う形になった楽天の三木谷浩史社長と同じ県庁で会ったばかり。2社のうちどちらか一方を優先する扱いはせず、あくまで中立的な立場をとる意向を堀江社長に伝えたとみられる。

 会談で浅野知事は楽天が参入した経緯について堀江社長に説明した。会談後の記者会見では堀江社長が「なぜ参入を楽天と争わないといけないのか」と語り、浅野知事はその間、渋い表情だった。

 堀江社長は宮城県への申し入れが楽天よりも早かったことを有利な面としてこれまで強調してきた。ライブドアと同様に楽天も仙台市を本拠に新規参入をめざすことについて、堀江社長は県庁に向かう途中の成田空港やJR東京駅で「(ロンドンに)電話がかかってきて知った」「困惑している」「新規参入が増えるのはいいことだが、同じ仙台市ではけんかを売っているように端からは見える。事前に言ってくれてもいいじゃないか。知らない仲でもないんだし」などと語った。

 今月9日に東京都内で浅野知事に会った際は、こうした楽天の動きについて話題は出なかったという。

 一方、堀江―浅野会談に先立つ24日午前、その浅野知事に対し、宮城球場を本拠として申請することを正式に伝えた三木谷社長は、築50年を超える同球場の改修費として30億円を支出する用意があることを明らかにした。併せて長野市に準本拠を置くとする構想は白紙に戻す方針を示し、「長野が準本拠とは一度もいっていない。岩手や秋田などからもラブコールが思った以上にあり、考え直して東北優先でやりたい」と話したという。】

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 確かに「同じ仙台ではケンカを売っている」ように端からは見えますね。話の順序としては、ライブドアよりも資本力がある「楽天」が、あとから乗り込んできて、「球場の改修費の一部支出」などの好条件を提示してきたのですから、ライブドアとしてはたまったものではないでしょう。
 宮城県知事としても、心情的には先に手を挙げたライブドアなのかもしれませんが、正直なところ困惑しているのでは。
 ライブドアも楽天も「東北にプロ野球チームを!」という積極的なモチベーションがあったというよりは、「今、プロ野球チームのフランチャイズにするとしたら、どこがいちばん良いか?」と考えた場合、球場の老朽化などの諸問題はあるものの、仙台がいちばんベストだろう、という「消去法」によってここを選んだわけですから。
 それでも「中立的な扱いをする」とはいっても、まさか仙台に2つの球団が同時に本拠地を置くわけにもいかないでしょうから(もしそうなったら、それはそれで見ものだとは思うんですが)、結局はどちらかひとつ、ということになりそうですけど。

 しかし、堀江社長の「事前に言ってくれてもいいじゃないか。知らない仲でもないんだし」という発言は、たぶん本音なのでしょうが、考えてみると「事前に言ってどうなるものでもないだろうな」という気もします。
 もし仮に三木谷社長が堀江社長に、「うちも仙台にしたいんだけど、どう思う?」なんて相談しても、これは何十億円というお金のかかった「事業」ですから「ああいいよ」っていうわけにもいかないでしょうし、反対されるに決まっています。とはいえ、三木谷社長のほうだって、いくら堀江社長に面識があるからといっても、直接話したからといって「本拠地仙台」という「楽天」の会社としての決定事項を簡単に変えられるわけもありません。
 そういう意味では、「事前に言えなかった」のは、当然のような気はします。まあ、端からみれば、楽天の割り込み、という印象はぬぐえないものがありますし、そのイメージを増幅するつもりでこの言葉が出たのなら、堀江社長も役者ですけどねえ。

 やっぱり世の中「根回し」というのは大事で、「事前に自分に一言もなかった」というだけの理由で反対派にまわってしまうような人だっているわけですが、それでも、「水臭い、なんでオレに先に言ってくれなかったんだ」と後から言う人の多くは、「言ったって、どうしようもなかった人」あるいは「言わないほうが良かった人」なんですよね。
 水臭くなるには、それなりの理由があるのです。
 こういう場合に、「礼儀」と「実務」のどちらを優先するかというのは、非常に難しい問題なのですが、企業のトップとしては、「言えない」だろうなあ、とは思います。
 
 しかし、ライブドアにとって最高の結末は、「野球界を改革しようとして大企業に潰された良心的な先見の明を持つ企業」として、名前は売れて赤字球団を所有しなくて済む、というものではないでしょうか。
 だとしたら、まさに今の状況は「シナリオ通り」なのかも。