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2003年12月10日(水)
自衛隊はイラクのサンタクロース?

時事通信の記事「サマワ熱烈歓迎『一流の町にしてくれる』」より。

【イラク南部の町サマワの人々の自衛隊への期待は大きい。通りには「ようこそ自衛隊の皆様」「わたしたちも協力します。皆で町の再建を」などと書かれた横断幕が掲げられ、住民の間では自衛隊を歓迎する声が大多数だ。しかし、「自衛隊が建設的なことをやるのを自分の目で見るまでは歓迎できない」との冷ややかな意見もあった。

(中略)

 「子供たちも日本が大好きですよ」と語るのは小学校の女性教師ファトマ・ハサンさんだ。
 「子供たちは自衛隊がサマワに日本製のゲーム機やコンピューターを持ってきてくれるものと勘違いしているようですが」と苦笑。「親に聞く話から、子供は日本人に良いイメージを持っているようです」と話した。

(中略)

 自衛隊に懐疑的な目を向けている人もいる。「先着」のオランダ軍へのフ不信感が原因のようで、飲食店経営のカデム・マジドさんは「オランダ軍は来たばかりのころは活動的で、わたしたちを良く助けてくれた。けれどもすぐに占領軍の顔をし出した」とし、日本の兵士も歓迎はできない」と述べた。】

〜〜〜〜〜〜〜

 まあ、当然リップサービスの面もあるでしょうから、言葉を額面どおりに受け取っていいものか悩ましい面もありますが。
 少なくとも、「派遣する側」である日本の苦悩に比べて、「派遣される側」のサマワにとっては、そのことは、はるかに日常的な出来事のような印象を受けます。
 多くの日本人にとっては、「危険な一触即発の地域」なのかもしれませんが、現地の人たちには、そこに「普通の生活」があるわけですから。

 一般的に、イラクの人たちの対日感情は、今のところは「そんなに悪いことはない」というレベルなのでしょう。
 もちろん、「日本はアメリカの仲間」という意識はあるでしょうが、少なくとも日本人とイラク人は直接戦闘を経験したわけではないですし。
 子供たちが「自衛隊がサマワに日本製のゲーム機やコンピューターを持ってきてくれるものと勘違いしている」なんて件は、サンタクロースじゃないんだから(まあ、イスラム圏にサンタクロースはいないでしょうけど)、なんて、微笑ましく感じるくらいです。
 もっとも、終戦直後の日本では、自分の国を占領したアメリカ軍に対して、子供たちは「ギブ・ミー・チョコレート」とやっていたのだから、「日本がやってくれること」への期待と「日本人への親愛の情」というのは、必ずしも比例するものではないんだろうけど。

 基本的に「占領軍」を心の底から歓迎する人たちはいないと思います。
 現在、表面上歓迎の姿勢を見せているのは、「とりあえず、荒立てないようにしよう」という様子見と戦争状態が日常となってしまった市民たちの「生き残るための知恵」なのかな、と。

 イラクの人たちの本音としては、「自衛隊が来ること」に対する感情は灰色で、問題は「その自衛隊とやらが、ここで何をしようとしているのか?自分たちに何をしてくれるのか?」ということにかかっているんだろうと僕は思うのです。

 「自衛隊がやるべきだ」「NGOがやるべきだ」なんていうのは、「支援する側」の都合であって、現地の人たちにとっては「どっちでもいいから、早くなんとかしてくれ」というのが本音なのではないでしょうか?

 今のイラクは、日本の一般常識からすると「ものすごく危険な地域」であることには、誰も異論がないでしょう。
 正直、そこに危険慣れしていない日本人が踏み込むのは、危険が大きすぎるとは思うのです。それは、日頃厳しい訓練を受けている自衛隊の隊員たちにとっても同じはず。
 それでも、自衛隊の隊員たちは、「現地の復興のため」にイラクに派遣されようとしています。
 彼らは、今の日本の社会ならば、「イラクに行くのがイヤなら、自衛隊を辞めればいい」にもかかわらず。
 実際、「じゃあ、日本は軍資金を出してイラクの破壊に『貢献』しておきながら、戦後の復興にはかかわらなくていいのか?」とも思うのです。
 そして、この危険な仕事に対応できる組織が、日本に他にあるのだろうか?と。
 実際に、日本国内での大災害などでは、自衛隊員は献身的に働いてくれているわけですから。

 イラク戦争において、僕は「アメリカの正義」に対しては懐疑的です。
 でも、今回の自衛隊の派遣については、「アメリカへの追従」ではなくて、「現地の困っている人たちを助ける」という主体的な目的であれば、日本のアイデンティティを世界に示す大きな機会なのではないでしょうか?

 僕だって行けって言われたらイヤですし、隊員本人、そして家族だって、ものすごく不安なはず。
 でも、今の世界情勢の中で「誰かがやらなければならない仕事」を彼らが引き受けてくれるのだとすれば、僕は、彼らに感謝せずにはいられないのです。
 そして、彼らの無事とイラクで困っている人々に貢献できることを心より祈ります。自分の仕事に誇りと自制心を持って、「日本人の姿勢」を世界に示してください。

 でも、こんなことを書きながら、「他所の国のことなんだから、わざわざ危ない目に遭いにいかなくても…」という気持ちがあるのも事実なんですよね。
 実際、太平洋戦争のきっかけだって、その時代の日本人にとっては「日本を守る戦争」だったのでしょうし…

 いちばん大事なのは、「派遣したからいい」「派遣しなかったからいい」ではなくて、「派遣した先で、きちんとした活動ができているのかどうか検証すること」や「派遣しないとしたら、その代わりに日本に何ができるのかを考え、実行すること」なのではないでしょうか。

 「行った」「行かなかった」で、この話が終わってしまっては、なし崩し的に悪い方向に進んでしまう可能性が高いから。
 そう、それじゃ今までと一緒だよ。